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コラム

「ひとり人事」の職場改善計画


ひとり人事部でもできる、長時間労働対策を行う際のポイント

2017.01.23

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「違法な長時間労働」による労働基準監督署からの是正勧告や書類送検のニュースが相次いでいますが、「違法な」長時間労働ってどういうことなのでしょうか?時間外労働が10時間なら合法で、80時間なら違法なのでしょうか? 長時間労働対策は、取り組むべきテーマでありつつ、その一方で「絵に描いた餅」になりやすいのも特徴です。

長時間労働を削減するための事例については、ある程度共有されています。例えば厚生労働省からも「時間外労働削減の好事例集」が出されていますし、インターネットや書籍でも、たくさんの取り組みが公開されています。しかし人事担当者にとって難しいのは、ノウハウの取得そのものではなく、実行力を持たせることなのではないでしょうか。

目次
  1. 長時間労働対策を進めるための3つのポイント
  2. 労働時間削減以外の取り組みも真剣に行うこと
  3. 長時間労働対策と共に考えたい「働くことの目的」

長時間労働対策を進めるための3つのポイント

実行力を伴う長時間労働対策の取り組みを行うためには3つのポイントがあります。

1つ目は、トップが強い意志を持ち、トップダウンの取り組みにすることです。労働時間削減の具体的な手段を実行するには、一時的な痛みを伴います。なぜなら業務やマネジメントのあり方に、新しい工夫が求められるからです。従業員にとっては好ましくない変化である場合もあります。これを乗りこえるためには、トップが本気であることを示す必要があります。

しかし、人事担当者からよく聞かれるのは、「社長に理解してもらえない」という意見です。労働基準監督署が来れば強制的に取り組みを行わなければならないため、むしろ「うちの会社にも調査が入ってくれたら」という人事担当者の声もあるほどです。このような場合は、社長にアプローチする前に社内のキーマンを味方につけましょう。営業部長を味方につけたことにより上手くいった例もあります。社長を動かすためには、社内のパワーバランスを見極めて動くことが必要です。

2つ目は、管理者が当事者感覚を持つことです。そのためには、管理者自身が労働法及び長時間労働のリスクを理解するための教育が必要です。

例えば、時間外労働時間の上限は、事業場ごとに36協定で定められており、その時間を超えて時間外労働をさせた場合は「労働基準法違反」となります。10時間なら合法で、80時間なら違法、というものではありません。しかし、現場管理者がこれを知らずにフォローできていないことがあります。

法違反を避けるために、人事から長時間労働の上限数が指定され、それに応じて労働時間の過少報告を余儀なくされるケースも聞かれますが、これは大変危険です。最近の事例では、この過少申告が重くみられ、会社だけでなく、管理者自身も書類送検される例が相次いでいます。他人事ではないのです。

また、長時間労働は命や健康に関わる問題です。自分の部下の命がなくなるという状況を、リアルにイメージしてもらうことが必要です。

3つ目は、組織の力を使うこと。人事担当者一人で進めないことです。

労働時間の削減は、一人では行えません。社長、現場管理職、従業員自身、それぞれが当事者感覚をもって取り組む必要があります。これを円滑に進めるためには、衛生委員会を活用するのが最も効果的です。上述した社長への根回し、管理者教育、体制整備、具体案の検討などなど、全てのプロセスにおいてアプローチが容易になり、また結果につなげやすくなります。

労働基準監督署の調査にあたっては、長時間労働が発生している場合は、特に衛生委員会の開催や産業医の選任状況等、労働安全衛生体制についても問われますので、労働基準監督署対策としても有効です。

労働時間削減以外の取り組みも真剣に行うこと

長時間労働対策とは、労働時間の削減だけではありません。長時間労働が発生してしまった従業員に対して、適切なケアを行う体制を整えることも含まれます。

厚生労働省からは「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」が出されており、仕事による疲労の蓄積を自己診断できるようになっています。時間外労働が一定時間を超える従業員には、こういったツールを利用して自己診断及び結果提出を義務づけるなど、一歩踏み込んだ対策を行うことも必要です。長時間労働と脳血管疾患や心筋梗塞には関連性があると言われていますが、社内に血圧計を置いて予防措置を行うこともできるでしょう。

パワハラが好ましくないのは当然のことですが、疲労度が高いときには、同じ言葉でも通常よりメンタルに与えるダメージも大きくなりますので、コミュニケーション教育もより一層重要となります。

長時間労働対策と共に考えたい「働くことの目的」

労働時間削減の取り組みを行うと、早く帰ることだけを主張する「責任感のない従業員」が生まれる場合があります。反対に、仕事を持ち帰りサービス残業を行う「自己を犠牲にする社員」が生まれることもあります。労働時間はただ短くなればそれでよいのでしょうか?

長時間労働問題を考える際には、「働くことの意義目的」や「人生の目標」の共有とワンセットで考えることが必要です。長時間労働対策そのものは目的ではありません。企業が社会に価値を提供し、かつ私たちが豊かに暮らすための手段のひとつなのです。一人一人がその能力を発揮し、充実した人生を送るためには、やらされ感では実現しえないのです。どうして長時間労働は削減するべきなのか、私たちはこの社会の中でどんな風に生きていくべきなのかを、改めて考える必要があるのではないでしょうか。


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執筆者紹介

郡司果林(ぐんじ・かりん)(社会保険労務士) office role代表、第1種衛生管理者。日本大学卒業後にIT企業のSEとなるが、過酷な労働環境に疑問を持ち、社会保険労務士の資格を取得して外資系IT企業の人事担当に転職。10年あまり人事担当として、社内の規程整備、衛生委員会の構築運営、メンタルヘルスケア対応等を行ってきた。現在は独立し、労務相談実績1500件を超える。

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