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「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」


パワハラと指導の違いとは? 佐々木亮弁護士が徹底解説(中)

2019.08.07

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大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月から、パワハラをはじめとするハラスメント防止の対策が義務付けられる。気になるのは、日頃の指導とパワハラの線引きだ。パワハラ訴訟の第一人者の佐々木亮弁護士は「重要なのはパワハラが行われた背景と動機」と指摘する。具体例をもとにどんな背景が重要になるのか聞いた。
【2019年6月27日取材:@人事編集部・長谷川久美】

※前回の記事はこちら
吉本社長発言はアウト!? パワハラ防止法施行で何が変わる? 佐々木亮弁護士が徹底解説 上

目次
  1. 叱責とパワハラの違いは? 線引きよりも「背景」と「動機」が重要
  2. 具体例をもとに考察、同じ言動でもパワハラになる場合とならない場合が
  3. パワハラの録音は合法、録音されたら不都合になる叱責の仕方はNG!

佐々木亮(ささき・りょう)

弁護士。日本労働弁護団常任幹事。労働事件・民事事件を中心に扱い、ハラスメントに関する事件を多く担当。2013年に、長時間労働やパワハラなどの労働状況を支援するブラック企業被害対策弁護団を結成、代表を務める。

佐々木亮弁護士

叱責とパワハラの違いは? 線引きよりも「背景」と「動機」が重要

――パワハラ法の内容については分かりましたが、実際にどんなことがパワハラになるのか、やはり現場では判断が難しいのでは…?

これまで行われた裁判の判例をもとに、厚労省ではパワハラの6類型というのを公表しています。今後審議会を経て厚労省が発表する指針でも、これを踏襲した行為がパワハラだと定められると思われます。

図:厚生労働省が紹介するパワハラ6類型(明るい職場応援団で公開の図をもとに@人事編集部が作成)

【図】「厚生労働省が紹介するパワハラ6類型」(「明るい職場応援団」で公開の図をもとに@人事編集部が作成)

重要なのは実際に裁判でパワハラを認定する際には明確な暴力を除き、「このワードを言ったら即パワハラ」「この行為をやったから絶対にパワハラ」と簡単に白黒の判断ができるわけではない、という点です。

パワハラの認定には、相手を指導するために行ったことか、本人を攻撃する意図があったか、という背景が非常に重要な判断材料になります。

「バカ」「給料泥棒」「死ね」などの言葉について考えてみましょう。

これらは「業務指導とは関係のない言葉」という判例の積み重ねがあるため、裁判官もあまり迷わず安心してアウト認定できるワード。しかし、「お前は仕事ができないな」などの叱責の場合はそう簡単にはいかない。総合的に状況を見てパワハラかどうか判断していきます。

同じ「お前は仕事ができないな」の言葉であっても、その背景と動機によってパワハラかどうかの判断は変わります。いつもは親身になって指導している上司がつい口走ってしまった「お前は仕事ができないな」と、日頃から部下を攻撃する目的で発せられる「お前は仕事できないな」は、パワハラの認定上は同じ扱いにはなりません。

パワハラについて、「何がアウトなのかセーフなのか」という線引きばかりを気にしてしまいがちですが、言動がパワハラかどうか、裁判で決め手になるのは実はその「背景」と「動機」の方なのです。

パワハラと指導の違い表

具体例をもとに考察、同じ言動でもパワハラになる場合とならない場合が

――パワハラの線引きばかりを気にしていました…。線引きは脇において、ケースごとにパワハラになる背景を教えてください。

佐々木亮弁護士

ケースごとのパワハラの背景について、佐々木弁護士に一緒に考えてもらった

ケース①叱責メールの一斉送信

失敗ばかりで損害を出している社員の行動を他の同僚にも周知させるため、「やる気がないから会社を辞めたほうがいいぞ」などの叱責メールを部署内で一斉送信する

佐々木:この場合、「精神的な攻撃」のパワハラになる可能性があります。見せしめ目的の叱責は侮辱と判断される場合も。落ち度がある社員の指導でも、退職や解雇、処分をほのめかす言動がパワハラと認められた例もあります。

ケース②プライバシーに踏み入る

上司との面談で毎回のように離婚歴や子供の通っている学校のことなど、私生活のことを詳しく聞かれる。「それ聞く必要あるんですか?」とやんわり制しても対応を変えてくれない。

佐々木:本人が拒否しているのに私生活のことを詳しく詮索するのは「個の侵害」のパワハラに当たる可能性があります。状況や行為が継続的であるかどうかによって判断は左右されます。

ケース③若手社員のSNS投稿

ツイッターに「うちの製品は安いからすぐ故障する」など匿名で会社の悪口を書き込んでいる部下に「いますぐにツイッターをやめろ」と命令する。

佐々木:悪意をもって会社の営業を妨害する、誤ったことをツイートする部下への叱責は妥当と思われます。この場合はパワハラにはならないでしょう。ただし、「ツイッターをやめろ」という命令は個人のプライバシーに踏み入っており「個の侵害」のパワハラになる可能性があります。適切な指導をしたいなら、かける言葉は「不適切なツイートを削除しなさい」でしょう。

ケース④リストラ候補の課長の処遇

退職を勧めても応じない課長に任せる仕事がなかったので、処遇が決定するまでとりあえずコピー係と書類整理の仕事についてもらった。

佐々木:これまでの経験と能力とかけ離れた仕事をさせている場合は「過小な要求」のパワハラに当たる可能性があります。この場合、その仕事を要求する背景が重要で、社員をやめさせる目的があった場合、パワハラと判断される可能性が高まります。

パワハラの録音は合法、録音されたら不都合になる叱責の仕方はNG!

――裁判でパワハラの証拠とされるのはどんなものですか? ちょっとしたことがパワハラの証拠とされてしまうのでは、と言う不安もあります。

実際の裁判や労働紛争では被害者が録音したパワハラ現場の音声や、日頃の指導の方法など、パワハラと思われる言動が行われた背景も含めて認定を行っていきます。近年は、パワハラが行われた際の録音音声が有効な証拠になる事例が増えています。

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2017年、そして今年の7月にも国会議員秘書が議員の行った暴言や暴力をパワハラとして訴えた事件が大きく注目を集めました。

関連記事:録音されたら終わり!? パワハラ上司にならないために大事なこと

パワハラの危険を感じた労働者が職場で録音するのは裁判でも認められており、企業側が理由なく禁止することはできません。秘密録音であっても、裁判の証拠として有効です。

★ポイント
・秘密録音でも、パワハラの証拠としては有効
・録音は合法なので、日頃から攻撃的・侮蔑的な発言はしないようにする

常に録音に備える必要はありませんが、「録音されていたら言い訳ができないようなパワハラ発言」を日頃からしていないかどうか、一度点検してみることは必要かもしれません。

それに、「部下に録音されているかもしれない」ということだけを心配するのはちょっと違います。録音の心配をよりもまず必要なのは、会話の録音をしていそうな部下との信頼関係を見直すことではないでしょうか。

中編では主にパワハラと指導についての話を伺いました。後編では、中小企業の人事ができる対策について佐々木弁護士に解説していただきます。

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