コラム

「ひとり人事」の職場改善計画


従業員が「うつ病」の診断書を持ってきた場合に困らないための対策とは

2017.04.03

  • メンタルヘルス
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ある日、従業員が「うつ病」で「休業が必要」との診断書を持ってきたらどうしますか?

気持ちの問題なのだからもう少しがんばるよう応援するべき?
そんなずる休みを許したら他の従業員に影響が出る?

結論から言えば、このような場合は、まずは速やかに診断書に従って休ませることが必要です

なぜならば、診断書で就業制限が出たまま勤務させている状態で事故が起きた場合、会社責任が問われる可能性が高いからです。ですから、速やかに休ませつつ、次に事後対応を考えることとなります。

ひとり人事は相談相手がいない中、速やかに対応を行うことが求められます。そんな中、いざというときに困らないメンタルヘルス対策とは何なのでしょうか?

企業のメンタルヘルス対策とは

企業が行うメンタルヘルス対策とは、誰が、どのルールに従って動くか、内部スタッフと外部専門家をアレンジして動きをとるための体制を整備するということです。

最初にメンタル不調の人についての接し方や、ストレスについてのセルフケアの研修を実施しようとする例が見られますが、まずは流れる血を止める仕組みがなければ問題発生時の対応がとれません。では具体的には何をすればよいのでしょうか?

1.ルール(就業規則)の整備

メンタルヘルス対応については、会社主導で措置を行わなければならないことがあります。その命令の根拠としても就業規則の整備が必要です。例えば下記のような内容についてのルールは決まっていますでしょうか?

休職回数や、複数回休職した場合の通算休業可能期間

雛形就業規則では、休職回数の制限がなく、一度復職するたびに新たな休職の権利が発生し、何年も断続的に休職の状態が続いてしまう場合があります。

休職中の賃金支払

休職中は、賃金支払いの義務はありませんが、休職者は会社に払う義務があると思い込んでいる場合があります。

休職中の療養専念義務

病気で休職しているはずの従業員が旅行に行っていた、などのトラブルがあります。

復職判定権限は会社がもつこと、専門家の判断プロセスを残すこと

主治医の「復職可能」の診断書にて復職を認める例が多いですが非常に危険です。主治医が一般的に就業可能とするレベルと、その会社の業務に従事できるレベルとの間には差異があるのが一般的です。だからこそ、復職許可の判断は、主治医の診断書を元に「会社」が決定できるようにしておく必要があります。

逆に、主治医が「復職可能」としているのに会社が認めない、ということもあります。このような場合、正当でない就業拒否としてトラブルになることがあります。だからこそ、復職判定においては外部の専門家や産業医の意見を記録に残しておく必要があります。復職のルールを厳格化することは、会社を守るだけでなく、中途半端な復職で病状を悪化させないために、従業員を守るものでもあるのです。

2.有事対応のマニュアル化

次に行うべきは、問題が発生した場合にどう動くかのマニュアルを作成することです。就業規則以外でも、運用上決めるべき事柄があります。例えば下記のようなものです。

・不調者を発見した場合の社内連絡フロー、外部専門家との連携
・休職中の社会保険料の従業員負担分の支払い方法
・休職中の本人および家族の連絡先の共有
→メンタルヘルス不調での休職の場合、突然連絡が取れなくなってしまう心配があります。家族の連絡先も含めて共有が必要です。
・休職復職のルールについて、コンパクトにまとめた資料の作成
→就業規則にルールが明記されていても、理解されていないことは多く、就業規則が社外持ち出し禁止となっていることも多いため、改めて資料を用意したほうがトラブル防止につながります。
・復職プログラムの作成

3.予防体制の構築(教育研修)

ここまでの体制が整ったら、次は教育と予防体制の構築です。まずは、管理職向けのメンタルヘルスケア対応のためのライン研修、その次に従業員自身がストレス軽減などについて学ぶためのセルフケア研修を行うこと、等が挙げられます。これらについては、衛生委員会の場を活用する等の工夫が効果的です

ひとり人事とルール

ひとり人事は少ないリソースで、諸問題に取り組まなければなりません。だからひとり人事が目指すべきなのは「人がうまく機能するような仕組み」を整えることです。

しかし、素晴らしいルールと体制があっても、使う人のこころのあり方によっては機能しません。リスクマネジメントの観点は忘れてはなりませんが、そのルール運用の目的は、従業員を「上手に辞めさせる」ことでしょうか?それとも、従業員の「人生を応援する」ことでしょうか。ルールはツール。使う人の態度が相手に伝わります。

労務トラブルにおける最大の要因は「信頼関係の崩壊」です。これを忘れずに取り組むことが重要です。

執筆者紹介

郡司果林(ぐんじ・かりん)(社会保険労務士) office role代表、第1種衛生管理者。日本大学卒業後にIT企業のSEとなるが、過酷な労働環境に疑問を持ち、社会保険労務士の資格を取得して外資系IT企業の人事担当に転職。10年あまり人事担当として、社内の規程整備、衛生委員会の構築運営、メンタルヘルスケア対応等を行ってきた。現在は独立し、労務相談実績1500件を超える。

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