社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発
永年勤続表彰を導入し、社員に感謝の気持ちを伝えよう
2017.06.09
永年勤続表彰制度とは?
長く会社に勤務している社員に、会社からの感謝の気持ちを表す方法として永年勤続表彰制度があります。会社によって異なりますが、勤続5年目から5年ごと、あるいは10年目から10年ごというように「節目」となる勤続年次に、永年勤続表彰の記念として、以下のものを1つあるいは複数を会社側が贈呈することが多いです。
①褒賞品(賞金も含む)
②表彰状
③特別休暇
④記念式典
⑤旅行・観劇などのイベント
今回は私が以前在籍していた会社を例に「どんなことをしていたのか」「それに対する社員の反応はどうだったのか」をご紹介いたします。
グループ会社内の転籍は勤続年数に算入
私が以前在籍していた会社はいわゆる外資系企業だったので、全世界で制度が統一されていました。勤続10年ごとに、それぞれの褒賞品リストから1つ褒賞を選択し、それに名前をエングレービング(刻印)されたものが該当社員に贈られます。勤続年数が長くなると選択できる褒賞品のグレードが高いものになっていきます。毎年1回、勤続10年、20年、30年に相当する社員を人事部門で抽出し、該当社員にリストを送付して返信してもらいます。この褒賞品選定時期は、該当社員は何にするのかを選択するのにちょっとした高揚感を抱き、それを見ている周囲の社員も「あとXX年後は自分だ」「自分ならこれを選ぶ」といったことに思いを馳せているようです。
また、勤続年数については世界共通のルールがありました。同じグループ会社内の転籍については、継続した勤続年数とみなすというものです。例えば、日本法人で採用された社員が6年後にスイス法人に転籍となり、そこで4年勤務すると、勤続10年となります。そのため、イギリスで勤務していた方が日本法人に転籍してきてから2年後に永年勤続表彰の対象となったこともありました。
ローカル裁量で記念式典を実施
統一されている制度はここまでで、それ以外のことは各国の裁量に任されています。日本では、この褒賞品が海外から届く時期にあわせて、それを渡す記念式典を秋に行っていました。平日の昼に実施し、褒賞品を渡すだけではなく、社長や来賓(該当社員の所属部門長)からの祝辞、永年勤続表彰者の代表数名からの挨拶、昼食、褒賞品を一人ずつ授与するといった3時間程度の式典です。当日はその式典終了後に帰宅することを推奨(=みなし勤務扱いにしていた)していたので、少量ですがアルコールもドリンクメニューに含んでいました。
席次の調整も人事部門の仕事
記念式典は、ホテルの宴会場にて行いました。式典の最初に全体で記念撮影を行っていたのですが、カメラマンも機材も揃っており、段取りがスムーズでした。また、ホテルはこのような式典の運営には慣れており、多少のイレギュラーが発生しても迅速に対応いただけるので、毎回助かっておりました。よくあるのが、スピーチの時間が想定とは異なり、進行具合がずれることです。あれこれと話し続けて、長くなるのは若干想定していたのですが、予定していた時間よりも短く終わってしまうことが何名か連続したので(これは見積もり時間が甘かったとも言えます)、結果的に昼食の開始が予定より20分以上前倒しになってしまいました。そのような時も卒なく対応いただき、空白時間は全く発生しませんでした。
年度によって人数は異なるものの、来賓なども含めると約50名が一回の式典に出席していました。そのため、事前に座席を決めておくのですが、これもできるだけ普段接する機会が少ない人と話せるように調整しました。まったく誰も知らない人ばかり……とならないように、そのあたりの調整も私が行いました。
他部門の協力は不可欠
記念式典が終了した数日後には、その様子をWeb社内報にアップして全社員が照会できるようにしました。これは実際に行ったことを報告するだけではなく、「長く働いてもらっていることに感謝をしている」ことを、社員に対してメッセージとして示すことでもあります。
また、褒賞品は現物支給のため、給与の課税処理対象となります。ただし、この課税については会社で負担する形をとっていました。控除される税金額と同じ金額を支給することでプラスマイナスゼロということです。各国によって税制が異なり、こういった指示は海外本社からは出ないため、経理部門にも確認しつつ適切な対応を取りました。
永年勤続表彰の企画および主体的な運営は人事部門が担っていますが、他の部門の方々の協力が無いと成り立ちません。上記の経理部門以外にも、褒賞品の受領や記念式典会場への運搬などには物流部門、各来賓のスケジュール調整などで秘書の方々にも関与してもらっていました。こういった企画を実施したことによって、社員が「ここで働いていることを誇りに思う」「会社から祝われたことがうれしかった」といったコメントを直接もらった時は、やっていてよかったと思ったものです。
【編集部より】
社員のモチベーションアップにつながる社内制度に関する記事はこちら。
執筆者紹介
永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。
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