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~現場目線で考える!最強テレワーカーへの道②~


子育てしながらテレワーク、できる?できない? 実践企業に聞く成功の極意

2019.08.06

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東京五輪を1年後に控えた今夏、働き方の国民運動「テレワーク・デイズ2019」が展開され、テレワークに関するイベントや試みも多数行われています。テレワークと相性がいいと言われるのが子育て中のワーママやワーパパ。多様な人材の確保にもつながる一方、「子どもと一緒にいて、本当に仕事ができるの?」という疑念を抱く人も少なくないのでは?

「導入する企業」「利用する従業員」双方からの現場目線で考える「最強テレワーカーへの道」の2回目は、TDMテレワーク実行委員会によって行われた「子連れテレワーク」の実証実験を取材。テレワークの活用を推進している企業や実践者に本音と成功の秘けつを聞き、これから推進する企業が知っておくべきポイントを考えます。【2019年7月23日取材、@人事編集部 飯塚陽子】

目次
  1. どうやって「子連れ」で仕事をしているんですか?
  2. 企業風土の醸成が、成功のキーポイント
  3. テレワーク導入目的は、生産性向上か福利厚生か
  4. 「働きやすさ」が生み出すエンゲージメント
  5. 子連れテレワーカーの未来へ。ママ記者memo

◆「TDMテレワーク実行委員会」とは?

通勤などによる都心の交通混雑を緩和するために、首都圏に本社・事業所を構える企業有志23社が結束してテレワークを実施する取り組み「TDMテレワーク」を推進。シェアオフィスサービス「OFFICE PASS」と連携し、自宅以外のスペースやカフェを活用して仕事ができる環境を構築することを目的としている。

どうやって「子連れ」で仕事をしているんですか?

多くの小学校が夏休みに入った7月23日、都内のカフェに「TDMテレワーク」に賛同する10社の社員と子どもたちが集結して子連れテレワークの実証実験が行われました。5歳児がいるママ記者である筆者は「子連れテレワークは難しいでしょ」という考え。子どもが側にいながら仕事をして成果を出す自信がありません。実践者に赤裸々な声を聞いてみました。

「子連れテレワーク」実証実験が行われたカフェの様子

実験場所になった「Cafe’tta 梅ヶ丘」は赤ちゃんの泣き声を温かく見守る「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」に賛同したカフェ

年長の長女と訪れた「プレシャスパートナーズ」(東京・新宿)の山口智功さんは、今回初めて自宅以外でテレワークを実践。飲食業界で働く妻は突発的な休みを取りづらいため、在宅勤務制度について「子どもの急病時、僕がリモートできるのは本当に助かります」と話します。

一方、「自宅で子どもをみながら、効率的に仕事をするのは大変」とも。もし熱が下がって元気になったら遊んでくれとせがまれたり、危ないことをしていたら見守らないといけなかったり。山口さんは「こういう子ども連れで仕事ができる場所があると、他の子と遊んでくれたり、私以外に目がいくのでいいですね。自宅の近くでも探してみたいです」と自宅以外でのテレワークの可能性を見い出した様子。

子連れテレワーク実証実験で、1歳の長男を抱っこひもしながらパソコンを扱う女性社員

在宅勤務では子どもを預けることが多いというワーママ。この日は抱っこひもで業務にトライ

1歳になったばかりの長男を抱っこしながらパソコンを扱うのは、「ストリートアカデミー」(東京・渋谷)の松宮恵さん。週に1度の在宅勤務の際は、自宅近くの実家や保育園に姉弟2人を預けることがほとんどで「やはり、サポートがないと仕事に集中できません」と言います。それでも、往復2時間30分の通勤時間の短縮や、子どもに何かあればすぐ駆けつけることができる環境は「今が人生で最も大変な時期と感じているので、ありがたい。おかげで効率的に成果が出せるよう意識して働けています」と実感を込めます。カフェでの子連れテレワークには「予想以上に子どもがご機嫌。自宅で一緒にいるよりも仕事ができそう」と話していました。

企業風土の醸成が、成功のキーポイント

「TDM-」に賛同する23社のうち、テレワーク活用の促進度はさまざま。家族の急病時など申請に理由が必要な場合もあれば、全社員が取得できるルールを設けている社もあります。

「ストリートアカデミー」は、全社員が「週に1度」テレワークが可能で、場所は「在宅、カフェ、地方、海外など自由」。30人の社員全員がこの制度を活用しているそうで、広報の飯田佳菜子さんは「私自身もこの制度に魅力を感じて転職してきた一人です」と話します。

「自宅に子どもがいると非効率では?」「サボる社員もいるのでは?」と疑問をぶつけてみると、「本人次第だと思います。弊社では試用期間からテレワーク制度の活用が可能です。自由だからこそ責任も課せられますし、成果をきちんと評価することで一人ひとりの意識が高まります」と断言します。同じくテレワーク制度が転職の決め手だったという2児のママ・松宮さんも「役員の理解が大きい」と話し、企業風土が醸成されていることを感じさせます。

子連れテレワーク実証実験に参加した外国人エンジニアと息子

「帰宅が遅く、子どもの寝顔ばかり見ていた」というアメリカ人エンジニア。となりで息子もパソコンで“お仕事”

全社員の4割が外国人のAI開発ベンダー「クロスコンパス」(東京・中央)は、この7月からテレワーク制度を導入。広報の城明沙実さんは「交通渋滞の緩和の目的ということで、まずは導入してみることに。これからフィードバックを受けて考えていこうと思っています」と説明。外国人従業員の働きやすさを重視している同社は、その一つの対策としてテレワークを捉えているよう。目指すべき企業風土とテレワーク導入目的が合致するか、もカギとなりそうです

テレワーク導入目的は、生産性向上か福利厚生か

テレワーク導入にあたっては、自社が目的をどこに定めるのか検討することが必要と言われています。

テレワークを導入する主な5つの目的(メリット)

1 「人材確保・育成」

2 「生産性の向上」

3 「ワーク・ライフ・バランスの実現」

4 「オフィスコストの削減」

5 「自然災害などのBCP対策」

例えば、家庭の事情のやむを得ない理由がある社員を対象者とする場合は「生産性向上」ではなく「ワーク・ライフ・バランスの実現」、つまり福利厚生の充実が目的です。ある産業医は「テレワークを生産性向上を目的として導入するのであれば、家族や自身の健康に関する理由で使うのは実は違っています。休暇や時短など別の制度を設けるべき」と話します。確かに、「風邪気味だから」や「子どもの看病があるから」といった状況でテレワークが救済策としてあるのは、生産性向上の視点から見ると推進するべきではないかもしれません。目的に応じて対象範囲をルール化することは、不公平感が出ないための策とも言えます。

子連れテレワークに参加する社員と子ども

就学前の子どもたちも参加しましたが、実験中はみんなご機嫌でした

一方で、目的や対象者の範囲を「あえて決めない」という方法もあります。「@人事」でコラムを執筆する石倉秀明さんは「リモートワークや時短などで働くことを、フルタイムで働けなかったり出勤できない人のセーフティネットと思ってませんか?フルタイム出社で働く人の『下位互換』だと思ってませんか?」と鋭く指摘します。つまり、テレワーク(リモートワーク)は「ある一部の人たち」のための福利厚生ではない。男性であれ、独身であれ、柔軟に働き方を選べる「多様性の理解」が必要だということです

※石倉さんのコラム「働き方を選べる社会に」

「ストリートアカデミー」の飯田さんも「ルールを決めすぎないのもうまく活用できている理由だと思います」と話します。ルールを設定することも、あえて細かく設定しないことも、「自社がテレワーク導入でどうありたいか」にかかっています

「働きやすさ」が生み出すエンゲージメント

今回参加したテレワーカー社員の感想で印象的だった言葉がありました。

「子どもと一緒にいられるのは土日だけで『申し訳ない』という気持ちでいっぱいだったのが、テレワークで一緒に過ごす時間が増え、精神的にラクになった」

就学前の子どもを育てるわが身に置き換えても、「共働きで生まれる家族間ストレスの軽減」という恩恵は絶大です。700人以上がテレワークを行っている株式会社キャスターの「働き方に関するアンケート」によると、45%以上が「家族との関係が良好に」と回答。この変化は「働きやすさ」につながり、企業へのエンゲージメントにつながると言えそうです。キャスター社の「働き方に関するアンケート」結果

TDMテレワーク実行委員会の事務局長を務める「アステリア」(東京・品川)の広報・長沼史宏さんは「まずは考え方を変えるところから始めたい」と話します。もちろん、テレワークは「柔軟な働き方」の一つに過ぎず、「テレワークを導入しないこと=悪」ではありません。いま求められているのは、変化を受け入れていく姿勢を見せ、是非を含めて考えていくこと。東京五輪が開催される2020年の夏に向けては、「交通渋滞緩和」という社会貢献としての目的があります。この“大義名分”があれば、導入に迷いのある企業も「まず取り組んでみる」ハードルが低いのではないでしょうか。

未来の子連れテレワーカーへ。ママ記者memo

■子連れテレワークは周囲にサポートを頼んだり、子どもを受け入れてくれるワーキングスペースを利用するなど環境を整えることで可能性が広がる

■ただし、子どもが小さい場合は難易度も上がるため、生産性向上を目指すならスキルの向上は必須

■テレワークの活用と利用促進は、企業風土の醸成がカギ

■テレワークはライフ・ワーク・バランスの視点では導入のメリットが多い

■テレワーク自体、是非があるのは現実。東京五輪を前に、自社の働き方を見つめ直すきっかけとして導入するのも手

<連載>最強テレワーカーへの道

【編集部より】
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