コラム

社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発


研修プログラムの「ローカライズ」で押さえておきたいポイント

2017.03.22

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外資系企業にて勤務している場合、様々な人事制度の「ローカライズ」という業務が発生することがあります。具体的には、海外の本社で設計された人事制度を日本法人(支社)に展開するために、文書やツールなどを翻訳し、実際にそれを使って業務を行うことを指しています。反対に日本に本社があるグローバル企業の場合は、日本で準備した人事制度やプログラムを海外に展開することになります。今回は、研修プログラムをメインの題材として、海外の本社から日本法人へのプログラムのローカライズにて押さえておきたいポイントについて、ご紹介したいと思います

1.翻訳は意訳および社内共通用語を使用する

導入対象となる研修プログラム内容を理解した上で、最初に発生するのが、研修プログラムで使用する文書やツールの日本語への翻訳になります。ボリュームが少なければ、担当者が翻訳した方が良いでしょう。担当者ならば単純な翻訳ではなく、研修プログラムの本質や意味合いを考慮した「意訳」をすることが可能だからです。時間的制約がある、あるいは、ボリュームがとても多い場合は、翻訳会社にて翻訳してもらったうえで、翻訳された日本語のプルーフリーディングを行う方がよいでしょう。この場合、翻訳会社から納品された翻訳文書はどうしても直訳的なものになってしまいます。そのため、それを確認しながら、社内共通用語を用いて意訳する必要があります。社内共通用語とは、例えば、「部署」のことを「領域/部門」と表記するなど、社内の事情に精通していないとあてはめにくい用語や、社内で通用している単語のことを指します。

法人契約をしている翻訳会社があるならば、そちらを利用した方がよいでしょう。社内事情に詳しい翻訳会社の方が、プルーフリーディングによる修正量は少なく済むことと、場合によってはボリュームディスカウントなどに応じてくれるからです。時間が無いと、つい目先にあるツールなどを使いがちですが、購買部門や翻訳を行う機会が多い方(広報担当者や秘書など)に伺うと、情報を得られることが多いです。

2.状況に応じて部分的にカスタマイズを行う

単純に日本語に翻訳しただけで支障がなければそれでよいのですが、研修プログラムにおいては、日本のおかれている状況・環境とそぐあわない可能性があります。その場合は、必要に応じて一部の研修プログラムコンテンツを修正する、あるいはローカルで作成する必要があります。ただしこれは、各社の置かれている状況や研修プログラム内容に応じてそういったカスタマイズが許容されるかどうかが異なってきます。

かつて、下記のようなケーススタディが含まれている評価者向け研修プログラムがありました。

架空の時計ブランドが、最近になって海外に進出するようになりました。国をまたがって営業管理を行っている本国の営業マネジャーが、各国の営業担当者のマネジメントを行うに際して直面した問題点について洗い出し、その対応策をディスカッションする。

このケーススタディでは、各国と本国との関係性などの背景や、各スタッフの業務遂行レベルやモチベーションについて細かな設定がされていました。そういった文書を読んだ上でグループディスカッションを行うことになっていたのですが、このケーススタディをそのまま日本で実施するのは、多少問題がありました。日本は商品を本国から輸入して販売することが主の事業であり、日本が本国になる事業は行っていないため、どの受講者にもイメージしにくい内容だったからです。営業以外の職種(マーケティング、管理部門、店舗スタッフなど)のスタッフも受講対象なので、そういった方にとってはさらにケーススタディとして実感がわきにくい内容でした。

「研修アジェンダの時間割り振りも変更してはいけない」という制約がある企業もあるようです。しかし、私が在籍していた企業の場合は、「研修目的のエッセンスが担保されていれば、変更は構わない」という意向だったので、ケーススタディを日本で別途作成するというカスタマイズ(変更・修正)を行ってローカライズしました。

3.内容や制度についてフィードバックをする

実際に展開した研修プログラムについては、その結果良い点や今後改善すべき点を本国にフィードバックしたほうがよいでしょう。私の場合は、本国からもフィードバックを求められる機会があったので、そのサイクルに乗ったというのが正直なところです。場合によっては、テレフォンカンファレンスを行うこともありました。そういったことによって、研修プログラムそのものがさらにブラッシュアップして改善されていきました。

日本に本社があるグローバル企業の場合は、共通土台として押さえておきたい部分を明確にした上で、内容のフィードバックをもらう必要があるでしょう。単なる「お仕着せ」だと、研修プログラムそのものが形骸化する傾向があるからです。

4.まとめ

今回は研修プログラムのローカライズについてご紹介しました。先に本国で導入されたものを後から展開するケースを想定しておりますが、最近では、全世界からメンバーをアサインして、新たなプログラムをプロジェクトチームにて取り組むこともあります。私が在籍していた会社では、サクセッションプランニング(後継者管理)が該当しました。段階的に対象社員の範囲が広がったのですが、地域・国による差はなく、その観点で言えば「同時導入」でした。グローバル企業では、同じ研修プログラムを導入することは、国や地域をこえた異動(モビリティー)を行う土壌ができることにつながっています。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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