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社員研修を科学する~ビジネスを加速させる人材の育て方~


社内研修の肝は設計段階にあり! 効果を出すための7つのポイント

2017.11.22

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雇用形態や職業観の多様化といった労働環境の変化、グローバル競争の激化による経営環境の変化により、多くの企業にとって人材育成が急務となっている。これに伴い、より費用対効果の高い社員研修が今まで以上に求められているといえよう。

とりわけ「研修のPDCAサイクルを回せていない」と悩む人事担当者は多い。リクルートマネジメントソリューションズが2016年に実施した「研修効果検証に関する実態調査」によると、研修の効果検証に課題をもつ企業は8割以上に及ぶという。

自社にとって最適な研修を設計・運営し、効果検証をうまく行うために、人事担当者に必要なものは何か。株式会社 日本能率協会コンサルティングの常任顧問、高原 暢恭氏にお聞きした。

高原 暢恭(たかはら・のぶやす)

株式会社 日本能率協会コンサルティング常任顧問
人事経済研究所所長
シニア・コンサルタント


1955年生まれ。早稲田大学大学院(博士課程前期:労働法専修)修了。HRM分野(人的資源開発や人材マネジメント)を専門とするコンサルタント。HRM分野にあっても、現地現物を自分の目で見て考えるという現場主義を貫くことを信条としている。『人事評価の教科書』、『人材育成の教科書』など、著書多数。

目次
  1. 「研修設計」の段階こそが最も重要
  2. 研修の内製化と外注化、見極めのポイントは
  3. 研修の前に「これだけは強化したい」という課題を設定する
  4. 分析を行う際は「研修ありき」で考えないことも重要
  5. 強化課題を明らかにすることは、研修の効果検証にも役立つ
  6. ベーシックな研修の効果検証はアンケートが有効
  7. 人事担当者は「仮説思考」をインストールせよ

「研修設計」の段階こそが最も重要

まず、人事担当者が社員研修を設計する際に気をつけるべき点は何か。高原氏によれば、研修のPDCAサイクルを回すうえで、最も重要なのは「研修設計」の段階だという。

「研修設計で大事なのは、『研修会社の研修カタログから面白そうなものを選んで実施する』という姿勢を改め、『研修が経営にどのようなインパクトを与えるのか』を突き詰めて考えるということです。人事担当者はともすれば、研修直後の受講者アンケートの満足度を気にする傾向にあります。すると『面白いと反響があったから今年も実施しよう』『受講者がわかりやすいと評判の講師を呼ぼう』といった近視眼的な発想で研修を評価してしまいがちです。

あくまで研修の最終ゴールは、会社の成長・業績向上にいかに寄与するかにかかっています。もちろん、売上や利益、生産性といった業績は、様々な複合要因によって生まれるもので、ある研修をやったから業績が伸びたと断定できるものではありません。ですが『研修が会社の成長や業績向上につながるべきだ』というという視点が抜け落ちてはいけません

例えば、従業員の国籍やジェンダー、働き方などの多様化により、ダイバーシティ研修の導入を検討するとしよう。その際、単に『ダイバーシティの理解が必要という風潮だから』というだけではなく、一歩踏み込んで、『ダイバーシティ研修が自社の経営戦略を実現するうえで、どんな意義をもつのか、業績向上にどのように寄与するのか、経営戦略から逆算して、今優先して取り組むべきなのか』というところまで、明確な定義づけが求められている、というのが高原氏の考えだ。

研修の内製化と外注化、見極めのポイントは

研修は内製化するべきか、それとも外部の研修会社・講師に委託するべきか。人事にとって悩みが尽きないこの問題について、見極めのポイントはどこにあるのだろうか。高原氏は「自社で教えられるリソースがあるなら、基本的には内製化したほうがいい」と明言する。

「実施したい研修内容の指導にふさわしい講師が社内にいないときは、外部の専門家の力を借りることが必要でしょう。しかし、自社の研修担当者や講師の資質をもつ人材を講師ができるように育成するなど、いずれは研修を内製できる体制づくりをおすすめします。自社の経営戦略に紐づけた研修を行うという観点に立つと、カリキュラム策定や指導のノウハウを社内に蓄積したほうが、中長期的には効果的だからです」

「ただし例外もあります。人事評価に関する研修などは、人事評価に不満をもつ社員が多い場合、社内講師がまっとうな話をしても、素直に聞いてもらえないことがあります。こうしたケースでは、社内講師より外部講師のほうが、受講者が素直に研修内容を受け止めることができます」

研修の前に「これだけは強化したい」という課題を設定する

研修を外注化する場合であっても、自社に合った研修かどうかを決めるのは、人事担当者や人事戦略を担う人だ。高原氏は、コアプロセス(※1)分析から、社内の人材の能力開発課題を把握し、その課題解決にふさわしい研修を企画・選択することをすすめている。

※1 コアプロセス……経営戦略を具現化するために肝となる業務プロセス

「今後、自社の経営戦略の変化に連動して、業務自体も改革が求められる場面が増えるでしょう。その際に望ましいのは、経営戦略に直結するコアプロセスを分析し、『これだけは強化したい』という課題を設定し、それを人材育成の課題と連動させることです

「まずは、将来必要になると考えられる業務のコアプロセスを書き出し、詳細を検討します。自社でこれまで取り組んでこなかった業務であれば未知の部分も多いので、仮説を用いながら課題解決の焦点を定めます。そしてそこから『この能力が十分でないと、コアプロセスがうまく回らない』という致命的なボトルネックを探し出すのです。その中で、たとえば『顧客への課題提案力』『社会に対する情報発信力』が不可欠といったことが明らかになってくるかもしれません。

必要な能力が分かった後は、それらの能力について『自社で現状、どれくらいの実力があるのか』を整理し、評価します。例えば、『顧客への課題提案力』の項目で、提案経験のない者が多いという事実が明らかになれば、課題提案力を獲得するのに適した研修は何か、と考えるのです」

分析を行う際は「研修ありき」で考えないことも重要

高原氏は、コアプロセス分析をする際には、「研修ありき」で考えないことも大切だと指摘する。

「他部署に今必要な能力に長けた人材がいたら、その人を異動させて担当させるほうが、費用対効果の観点から効果的かもしれません。自社の現状をリアルに把握した上で、よりふさわしい手段を考えていくのが、コアプロセス分析の意義です」

株式会社 日本能率協会コンサルティング常任顧問 人事経済研究所所長 シニア・コンサルタントの高原 暢恭氏②

また、コアプロセス分析を行うメリットは他にもある。それは、人事担当者がトップや経営層に新たな研修の導入を促すときに、説得力が高まるという点だ。高原氏によれば、「社内の改革的な動きと絡めて、その研修の意義をプレゼンテーションすれば、経営陣の承認や協力を得やすい」という。

強化課題を明らかにすることは、研修の効果検証にも役立つ

コアプロセス分析を行い、自社の強化課題を明らかにすることは、研修の効果検証をする上でも効果的だ。

「研修の効果を検証するには、コアプロセスの強化課題が実際にクリアされているかという結果を見ればよいのです。もちろん、一概に研修のおかげと言い切れないわけですし、研修をした場合としなかった場合の対照実験も難しい場合がほとんどですが、研修の効果測定・検証という意味では、『強化課題の達成度合いを見る』でよいでしょう。受注数、受注金額といった最終結果の指標よりは、提案件数のように、従業員の働きかけが反映されやすいプロセス寄りの指標のほうが、研修の効果を見るには望ましい場合が多いと思います」

ベーシックな研修の効果検証はアンケートが有効

経営戦略との連動が求められない、ベーシックな研修の効果検証は、アンケートをとることが有効な場合もあるという。

「新入社員研修であれば、PCスキルやビジネスマナーといった基本スキルについて『これができるようになってほしい』という行動チェックリストをつくり、受講者本人と上長それぞれに渡しておきます。例えば3カ月後や半年後に、実際の達成度を評価する。そして受講者の自己評価と、上長の評価のすり合わせをする面談タイムを設ければ、今後の改善プランが立てられます。アンケートでは、ハロー効果(※2)を防ぐようにするといった留意点はありますが、受講者本人の納得感、振り返りを促すうえで有効な手段といえるでしょう」

※2 ハロー効果……ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる効果のこと。 光背効果、後光効果とも呼ばれる。

人事担当者は「仮説思考」をインストールせよ

設計には本来、自社の経営戦略や各部署の業務プロセスに精通している社員が関われることが望ましい。しかし実際には、若手社員や中途入社したばかりの社員が担当することも少なくない。高原氏によれば、そうした場合に重要になるのが、「仮説思考」だという。

「人事担当者には、仮説から物事を考える思考を大切にしてほしいと思います。必要なのは、業務課題に関する仮説を立てて、現場にヒアリングし、仮説の精度を高めていくことです。普段から定期的に、各部署の管理職に部署内の課題についてインタビューする機会を設けたり、競合との比較で自社の強み・弱みを探っておいたりするとよいでしょう」

研修効果のPDCAサイクルを回すにあたり、「厳密に研修の効果が出たと言い切ることは難しい」と謙虚になることはときには必要だ。しかし、高原氏は「この研修を導入、改善したことで、少しでも会社の業績がいい方向に向かっている」と、事実を持って確認することの重要性を力説している。

自社の課題に仮説を立てた上で、経営陣や他部署を巻き込んで、研修を自社の成長に結びつける。人事には「研修の実施」という短期的な目標に捉われず、会社全体を見る視点がますます重要になりそうだ。


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執筆者紹介

松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。

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