令和の福利厚生を探る
従業員のモチベーションを高めるミズノの企業ユニフォーム「WORK WEAR」とは?
2025.04.23

熾烈な人材獲得競争や従業員のエンゲージメント向上が課題となる近年、企業のユニフォームは単なる作業着ではなく、福利厚生や企業ブランディングの重要な要素へと認識が変わってきた。
スポーツ用品で培った技術を生かし、働く人の生産性と快適性を追求するミズノの「ワークビジネス」事業が急成長を遂げている。今回、ミズノ株式会社の石居征宜氏に、スポーツメーカーならではの視点から企業ユニフォームの可能性と未来について伺った。【取材・構成:編集部】
スポーツの技術を働く人へ – ミズノのワークビジネス事業の誕生と成長
──貴社のワークビジネス事業について教えていただけますか。

ミズノ株式会社 グローバルマーケティング本部 コーポレートコミュニケーション室 石居征宜氏
われわれは創業119年目の会社で、スポーツメーカーとして皆さんにご存じいただいています。長年培ってきた「動きやすさ」や「快適さ」へのこだわりは、スポーツだけでなく、一般生活や働く人向けの衣類やシューズにも適用できると考え、2013年ごろからスポーツ以外の領域での販売強化を始めました。
特に、体を動かして働く方々はスポーツとの親和性が高いんです。汗をかく、長時間動き回る、力を使うなどの面で共通点があります。われわれのスポーツの知見を生かして、働く人向けにも快適なものを提供できると考えました。例えば動きやすい服の設計や、汗を素早く吸収・発散させる素材の開発、臭いを抑える技術、薄くても暖かい服の製造技術などですね。
──この事業がスタートしたきっかけは何だったのでしょうか。
約40年前にさかのぼります。当時、企業内の部活動が今よりも盛んで、われわれはスポーツユニフォームをそうした活動をしている企業のチームに納品していました。その関係から「うちの制服も作ってよ」というお話が企業さんからあったのが始まりです。当初はスポーツ向けが主力でしたので、注文を受ければ作る程度でしたが、徐々に広がっていきました。
1997年に企業向けオリジナルユニフォームに対応する営業部署を設置し、当面はその部署のみで対応するような状況が続きました。その後、会社の方針としてスポーツだけではなく一般生活者向けや働く人向けの商品を強化していこうという動きになり、2016年にワークシューズ、2018年にワークウエアを展開。両方がそろった2019年から本格的に事業部として立ち上げました。
急成長を遂げるワークビジネス事業の成功要因
──事業が急成長している理由はどこにあると思われますか。
事業部化前の売上は約38億円でしたが、2023年度は113億円、2024年度も前年度を超える成長を見せており、企業向けユニフォームが一番大きな売上を占めています。
成長要因としては、大企業との取引実績をホームページに掲載したり、建設業や物流業の展示会に出展して認知を広げたりしていることがあります。そこに総務や人事の方が情報収集に来られ、その後、営業部がフォローして契約に結びつけるという形で展開しています。
また、働き方改革や健康経営、エンゲージメント向上などの社会的背景とマッチしているのも大きいです。少子化で人口が減少している中、企業は従業員に対してより配慮する必要が出てきました。例えば、1日中履いていると足が痛くなるような靴ではなく、クッション性の良い靴を提供することで従業員の満足度を高める企業が増えています。。
スポーツメーカーならではの技術力が生み出す高付加価値ユニフォーム
──技術力の高さに驚きました。単に制服を売るだけでなく、企業に寄り添ってオーダーメードで作っているのが印象的です。
おっしゃる通りです。各企業さんのお悩みや活用シーンは違いますので、ヒアリングを丁寧に行っています。例えばJRさんの線路保線を担当している方々のウエアでは、スマホ用ポケットを付けて欲しいというご要望がありました。そういった細かなオーダーに応えるには、その方々の仕事内容を理解する必要があります。
開発から納品まで1年半から2年ほどかかることもあります。サンプルを作って試着していただき、数カ月使用した後にフィードバックをいただいて修正するという細かいやり取りをしています。
──具体的にどのような技術が生かされているのですか。
例えばサカイ引越センターさんの場合、夏場の作業時に汗が荷物に落ちないようにする必要があります。そこで、野球やゴルフ選手が使うようなアンダーウエアタイプの肌着を採用しました。これは汗を素早く吸収し発散させるので、気化熱によって涼しさも得られます。さらに筋肉の揺れを抑えて疲労軽減効果もあるんです。こういった提案は通常のアパレル会社ではなかなかできないことだと思います。
また、服の設計においても独自の工夫があります。人間の動きを研究し、どのように皮膚が伸びるかを解析した上で、ストレッチ素材をどこに配置するか、カッティングはどうすべきかを考えています。例えば通常のワイシャツをズボンに入れて腕を上げると、裾が出てしまいますよね。われわれの服は特殊なカッティング技術により、そうならないような設計ができています。
通常のTシャツは前後と袖を単純に縫い合わせただけですが、われわれの製品は人間の体が楕円形であることを考慮し、脇に別の生地を入れるなど立体的な設計をしています。そのため洗濯後のたたみにくさはありますが(笑)、その分体にフィットして動きやすいんです。
【写真】機能性を最大限引き出す開発技術をはじめ、サイトでは細部までこだわって作られた様子を開発者が説明している。参考:開発者インタビュー|ミズノ株式会社様
多様な業種ニーズに応える柔軟な対応力
──業種によって特殊な知識が必要な場面もあると思いますが、どう対応されていますか。
例えば、われわれが扱う衣服の多くはポリエステルなどの化学繊維です。スポーツウエアは速乾性や軽さを重視するためです。しかし、溶接などの火花が飛ぶ現場では難燃性のある綿素材が必要になります。綿は発散性が悪く、ストレッチ性も低いという課題がありますが、設計で対応してカバーしています。
業界によってルールが違うので、それに合わせた商品開発が必要です。既存の技術と新しい勉強を組み合わせて、できる限りのことをしています。
──技術力も高い分、単価も高い印象がありますが、実際に導入している企業は大企業が中心になりますか。
完全オリジナルのユニフォームは、ある程度の納品枚数がないと1枚あたりの単価が高くなりすぎるため、導入しているのは大企業が中心です。一方でカタログ品やセミオーダーなどの製品も用意しています。日本の企業数と同様、導入数で言えば中小企業のお客様の方が圧倒的に多いですね。
セミオーダーは特に人気が高く、Webシステムで約800通りの組み合わせから選べます。ジャケットのタイプや素材、襟の形、裾のデザイン、ポケットの有無、ファスナーの色など細かな仕様をカスタマイズできるので、完全オリジナルでなくても自社だけのウエアに近いものを作れます。
福利厚生としてのワークウエアと企業価値向上への貢献
── 導入している企業で特に喜ばれている点は何でしょうか。
やはり動きやすさ、着心地の良さですね。スポーツウエアと同様、服が動きを邪魔しないように作ることにこだわっています。そのため人間の動きを詳細に解析し、体の形に合わせた立体的な設計を行っています。
また、暑熱対策も重要なテーマです。ファン付きの作業服も提供していますが、外気温が高くなると、外から空気を取り込むだけでは効果が限られます。そこで昨年はペルチェ素子*を使ったクーラー機能付きの服をテスト販売したところ、瞬く間に売れました。
企業は従業員の暑熱対策に非常に関心が高く、労災を減らしたい、社員の健康管理をしたいという思いがあります。また、建設現場などで、暑さによる体調不良で作業員が倒れると工期遅延につながり、大きな損失になります。数万円の投資で工期を守れるなら経済的にも合理的だという判断です。
*直流電流を流すと片面で吸熱(冷却)し、反対面で発熱(加熱)する半導体素子。熱電素子、サーモモジュール、熱電変換素子とも呼ばれる。
──採用活動にミズノのユニフォームを活用している企業もあるのでしょうか。
特に中小企業では採用に苦労されているケースが多く、昔ながらの作業着ではなく、ミズノのスポーティなユニフォームを導入していることをアピールしている企業はあります。
大企業になるとミズノのロゴを入れないケースが多いのですが、中小企業では逆にブランド力をアピールするためにロゴを入れてほしいというご要望もあります。
ワークウエアの未来と成長戦略
──将来的な事業の目標はどのようなものでしょうか。
2027年3月期に売上180億円を目指しています。今後も企業のさまざまなお悩みに応えながら成長していきたいと考えています。
ユニフォーム以外にも、靴を企業でそろえるケースもありますが、服に比べると少ないですね。それでも、例えばサミットさんのように靴を共同開発するケースもあります。靴は服よりもパーツが多く開発が大変ですが、そういったニーズにも応えていきたいと思っています。
──ありがとうございました。
【写真】ミズノとサミットがワークシューズを共同開発した取り組みは厚生労働省の SAFEコンソーシアム アワード金賞(2024年度)を受賞した。
※情報は2025年4月18日時点
参考
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