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人事のキャリア【第25回】


皆がうらやむような会社づくりに取り組む(アイロボットジャパン・太田浩さん)

2021.08.10

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注目の外資系企業のHRビジネスパートナーとして働く

さまざまな業種の人事担当者に、これまでのキャリアや仕事のやりがいについてインタビューする連載企画「人事のキャリア」。今回はロボット掃除機の「ルンバ」を開発・販売するアイロボットの日本法人であるアイロボットジャパン合同会社(東京・千代田)で人事部ディレクターとして活躍している太田浩さんにお話を伺いました。

2017年、設立初期のアイロボットジャパンに入社後、日本ではまだ導入が珍しい、スーパーフレックス制度や定年制廃止などの制度づくりや、採用、育成、組織づくりなどに携わってきました。レコード会社の営業職から人事となり、HRビジネスパートナー、そして人事の責任者として活躍するまでの、太田さんの人事のキャリアを紹介します。
【2021年7月1日オンライン取材:株式会社イーディアス・長谷川久美、川村日南】

プロフィール:太田浩(おおた・ひろし)

外資系音楽レコード会社において、営業やマーケティング職から人事へとキャリアを転換。その後、大手オンライン小売会社に入社。リテイル事業やデジタルコンテンツ事業、クラウドコンピューティング事業にてHR ビジネスパートナー、タレントアクイジションのリーダーを経験。2017年にアイロボットジャパンに入社。日本法人設立直後より現在まで、組織文化の変革、人材採用および開発、組織開発、制度改定、報酬制度、福利厚生の改定、HRIS導入など幅広く人事全般を担当。アイロボットジャパンの社員がより働きやすい環境づくりのためにさまざまな制度の導入に関わる。

太田さんのキャリアアップのポイント

・営業職から未経験で人事へキャリアチェンジ
・会社帰りにビジネススクールへ通い、人事のキャリアを深めた
・社員がより働きやすい環境づくりを目指し、先進的な人事制度導入に尽力

目次
  1. またとない機会だと思った「アイロボットジャパン」
  2. キャリアのターニングポイント。営業から未経験で人事へ
  3. スーパーフレックスに定年廃止、先進的な制度の導入を手がける
  4. HRビジネスパートナーを目指すために必要な経験とは
  5. 外部からもうらやまれるような組織づくりを目指して

またとない機会だと思った「アイロボットジャパン」

画像:アイロボットジャパン・太田浩さん(@人事・人事のキャリア)

当日の取材はリモート環境で行った

──アイロボットジャパンへ入社したきっかけを教えてください。

前職でもHRビジネスパートナーとしていくつかの部門を担当しつつ、採用に関連した業務も担当していました。その当時から、人事全体の責任者として企業で重要な役割を担う機会を伺っていた、という理由がまず根底にありました。そんな時、エージェントから紹介されたのがアイロボットジャパンでした。

HRビジネスパートナー
企業における人事機能の1つ。人事の中でも特に事業部門の経営者や責任者のパートナーとして事業成長を人と組織の面からサポートする職種を指す。決まった業務がある部門人事と違い、事業成長のために各部門の問題解決に当たるのが主な仕事。

日本進出のために人事を募集しているスタートアップの企業は数多くありますが、日本のマーケットで成功するかどうか分からないというリスクもある。一方、既に日本でも知名度があったアイロボットが、日本の組織をこれから立ち上げていくと聞き、こんな機会はなかなかないと思いました。それに、新しく組織を作り上げていくという局面では、これまでの経験を生かして自分にもやれることが沢山ありそうだと考え、入社を決めました。

キャリアのターニングポイント。営業から未経験で人事へ

──太田さんのキャリアのスタートは営業職だったとお伺いしました。人事にキャリアチェンジした理由とは?

最初は、人事になるというつもりは全くありませんでしたが、当時の人事部長から直接キャリアチェンジを勧められた、という理由があります。

もともとは音楽レコード会社でマーケティングや営業職を中心とした業務に就いていました。具体的にはアーティストのCDを売り込んだり、店頭のプロモーションを企画したりという仕事を経験していました。会社自体が新しいものが好きな人の集団であり、私自身音楽が好きでしたし、そのビジネスに携わっていることが当時のモチベーションでした。

担当業務自体は好きでしたが、「自分はこの先どうするんだろう」と、漠然と考え始めた時期でもありました。この頃、通常業務の傍ら企業内組合で委員長をしており、人事部や経営陣ともかかわる機会も多々ありました。

自分では予期していませんでしたが、当時の人事部長から「人事をやってみるのはどう?」と誘われ、最初はあまり興味を持てず断りましたが、ガラッと仕事内容を変えてみるのもひとつの手かなと思って、キャリアチェンジを決意しました。これが2002年のことです。

──キャリアチェンジの際に苦労を感じたことはありますか?

正直、人事へ移った最初の数か月はあまりに静かで刺激のない環境で、少し後悔もしましたね(笑)。そして新しく覚えなければならないことも多々ありました。

自分で狙ったわけではない思いがけないキャリアチェンジでしたが、その後の転職も含めてこれまでの経験から顧みると、“ほとんどの人のキャリアは偶然起こることの積み重ねで決まる”といった、まさに「Planned Happenstance理論 」の考え方そのものだったと思います。今の仕事も、偶然によって起きた変化を自分の中でチャンスと捉え、どう踏み出していくかという行動の積み重ねの結果だったと考えています

Planned Happenstance理論
キャリアは偶然の積み重ねで形成されるため、予期せぬ出来事をいかにチャンスに結び付けるかを重要だと考える理論。「Curiosity:好奇心」、「Persistence:持続性」、「Flexibility:柔軟性」、「Optimism:楽観性」、「Risk Take:行動に移すこと」の5つを重要なスキルとしている。

──人事のキャリアはどのように深めたのですか。

人事関連のさまざまな研修に加え、ビジネススクールにも入学しました。夜間や週末に授業をしている学校へ通っていました。人事へキャリアチェンジした際、ビジネスの基礎的な事で分からないことが多くて。人事の仕事に移って、改めてビジネスの基礎知識が足りないと気付いたんです。

キャリアを高めていくためには、やっぱりビジネスの基礎を勉強しなければならないなと思って、ビジネススクールには2年間通いました。2年生になる頃に転職をして、前職に移った時に卒業しましたね。まったく知らなかった分野も沢山ありましたが、やり始めたら面白かったですよ。

スーパーフレックスに定年廃止、先進的な制度の導入を手がける

画像:アイロボットジャパン・太田浩さん(@人事・人事のキャリア)

太田さん アイロボットジャパン社内で撮影【提供写真】

──アイロボットジャパンに入って、最初に着手されたお仕事はどういう分野だったのでしょうか。

2017年の4月にアイロボットジャパンが設立され、その直後に新しい組織のリーダーの1人として入社しました。最初に、給与・報酬制度の変革に取り組みました。

当時は、後から入ってくる社員の報酬の仕組みと、既に在籍している社員の報酬制度が違っているダブルスタンダード状態がありました。「それは早急に見直さなければいけない」ということで、業績によって変動する夏冬賞与を含めた典型的な日本型の給与制度から、年間の基礎給与を保証するといった、いわゆる年俸制度を導入しました。

他にも、採用制度のプロセスの整備を行いました。当時は会社の設立初期ということもあり、新しい人材をどんどん採用しなければいけない段階でしたが、既定の採用プロセスが社内で定まっていませんでしたので、これまでの経験をもとにリクルーターと一緒に面接のプロセスや意思決定の方法を整理しました。

──アイロボットジャパンでは「スーパーフレックス制度」の導入を行ったと聞きました。

アイロボットジャパンのスーパーフレックス制度は、個人の生産性をより高めて働くためにはどうすればいいのか、という思考から生まれた制度です。

もともと「何時から何時まで」というようなコアタイムがあるフレックス制度は存在していました。そこから、いわゆる労務管理として労働時間だけを考えて働き方を縛る方向ではなく、従業員のパフォーマンスのさらなる向上のため、自由な働き方の幅を増やすための制度を作ろう、となりスーパーフレックス制度の導入となりました。

スーパーフレックス制度
フレックスタイム制度のコアタイムを無くした制度。フレックスタイム制度のように必ず出社しなくてはならない時間が存在しないため、いつでも好きな時に出社と退社ができる、自由度が高い制度。

社員個人の裁量や自由度を増やすという方向性が十分明確になっていれば、パフォーマンスが個人にフォーカスされるので、社員にはしっかりと貢献いただけると思います。

「自由度の高い制度を利用して仕事をサボるのではないか」という懸念点はもちろんありましたが、それは個別に対処すればよい話です。「悪用するかもしれない一部のために従来のルールをキープして縛るのだったら、より社員の皆さんが働きやすい環境にするために、自由裁量を提供した方が良い」という決定をしました。

──このほか、自由な働き方を進めるために整備された制度はあるのでしょうか?

画像:アイロボットジャパン・太田浩さん(@人事・人事のキャリア)

直近の例ですと定年制度を廃止しました。2021年7月からアイロボットジャパンでは定年はなくなりました。

もともと当社は60歳定年だったのですが、2021年4月施行の高年齢者雇用安定法の改正もあり、定年を65歳に延長している企業も増えていることから、「定年制度を見直さなければならない」という議論を社内で始めました。

そのときに「そもそも定年制は、”人事的な判断には、年齢や性別、個人的背景などは一切考慮しない”という当社の基本的な考え方と合致しているのか?」という問いかけがありました。日本では終身雇用という従来型の雇用慣行と、解雇をしにくいという法制度の特徴も相まって、他の多くの国では認められていない定年退職制度を設けることが一般的ですが、定年によって熟練した賢知を失うリスクや、定年間近にパフォーマンスが落ちてしまっても「もうすぐ定年だから」と許容してしまう可能性があると考えています。

また、アイロボットジャパンで働く社員には「ただ●●歳で定年だから」という理由ではなく「キャリアのゴールは社員自身が選び取って決める責任がある」という主体性を重視して欲しいとも考えました。その結果として「年齢に関係なく貢献してほしい」というメッセージと、ダイバーシティの一環として定年制度を廃止する決定をした、という経緯があります。

定年廃止やスーパーフレックス制度も「ルールで縛る」というより自由裁量でフレキシブルに働くための制度です。自由裁量というのは楽をするという意味ではなく、自分の裁量で業務を遂行し期待された成果を発揮し組織に貢献する、という責任が伴うものです。

米国ではそもそも定年制がなく、労働時間ではなく労働成果に対して報酬を払う制度で働く社員が多くいます。日本の法律との兼ね合いを考えながら、自社の理念とマッチした、さまざまな考え方や個人的背景についての多様性を尊重し、純粋に個々のパフォーマンスにフォーカスした制度作りをしていくことが人事にとって重要と考えています。

HRビジネスパートナーを目指すために必要な経験とは

──太田さんの経験から、これからHRビジネスパートナーを目指す人にはどんな経験が必要だと思われますか。

ビジネス経験は必要だと思いますので、他の分野からのキャリアチェンジは面白いと思います。私自身も前職でのHRビジネスパートナーとしてのオファーをいただいた時、過去のビジネスの現場における経験も採用判断理由の1つになったと後から聞きました。

日本の企業だと「新卒からずっと人事畑でやってきた」「コンサルから人事になりました」という方もいらっしゃいますが、やはり人事というのはビジネスの成長を横からサポートできて初めて存在価値があるわけです。ビジネスがどういう課題やアジェンダを持っているかというのを知る必要がある。例えば新規開拓をする営業マンを経験していれば、人事領域では、自社を売り込んで候補者を口説いて応募や採用に結び付けるという、プロフェッショナルのリクルーターになれるかもしれない。そしてビジネスの現場での実体験を通じて経営や人事の課題を理解している方が良いんじゃないかな、とは思いますね。

外部からもうらやまれるような組織づくりを目指して

──人事のやりがいと、今後の目標を教えてください。

自社が外部から見ても、もちろん社内の社員にとっても「いい組織だね」とか、「いい会社だね」と思っていただいたり、「この会社だから成長できてるよね」とうらやまれるような会社になれたら、そこで働いている私たちも嬉しくなります。

アイロボットジャパンには明確なミッションやビジョンがあるので、その達成を経営者や社員の横から今後もサポートしたいと思っています。

──ありがとうございました。

【おわり】

画像:アイロボットジャパン・太田浩さん(@人事・人事のキャリア)

アイロボットジャパンでファミリーイベントとして行われるハロウィンパーティ【提供写真】

企業情報

アイロボットジャパン合同会社
■事業内容:世界トップのロボット専業メーカーとして、家庭で人々を支援する掃除ロボットを輸入・製造。
■本社所在地:東京都千代田区神田錦町3丁目20番地錦町トラッドスクエア
■設立年:2017年4月
■代表取締役社長:挽野 元
■従業員数: 約90人
■HP:https://www.irobot-jp.com/

※情報はすべて取材時点
※【提供写真】=アイロボットジャパン合同会社より提供を受けた写真

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【参考】「人事のキャリア」シリーズ一覧

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