企画

元ソフトバンク社内講師育成のプロが語る


真のモチベーション向上につながる研修運営のために人事がすべきこと

2016.05.16

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社員のモチベーション向上につながり、かつ現場の所属長や経営層にとっても有意義だと感じてもらえる研修を運営する。こうした状況を実現するために、人事担当者はどうすべきなのか。ソフトバンク株式会社にて社内講師育成のプロフェッショナルとして活躍されてきた島村公俊氏にお話を伺った。

目次
  1. 現場の課題をいかに掴み、現場の管理職を巻き込むか
  2. 受講生の意欲と、研修効果を高めるには?
  3. 経営層にいかに人材育成・研修の意義を理解してもらうか?

現場の課題をいかに掴み、現場の管理職を巻き込むか

島村氏によると、人事担当者にとって大事なのは「現場の管理職クラスをいかに巻き込めているか」であるという。

講師ビジョン代表の島村公俊氏

講師ビジョン代表の島村公俊氏

「各現場の管理職クラスに研修の意義を理解してもらい、協力をあおぐには、人事担当者の入念な『社内営業』が求められます。日頃から『部門の課題は何か、部下(受講者)にどうなってほしいと考えているか』をリサーチするのです。そのうえで、管理職たちが強い課題意識を持っているテーマに対して、その研修がどれだけ効果があるかを説くと、研修の意義を理解してもらいやすくなります。例えば、入社3年目は離職が多くなるタイミング。そこで、3年目研修が、受講生の離職率低下やモチベーションアップにつながることをしっかりと説明すると、管理職を巻き込みやすくなります。

同時に、人事担当者が現場にふれる機会を増やすと、部門ごとの課題を肌で感じられるという大きなメリットが得られます。そこで発見した課題解決につながる内容を研修に盛り込むことで、研修の質の向上につながります。
また、部門ごとの状況を把握していれば、『この繁忙期なら、上長も受講者も負荷が大きいと感じるだろうから、より適切な時期に変更しよう』などと配慮できるので、より現場に受け入れられやすい研修を構築することに役立ちます」(島村氏)

受講生の意欲と、研修効果を高めるには?

個々の受講生自身に研修への意欲を高めてもらうには、研修後の定期的なフォローも欠かせない。

「研修から数か月間くらいは、研修での学びを忘れないように、『●●のスキルを日頃実践できていますか?』などとフォローメールを送ると、研修時に立てた目標などを思い出すきっかけになります。また、研修内容の発展知識・周辺知識を学べるeラーニングの講座や関連書籍をあわせて案内することも効果的です。

とはいえ、人事側のフォローには限界があります。現場の上長が社員の行動ぶりを日頃の業務を通じてしっかり観察し、研修直後に立てた行動計画を、数カ月後に上長と1on1 ミーティングを行って、どこまで実践できたかどうかを一緒に振り返るのも手です。
また、研修での学びと、現場での業務とのリンクを強く意識してもらうために、研修時の目標設定を上長とその場で共有することも効果的です。ソフトバンクの研修時には、その場でiPad上に今後の目標を入力してもらい、それが即、上長にも共有できる仕組みによって、現場との接続感を高めていました」(島村氏)

経営層にいかに人材育成・研修の意義を理解してもらうか?

現場の管理職クラスの協力をあおぐために、人事担当者はどうすればいいのか。まずは、会社全体にとって価値がある研修であることを、しかるべき会議体などで発信していくことが重要だと、島村氏は強調する。

「めざすべきゴールは、こうした発信によって、管理職クラスにも人材育成への関心を醸成していくこと。それがモチベーション向上につながる研修を運営する秘訣です。究極的には、人事からのメッセージとしてだけでなく、経営層からのメッセージとして社内にアピールすることが大事だと考えています。例えば、人材育成を重視する方針を中期経営計画に盛り込んでもらうのも、会社として人材育成に力を入れていくという明確なメッセージになります。

経営層に研修のメリットを理解してもらうには、導入前後でどれだけコスト削減、売上向上に結び付いたか、受講者数の変遷はどうかなど、目に見える数値的効果に言及することも有効ですし、経営課題の解決につながる研修をどれだけ実施できているかという視点も大切です。また、人材育成に注力することが、優秀な学生を採用するためのブランディングにもなるという点も、経営層の心を動かすでしょう」

人事担当者が現場の課題を汲み取り、経営層、現場の管理職に、人材育成や研修の重要性を浸透させていく。そして、社員一人一人が研修での学びを活かせる環境づくりを進めていくことが、社員のモチベーション向上のキーとなるはずだ。

島村公俊(しまむら・きみとし)
ソフトバンク株式会社人事本部人材開発部を経て、2016年独立。講師ビジョン株式会社代表取締役。
ソフトバンクでは、ソフトバンクユニバーシティの立ち上げを推進し、プログラム開発、社内講師の育成体系作りに従事。社内認定講師制度の企画、運営に携わり、100名を超える社内講師陣の育成を担った。累計登壇回数800回以上、受講者数1万8千人以上の登壇実績。慶應丸の内シティキャンパス、楽天、東京都教育庁、早稲田大学、HRサミットなど外部講演も多数、実施されている。
講師ビジョン株式会社
ホームページ:http://koushi-vision.co.jp/
メール:shimamura@koushi-vision.co.jp

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執筆者紹介

松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。

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