コラム

残業ゼロを目指して


タスク管理のコツは、未来の自分を思いやること

2017.08.17

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟さんの連載企画。今回は、あの人気マンガの1シーンを例に「タスク管理」のコツをご紹介します。

目次
  1. 「8時間後のドラえもん」に同情する
  2.  機械的な「平準化」ではなく「思いやり」を
  3.  「未来の自分」に手紙を書いておく
  4. 「自分たち」の言い分をもっと聞く

 「8時間後のドラえもん」に同情する

先日居間にいると、小学二年生の娘が『ドラえもん』を読んでいて、急に「なるほどねー!」と声をあげました。びっくりして「何がなるほど?」と尋ねたところ、「ドラえもんだらけ」という小話に感心していたようです。彼女には、まだちょっと難しい話だったのかもしれません。

ご存じの方も多いでしょうが、この話は、相変わらず宿題をため込んでいたのび太くんが、うまいこと全てをドラえもんに押しつけてしまうところから始まります。

とても朝までに片付く分量ではないと思ったドラえもんは、タイムマシンを使って未来から数時間後の自分を連れてくることにします。5人の自分で取り組めば、時間も1/5で済むわけです。こうして2時間後、4時間後、6時間後、8時間後のドラえもんが一堂に会し「ドラえもんだらけ」になるわけです。

大人になり、仕事をするようになってからこのお話を読むと、いかにドラえもんがつらかったろうと同情せざるを得ません。現に、8時間後のドラえもんなどは、宿題を終えて眠ったと思ったとたん2時間後、4時間後、6時間後、そして8時間後にもたたき起こされることになって、ぼろぼろです。

 機械的な「平準化」ではなく「思いやり」を

5人で片付ければ、時間も1/5で済むというのはタスク管理の基本的な考え方です。現に私たちはそうした発想に基づいて、1人で毎日取り組んで1ヵ月かかる仕事を、スケジュールを鑑みて自分自身に振り分け、1.5ヵ月~2ヵ月で仕事を終わらせたりしています。

そういう中で、たとえば計画を立て間違えたりすると、ある日(たいていは締め切り間際の日)に仕事が集中することになって、「8時間後のドラえもん」のような状態になります。つまり、やってもやっても仕事が終わらず、終わった頃にはぼろぼろになってしまうわけです。

仕事を可能な限り多くの日数を割り当てて、ある一時期や、ある特定の日に集中的に仕事をせずに済むようにすることを指して「仕事の平準化」と言います。要は、毎日「食べきれるサイズ」にあらかじめ割っておけば、無理なく仕事を進められるというわけです。

結果として均等に分けられれば問題はないのですが、「平準化」のために仕事を分ける作業は、機械的に行うとなかなかうまくいきません。これは、私たちが機械でない以上、ある意味当然です。「前日に遅くまで飲み歩いた次の日」と「ぐっすり8時間睡眠を取った次の日」では、仕事に取り組む意欲も集中力も違います。

総仕事量をただ日数で割るのではなく、その日その日の自分の状況を思いやり、何時頃に、どんなことをやったらいいのかを考えることが大切です。

理想を言えば、仕事を分ける際には「もし終わらなかったらどこか他の日に再度割り振ることは可能なのか」まで、細かく自分に「手紙を書いておく」ことが望ましいです。

私はこれを、グーグルカレンダーのような、クラウド型のデジタルカレンダーに書くようにしています。紙の手帳でもかまいませんが、詳細に書くからには「スペースを気にせず書ける」という点が大事です。たとえばこの連載を書いている8月3日のカレンダーには、【終わらなければ8月8日に追加分を書く】というメモが書かれていたりします。

こういう申し送り事項を細かく書いておくことで、「仕事に取り組んでいる自分たち」をつないでいくことができるわけです。

「自分たち」の言い分をもっと聞く

同じ意味で、仕事が終わったら、そこでぱたっとやめてしまう前に、少しつらくても「何が大変だったのか?」を書き残すことが非常に重要です。

「ドラえもんだらけ」を読むとつくづくそうだと思わせられますが、「2時間後の自分」と「8時間後の自分」が思うことはまるでちがいます。1つのプロジェクトの中で「自分たち」が思うこと、気づくこと、後悔すること、悩むことは実に様々です。

私は何冊か本を書く仕事をしているのですが、1冊1冊の本を書いている最中の「日々の自分が考えたこと」を必ずぜんぶ、書き残すことにしています。

たいてい書き出しでは「1冊書く!」と決意の高さが見て取れますが、途中で投げ出す気になっていないことは、ほぼありません。

1冊書く中で、必ず一度は「やめよう!」と思うくらいです。最後は最後でほとんどいつも「締め切り」以外のことに気を回すのが困難になっています。

これらの記録を読み返してから本を書く仕事に取り組むと、「締め切りの設定」ひとつとっても非常にシビアで現実的な判断をするようになりますし、いつ、どんな理由でつらくなるかも予測できるため、その芽を事前に積んでおくこともできるようになります。

単に機械的に仕事を割り振るのではなく「未来の自分」に仕事を送るつもりでスケジュールを決めていく。

こうすることで、タスク管理の質は格段に向上します。

連載コラム〈残業ゼロを目指して〉

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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