働く場所が働き方を変える「コワーキングスペース×◯◯」
働き方改革最前線! 知られざる「サウナワーカー」の実態とサウナ活用術
2018.12.13
なぜ、働く人は集中環境を求めてサウナに足を運ぶのか――。
今年で6年目を迎えた、働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」の一環として行われた「Tokyo Sauna Work Design Week」(会場:スカイスパYOKOHAMA)。そこでは、「よし、サウナで働こう」をメインテーマに熱い議論が交わされた。
サウナを愛する「サウナワーカー」や有識者が集まり、「複業時代に必要とされるサボり方」や「職場の人間関係を良くするためのサウナ活用術」について語られた中で判明した、サウナワーカーたちの知られざる実態やサウナ活用術とは。【2018年11月13日取材・執筆:野澤 麿友子、構成:編集部】
【参考】サウナで集中力がアップする!「コワーキングスペース×サウナ」の魅力とは
トークテーマ「複業解禁時代の働き方改革は、集中改革かサボり方改革か」
【登壇者紹介】
なぜ、今、「サボり方改革」なのか
生産性を上げるためのライフハックには、多くの人がすでに着目しているだろう。例えば、ポモドーロテクニックがその1つだ。これは、人間の集中力がどうしたら持続するかを調べ、考案されたものである。「25分集中して5分休む」を1ポモドーロという単位とし、これを4回繰り返して30分休む、を繰り返すと人間の集中力が1番持続するとされている。
だが、この5分間や30分間の休憩を「どのように過ごせばいいのか」については、これまでほとんど語られてこなかったのではないか、と加勇田氏は指摘する。「脳は飽きて疲れると働かなくなるので、この作業は飽きたなと感じたら、すぐに別のことに移った方が実は効率が良いです」と語る。この、脳が飽きるまでの時間の目安が25分なのだそう。
健康経営というと、ストレスフルな社員を休ませてあげよう、不健康な社員を健康にしよう、というネガティブ起点の発想になりがちだが、それでは手遅れと言わざるをえない。そうではなく、もともと良い状態の社員の「良い状態」をキープするために休ませる文化を作る。そんなポジティブな健康経営・働き方改革こそ、今求められている。
複業時代のサボり方改革
ここで、加勇田氏がカヤック社で実施した面白い研修を取り上げたい。その名も「サボり方研修」。もともとは仕事が大好きで、休憩すらタスク化しなければ取らないほどのワーカーホリックだったという彼。しかし、働きすぎによるうつ病の発症をきっかけに、休むことの大切さに気付いた。
現代は複業解禁時代ともいわれ、本業以外にも収入の柱を持つパラレルワーカーが徐々に増えつつある。しかし、「複業においてはセルフマネジメントが非常に重要で、本業で死ぬほど働いているのに、本来休むべきプライベートの時間を削って行うような副業は絶対にNGです」と、複業を推進する西村氏も休むことの大切さについて同意する。
これからの時代、個人も企業も上手に休憩を取り入れ、意識的に休むことを仕組み化することが、本業と副業を無理なく両立し、相乗効果を生むための重要なポイントであることを意識しておきたい。
現代人の集中環境を促進するコワーキングサウナとは
井上一鷹氏によると、「JINS MEMEで実際に社員の集中力を計測したところ、オフィスにいる時間が一番集中していないことが分かった」という。人間は深い集中状態に入るために平均23分要する。しかし11分に1回メールやビジネスチャット、壁のないオフィスでの社員同士のやりとりにさらされる。そうした背景から、社員の集中力を高め、リフレッシュ効果もあると「マインドフルネス」をはじめとする瞑想が着目された。
サウナがマインドフルネスな環境か、と問われればそんなことはないが、集中力を高めることに着目するならば最適な環境だ。
「そもそも日本人は完璧主義だから、マインドフルネスを効果的だと聞けば積極的に取り入れる。でも、意識的にやらないと取り組めないことは三日坊主になりがちで継続することが難しい」と加勇田氏は語る。100%を継続できないなら、50%でもいいからできるだけ雑音の入らない環境に身を置く時間を日常的に持つことが大切になる。その点、サウナは日常の1シーンとして無理なく取り入れることができる場だ。
また、サウナと水風呂を繰り返すことは、人間が集中状態に入るためのルーティンと同じメカニズムを持つ。コワーキングサウナは、その集中状態を持続したまま、浴室の外でも、そのルーティンの再現を目指した施設だ。意識的に集中すること・サボることが求められるこの時代、サウナワーカーとしての働き方を1度試してみるのも良いだろう。
トークテーマ「働き方改革で『会話減った』職場~なぜ部長たちはサウナに吸い込まれたのか~」
【登壇者紹介】
中間管理職の悩みを払拭する! 効果的なサウナの使い方
第3部では、大手企業でサウナ部長を務めるメンバーにより、各企業のサウナ部の活動と、中間管理職として組織開発の観点からどのように効果的にサウナを活用しているのかを中心にディスカッションがなされた。
「仕事や肩書をサウナの中に持ち込みます」と話す瀬尾氏。サウナ部を作ったのも、仕事に悩む若手に自分の頭で考える癖をつけさせようと、強制的に物事を考えさせる場としてサウナを選んだことがきっかけだった。しかし、現在ではサウナには思わぬメリットがあると感じているという。
「中間管理職の立場で一番つらいのはメンバーにシビアなフィードバックをしなければならないときです。でも、サウナという場で伝えると、後腐れがないなと感じています」と瀬尾氏は語る。サウナに長くはいられない。どれだけシビアなことを伝えても10分程度で終わる上に、やはり浴後は心身共にリフレッシュしている。その後、飲みに行くことで部下のアフターフォローもできるのだという。
瀬尾氏に続き、他の登壇者らもサウナの効用を熱く語る。
「最初から裸の付き合いのため、一気に壁がとれて、新しく入ってきたメンバーが組織に馴染みやすい」「オフィスだと構えてしまう部長会議をサウナで実施することで、趣味の話などに花を咲かせてアイスブレイクができ、肩ひじを張らない建設的な話し合いができる」といったサウナならではのメリットを挙げる登壇者ら。
また、「自己紹介のときにサウナハットをかぶっているなどの特徴を伝えることで、下位のメンバーから声をかけてもらいやすくなる」といった部下や後輩とのコミュニケーションのコツまで紹介された。
「現在は組織の蛸壺化によってフリーアドレスでフェイストゥフェイスのコミュニケーションが圧倒的に減っているように思います。主体的に意識を外に向けないと、同じような人と同じような仕事をしていて視野が狭くなってしまいます」と警鐘を鳴らす高須氏。サウナはオフィスでは絶対に話さないような本音の会話が飛び交い、気軽に集まれるインフォーマルな場として有効のようだ。
集中とリラックスを重視するコワーキングスペースの将来
これまでの働き方改革は、テレワーク、ノー残業デーなど、場所や時間の観点からいかに生産効率を上げるかに注目されてきた。しかし、今回のディスカッションを通じて、いかに集中とリラックスのバランスを保つか、そして、いかに本音の会話を引き出すリレーションを築くかといった、さらに1歩踏み込んだ働き方改革の在り方をサウナワーカーたちから学んだように思う。
これからの企業は、ときに進化し続けるコワーキングスペースを活用しながら、社員の集中と休憩のバランスを仕組み化することも求められているのだろう。
イベント概要
Tokyo Sauna Work Design Week
日時:2018年11月13日(火) 18:45~22:45
主催・会場:スカイスパYOKOHAMA(横浜市西区高島2-19-12 スカイビル14F)
プログラム
<第一部>経営者はなぜサウナに吸い込まれるのか
ランサーズ株式会社代表取締役社長・秋好陽介氏
株式会社TABI LABO 代表取締役・久志 尚太郎氏
株式会社PR Table 取締役・菅原弘暁氏
株式会社マクアケ代表取締役社長・中山亮太郎氏
<第二部>複業解禁時代の働き方改革は、集中改革かサボり方改革か
株式会社ジンズJINS MEME事業部事業統括兼Think Labプロジェクト統括・井上一鷹氏
Hasunoha CMO/コワーキングサウナプロデューサー・加勇田雄介氏
複業研究家/人事コンサルタント・西村創一朗氏
<第三部>働き方改革で「会話減った」職場~なぜ部長たちはサウナに吸い込まれたのか~
コクヨエンジニアリング&テクノロジー株式会社 東日本SE2部部長 兼サウナ部部長・川田直樹氏
株式会社みんなのウェディング 営業統括 兼サウナ部部長・瀬尾圭太氏
株式会社日本経済新聞社 デジタル事業部エンジニア 兼サウナ部部長・岡本康祐氏
【編集部より】
働く環境に関連する記事はこちら
執筆者紹介
野澤 麿友子(のざわ・まゆこ)(株式会社スキマタイズ) 本職はIT企業人事。新卒で入社したメーカーで経営企画業務に携わる中、「従業員の幸せ」と「会社の発展」を両立できないことに疑問を持ち、それを実現できる人事になることを決意して転職。将来の夢はCHRO。人の理念や情熱などの漠然とした想いを、言語化することが好き。
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
特集
働く場所が働き方を変える「コワーキングスペース×◯◯」
サウナで集中力がアップする!「コワーキングスペース×サウナ」の魅力とは
コワーキングスペースとサウナが融合した「コワーキングサウナ」テレワークの普及により、オフィス以外で働く人が増えている。多様な働き方が推進されている中、これまでにない新たなワーキング...
2018.12.11
-
特集
働きやすい職場づくり~キヤノンS&S東北支社編
生産性向上とコスト削減を同時に実現! キヤノンS&Sのオフィス改革
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループでは、2003年の本社移転をきっかけにグループ全体でオフィス改革に取り組み、生産性向上やコスト削減を実現させている。キヤノンM...
2018.10.05
-
特集
働きやすい職場づくり~コクヨ東北販売編
働き方改革、オフィスで実践!コクヨに学ぶ、働きやすいオフィスの作り方
大手文具メーカーとして知られるコクヨは近年、企業に働きやすいオフィスの設計を提案することで売上を伸ばしている。そんなコクヨの東北地方での販売を担うコクヨ東北販売が今年1月、「業務効...
2018.02.20
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
ChatGPTなどの生成AIの登場により、「生成AIに仕事を奪われるのではないか」という危機感など、波紋が広がっている。そこで@人事は、このように生成AIが一般化する社会の中で、人...
2023.11.21
-
特集
ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論vol.3
【2024年の人的資本開示で必須】生成AIの「働く場」へのインパクト~制度や体制・育成や人事制度、採用について
ChatGPTをはじめとする生成AIが一般化する社会の中で、人材戦略・人的資本経営のをどのように行うべきかを解説する特集。第3回は、前回に引き続き、経営人事の実務上の留意点を紹介す...
2023.11.15
-
特集
ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論vol.2
【2024年の人的資本開示で必須】生成AIの「働く場」へのインパクト
ChatGPTをはじめとする生成AIが一般化する社会の中で、人材戦略・人的資本経営のをどのように行うべきかを解説する特集。第2回は、前回考察した人材戦略全体にわたる留意点について細...
2023.11.13
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?