残業ゼロを目指して
時間を無駄にしないために、「ヒヤリハットリスト」を作ろう
2017.06.20
ハインリッヒの法則とは?
なにか1つの重大事故の影には、同じ原因の小さな事故が29あって、その影には事故に至らなかった300の「危なかった」事例があるという「法則」があるそうです。これは「ハインリッヒの法則」と言われています。
1:29:300
という数字で私はなんとなく覚えているのですが、問題はこれを「どうしたらいいのか?」が常々疑問でした。ヒヤッとしたら気をつけろ!ということになるのでしょうが、結局「ヒヤッ」が300積み重なる頃に、重大事故に遭遇してしまうとも取れるし、そう考えると長生きするのが憂鬱になるような法則だなあ、と思っていたのです。
そんな中考えついたのが(といっても大した思いつきでもないのですが)、「とりあえずヒヤッとしたらそれをEvernoteに記録していこう(ヒヤリハットリストを作ろう)」ということでした。
記録はとにかくめんどうくさい
私は「メモ魔」に類する人間ですし、人からもそう思われています。なので、「佐々木さんは一体『どうして』記録をそんなに取れるんですか?」と尋ねられることがあります。
私はこの質問の意味がよくわからなかったので「『どうして』とはどういう意味ですか?」となるべく詰問調にならないように尋ね返します。
すると質問者の意図はだいたい2つあって、1つは「『どうして』記録を取るのが面倒くさくないのか?」というもの。もう1つは「『どうして』記録を取ることを忘れないのか?」というものです。
このどちらの方にも失望させない答えがなくて困るのですが……。というのも記録を取るのは面倒くさいですし、忘れないと思われているのかもしれませんが、実際にはよく忘れます。ただ、面倒でも何とか頑張って記録を取り続けるようにしているにすぎず、忘れたら忘れないように反省しているのです。
そうしているうちに、だんだんと記録を取ることが面倒でなくなっていき、忘れなくなるのです。つまり、どうして記録を取れるかの理由は、こういうといかにも詭弁のようですが、取れるようになるまで諦めないからです。
面倒だから効果が上がる
しかしそのうちに記録を取ることの効果が出てきます。今回の例でいえば、確実に「重大事故」の遭遇率を下げることができるのです。
ハインリッヒの法則をもう一度思い出してみましょう。1:29:300でした。この中の、「実際には事故っていない数字は300」ですが、その数字を小さくしていけば、重大事故に至ることは少なくて済むはずです。
ヒヤッとするたびに記録を残すのは、いかにも面倒です。だから記録を残したくない。記録を残すのが嫌ならば、ヒヤッとしなければいいのです。そういうことをしでかさなければいいわけです。
これまたなんだか怪しげな言い回しに聞こえるかもしれませんが、メモ魔に類する人なら必ず知っていることです。すなわち、ネガティブな事態や習慣をなんとか減らしたければ、記録を残すのがいいのです。記録に残すということは、強く意識するということになるからです。私たちは誰も失敗やネガティブな体験を強く意識なんかしたくないですから、失敗や痛い目に遭うことを強く意識しなければならないとなると、失敗や痛い目に遭うことをもっと注意して避けるようになるものです。
「忘れてしまう」というのも同じです。記録するのを忘れるということは、それだけ「ヒヤッとした経験」を軽く考えている証拠です。私も最初はそうでした。ヒヤッとした経験をもっと重視するようになれば、記録くらい残すようになるはずです。そういうのは全部余さず記録に残そうと強く思えば、だんだん強くアンテナを張るようになります。
そういう意味で、記録を残すのは面倒であり、忘れてしまうからこそいいのです。もし自動的に記録が残るようだったら、ヒヤッとした記録はどんどんたまっていくでしょうが、ヒヤッとするようなことをしないような努力を怠ってしまいます。
とはいえ私自身はまだまだ頻繁に「ヒヤッ」としていますし、その数字は容易に300まで積み上がっていきます。それでももちろん記録があれば、どんなことで「やらかしがち」な人間であるのかがわかりますから、何に気をつければいいかも見えてきます。この「ヒヤリハットリスト」はいろんな意味で役に立つのです。
交通事故でも、家庭内不和でも、パソコンのトラブルでも、財布やスマホの置き忘れでも、とにかく「ヒヤッとした」で済めばラッキーです。それで済まなくて、本当の「事故」になってしまえば、たくさんの時間を失います。時間以外にも大事なものを失いかねませんが、少なくとも時間を失うのはどんなケースにおいても確かです。
だから面倒でも、事故に至らないうちに「ヒヤッと」の段階で抑えておくことは、少なくとも時間の節約の上では、非常に有効なことなのです。
連載コラム〈残業ゼロを目指して〉
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執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
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