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【レポート】HR HoT Leaders Conference #1(後編)


キャリアのオーナーシップは企業か、個人か。人事はもっと投資観点を持つべき論。

2018.11.02

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主催者のチカイケ秀夫氏は言った。「今日のメインテーマはプロレスです。ここはリングです」。独自の価値観をTwitterで発信し続ける、HR界隈で話題の3名が集結し、繰り広げられるHR×プロレス。最終章となる後編は、「キャリアのオーナーシップと、これからの経営者および人事に求められる投資観点」について。ゲストも参戦しながら熱い議論を交わした様子を伝える。【2018年9月18日取材】
【前編はこちら】それは新しい熱狂。HR×「プロレス」開幕。
【中編はこちら】個人寄りのHR系インフルエンサーが経営者にすごく評判が悪い理由。

HR HoT Leaders Conferenceとは(主催者発表より)

【趣旨】twitterでも独自の価値観や発信で、HR界隈で話題のHRの方が、今自分がHOTな話題と、それについて参加者も含めて、議論を深める場となります。

登壇者プロフィール、イベント概要はこちら

これからの人事に大切な視点はLTV(=Life Time Value/顧客生涯価値)

チカイケ:さて、キャリアのオーナーシップは誰のものかという議論で盛り上がりました(※中編参照)が、この点について私たちは今後どうしていったらいいと思いますか。

寺口:社員は会社にとって「消費」か「投資」かという話もあると思いますが、会社からしたら消費前提で雇用していた社員が、自分の時間に投資し始めて面倒くさいっていうのが本音だと思います。でも会社が人材に投資するのであれば、投資対投資になるから等価交換もできるはずなんですよ。そういうふうにマネジメントさえ変えていければ、全然難しい問題でもなく、むしろシンプルな話だと思いますね。

ゲスト(企業人事):いろんな会社を見ていて、「オーナーシップはどんどん個人に寄せるべき」と主張をする企業の多くが、採用費にお金をかけない工夫をしているなぁと感じています。社員が会社を卒業するときは、ビジネスマンの礼儀として採用費や研修費といった会社からの投資分を、きちんと利益として返してから次のステップに進むべきではないかと思うんです。そう考えると、採用において人材紹介会社を通さなくても済むような仕組みを作っていった方が、紹介手数料といった人件費への投資金額が下がる分、社員も返しやすくなって、経営目線としてもオーナーシップを個人に寄せていきやすくなるんじゃないかと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

チカイケ:いい質問ですね。この中で人材紹介会社といえば……

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三木:私ですね(笑)。仰る通りで、人材紹介会社の話でいうと、年収や条件面といった浅いヒアリングだけで安易に人材を紹介してくるような介在価値のない企業は、今後どんどん淘汰されてしかるべきだと思います。ただ、求職者のキャリアに対する悩みや、会社の条件面ではない部分でのどうしたいかっていう話があると思うので、そこにプラスアルファの付加価値をつけられるような人材紹介会社や優秀なキャリアコンサルタントは今後も生き残っていくでしょうし、企業にとっても社員にとっても、存在する価値や意味があると考えています。

寺口:辞めるときに「お前にいくら投資したと思っているんだ」と詰められる話を結構聞くと思いますが、実際に「じゃあ退職者に対して会社はいくらかけたんですか、それで退職者は会社に対していくらペイしたんですか」って聞いても分からないというのが現状ではないでしょうか。はじめから投資観点を持っていないので、個人にPLを引いていないわけです。でも、投資というのであれば資産化していないとおかしくて、BSにいくら乗っていて、そこに関してはちゃんとPLで返しましたよねってなったら、社員は退職してもよいということだと私も思っています。

さらに言えば、人材投資におけるこの考え方がレベル1だとするならば、レベル2ではLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)の考え方が重要になります。自社にいる間だけがその期間って考えるとLTVって非常にコスパが悪いんですよ。だから、本来は気持ちよく卒業してもらって、他のところに行っても案件をとってきてもらうとか、自社のユーザーやファンになってもらうとかするべきなんです。それなのに、「LTVって知っていますか」って人事担当者に聞いても答えられない人の方が多いと思います。つまるところ、それほどビジネス観点や投資観点のない人たちが、HR領域にいてしまったことの表れなんじゃないかなと思いますね。

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ただ、これは誰が悪いとかではなく、それまで必要なかったって言うだけの話です。でも、キャリアが個人回帰するこれからの時代においては違います。「退職してからの価値」にもサイエンスしていかないといけない。そこに関して、HRの部門は若干さぼってしまったと思っています。

だから、辞めたあとにどれだけ自社に利益をもたらすかを考えずに、お前にいくらかけたと思っているんだとか、うちでは務まらなかったダメなやつだとか、悪態をつくんじゃないでしょうか。投資観点を持っている人事であれば、絶対に言わないです。言うメリットがないですから。そこでそういう発言が出てくること自体が無知の裏返しじゃないかと思います。

注目すべきは「のれん代」。課題はどこまでストーリーを描けるか。

福本:BSのどこに着目するかで言えば、のれん代だと私は考えています。学生には、行動のリターンは、実績とか結果とかお金とか名声じゃなくて、全部「ストーリー」なんだということを必ず伝えています。

弊社の例をあげると、「SEOは全部無視しろ、自分の心の内情、インターンに来たことでどういう態度変容が起こったのかをぶちまけろ」って言って、学生にブログの中でそれを書いてもらったんです。そうしたら、どんどんPV数も増えてきて、新しい学生がそれを見て弊社に来てくれるようになりました。今では月間平均で100名以上の応募が来ます。

ブログに書いてもらうことで、学生がインターンを卒業した後も「××に取り組んでいた学生がいた」というストーリーとして残っていて、それが外部に対しても見えるようになっているので、最終的には企業のPRだったり、コミュニティデザインだったりにつながっています。手前味噌ではありますが、そこまで見通して会社をどうストーリー立てていくのかがこれからの時代の経営者に求められる視点だと思います。

ゲスト(大手企業社員):なるほど。擁護するわけではないですが、もしかすると辞める側の社員も退職時に会社のお客さんを持って行ってしまうとか、そういう行儀の悪いことをする人がいて、経営者側も警戒するのかもしれませんね。それを完全に規制することはできないかもしれませんが、なにか仕組み的にWIN-WINになれる形ってないのでしょうか。

三木:そもそも「採用」とか「退職」という言葉からなくしていくのが良いんじゃないでしょうか。私は、会社と個人で緩やかな関係性を作ることができたら1番良いなと考えています。性善も性悪もなくて、やりたいかやりたくないか、だけ。個人が続けたいと思えば、会社とずっとその関係性を続けていけばいいし、もうあなたのところは勘弁ですって言うのであれば、分かりました、お疲れさまですって。1回は自分の会社で働いてくれた仲間だから、次の会社に行っても「うちの会社をよろしく」と。経営者と人事は、そうした緩い関係をいかに許容できるのか、話し合いながら組織を作っていくべきなんじゃないかなと思っています。

寺口:結局、社員を性悪説で縛っても、やろうと思えばいくらでもすり抜けはできるんですよ。その辺は対話が必要かなと思います。

私は経営者になったことがないので経営の苦悩は分かりませんが、個人寄りのHR系インフルエンサーに対する感情って、感覚的には悪友が箱入り娘に「こんな面白い世界があるよ」って誘っているのを、「うちの子に変な好奇心を植え付けないで!やっと私のコントロール範囲内に収められたのに、そんなこと言ったら興味を持っちゃうじゃないの!」って心配する教育ママの視点と非常に似ているなと思っています。

時代がシフトしていっている過渡期だからこそコンフリクトが生まれていて、経営者が嫌がるのも当たり前のこと。だから、どちらもあって然りだと思います。まあ、時代がどちらへ向かっているのかというと個人寄りなので、そうじゃない会社がどこまで粘るのかっていう話だと思いますね。

ゲスト(大手企業社員):個人にキャリアを寄せるといっても、中には自分の頭で考えたくない・単純作業の方が好き!という人もいて、そういう人はこれからも企業寄りの働き方を望むと思うのですが、その点についてはいかがですか。

三木:この中で、個人で働いていた方っていますか。経験があると分かると思うのですが、個人で働くとまあ大変なこともあるじゃないですか。会社員だとまあ楽なこともあるじゃないですか。だから、これからの時代も、人から好かれて選ばれる面白い会社は生き残っていく一方で、そうじゃなくて搾取される人生ばかりを歩みたい人たちが集まるような大変な場所も確実に残ると思っています。なぜそう思えるのかというと、そもそも欧米はほぼそうなっているからです。私はそういう働き方が良いとは思いませんが、企業寄りの働き方がなくなることはないと思います。

寺口:私もそれが悪いとは全く思っていません。テクノロジーが超進化しない限りは定型業務は当然残るわけで、中にはそういう仕事が好きな人もいるから適材適所にすれば良いと思います。

閉幕。イベントを超えた、その先へ。

チカイケ深い……。名残惜しいですが、そろそろ時間なのでまとめに入りましょうか。皆さま、最後に一言ずついただけますか。

福本:本日はありがとうございました。話をうかがっていて、まだ私自身、どこかで壁を作っているというか、個人のキャリアに対するオーナーシップと言うものの、自分がやっているところ(会社)に私はオーナーシップが最終帰結してしまっているので、そういう意味ではまだ自分に制約をかけてしまっているというか、まだみんなに禁欲生活を強いているのかなとも感じました。もっと柔軟にすれば、より生きたいように生きられるのかなと今は考えています。

寺口:今日はありがとうございました。私はこの場を集団自己満足で終わらせたくないと強く思っています。匿名でもなんでもいいから今日感じたこと、今すぐでなくてもいいので自分だったら将来何ができるかなということを、何の媒体でもいいので発信して社会に還元してほしいなと思います。世の中に対してこういう考え方の人がいるよっていうことを、1人人でも発信してくれたら何かにつながると思うので、ぜひ爪痕を残してください。

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三木:理想かもしれないですけど、みんながわがままに生きられるようになるのが一番いいなと思っています。わがままに生きる方が自由だし、楽しくなると思うんですよ。でもそこに辿り着けるかどうかって、本当に一歩踏み出すか出さないかだけだと思っていて、私は外に出て世界が本当に広がりました。だから、今日を機会に皆さんも「自分の人生を生きる」というのをしていただければいいんじゃないでしょうか。本日はありがとうございました。

チカイケ:ありがとうございます!皆さんのおかげでアツイ夜になりました!第2回がありましたら、その際はどうぞよろしくお願いいたします。

3回にわたりお送りしてきた「HR HoT Leaders Conference #1」はいかがだっただろうか。今回取り上げられたテーマについては、読者の皆さまも賛否両論、さまざまな意見があることだろう。誰の意見が正解ということは一切ない。この記事を読んだ皆さまが、このイベントを超えて議論を深め(知見を広め)、今回よりもさらに熱いプロレスが開催されることを願ってやまない(全3回おわり)。

【撮影:高井直樹】

「HR HoT Leaders Conference #1」イベント概要

会場:株式会社ペライチオフィス
開催日時:2018年9月18日19:30-21:30
主催:CHRO STUDY COMMUNITY
https://www.facebook.com/events/711314499202515/

【登壇者紹介】

チカイケ秀夫(ファシリテーター/パーソナルベンチャーキャピタル)

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「すべての人にスタートアップを」をミッションに、GMOグループ上場企業での企業理念策定/社内新党に参画。2008年よりGMOグループにてベンチャー企業の立ち上げと、全グループ5,000人に関わるプロジェクトにリーダーとして、グループ内ブランディングを経験。現在は、熊谷代表直下のプロジェクトで学んだ「ブランディング」を通して、スタートアップ/ベンチャー企業に特化した支援事業を展開。
https://twitter.com/chikagoo

福本 真士(GOunite)

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学生時代は役者として過ごし、営業、芸人、エンジニアを経験した後、起業。現在は関西を活動拠点に、未来電子テクノロジー株式会社(2019年にプロダクト統合のためGOuniteに社名変更予定)にてCEOを務め、開いているギャップに橋をかける「Bridge the Gap」をすべての行動指針とし、学生に企業選びの判断基準をつくるインターンシッププログラム事業を行っている。
https://twitter.com/sfkmt

寺口 浩大(ワンキャリア)

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新卒でSMBCに入社し、業界調査、財務分析、M&Aなどを経験。転職し、Cyber Agentでアナリスト、DeloitteでHRコンサルタントを経験した後、現在は株式会社ワンキャリア・経営企画室にて経営管理部採用担当に従事。人事領域に携わる一方で、精力的に執筆活動を行っており、「就活生が150人死んだって。人事は何人死んでんだっけ。」といった過激な題材を掲げ、多くの共感を集めている。
https://twitter.com/telinekd

三木 芳夫(アカリク)

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4歳から始めたサッカーの世界で出会ったプロ選手に刺激を受け、ビジネス世界でのトッププレイヤーになりたいと新卒で社員数50名のベンチャー企業(現ノバレーゼ)に入社。12年間在籍する中で一部上場やTOBを経験。1,800名まで社員規模が拡大する中、一貫して人事担当としてHR領域に従事する。現在、IT企業の経営企画に勤める傍ら、株式会社アカリクの経営管理本部・執行役員を務めている。
https://twitter.com/y_tronc


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執筆者紹介

野澤 麿友子(のざわ・まゆこ)(株式会社スキマタイズ) 本職はIT企業人事。新卒で入社したメーカーで経営企画業務に携わる中、「従業員の幸せ」と「会社の発展」を両立できないことに疑問を持ち、それを実現できる人事になることを決意して転職。将来の夢はCHRO。人の理念や情熱などの漠然とした想いを、言語化することが好き。

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