「リクルーター復活の兆し」
リクルーター制活用の鍵は、学生へのフォローとフィードバックの徹底
2015.06.15
前回は、リクルーターの導入について、ビズリーチとノバレーゼの実例を紹介した。最終回となる今回は、2016卒以降の採用でリクルーターを具体的にどのように活用していくべきかを探った。今後も厳しい戦いが予想される採用活動において、「リクルーター」は救世主となるのであろうか――。
大手に人材が流れない秘訣
15年卒採用では、例年以上に内定辞退にあったという中小企業の声は多い。大手に人材が流れないためにできることはないだろうか。
「中小企業や知名度が低い企業は、会社規模などの『会社の比較』をされたら大手にはまず勝てません。学生とは、本人の価値観がどの企業とマッチしているかを確認していくことが重要です」とディリゴの長谷氏。
例えば、「1000億のプロジェクトをチームで達成することに喜びを感じ、個人の評価はそこまで重視しない学生」、もしくは「1億の仕事を個人に任され、成功は個人の評価が直結する仕事をしたい学生」。前者と後者では、活躍できる企業は違ってくる。
こうした時にもリクルーターの存在が貴重となる。学生に対して、「あなたがやりたいことは何か」「あなたが面白いと思うことは何か」「あなたにはどんな価値観が合うのか」など、常に学生が主語となるように話をしていく。それまでの紆余曲折を知っているリクルーターだから、学生も本音ベースで話しやすい。
ここで、もし他社の価値観のほうがその学生に合うのであれば、無理には引き止めないほうがいい。価値観が本当にマッチしていなければ、それは「内定辞退」となるか「入社3年以内の退職」となるか。下手に囲い込みをしても、長期的には双方にとって不幸になるだけだ。
ビズリーチ木村彩氏
また、前回紹介したビズリーチで新卒採用を担当している木村彩氏は、内定理由のフィードバックを学生にしっかり伝えることが重要だと話す。「学生のどこを評価しているのか、なぜ入社してほしいのか、どのように成長してほしいかも含めて、すべて学生にフィードバックしています」(木村氏)。
このフィードバックの重要性は長谷氏も同様に指摘する。入社後に苦労するかもしれない点もしっかりと伝え、「あなたをすべて理解して内定を出しているので、安心して飛び込んでほしい」と伝えることは、学生には大きな安心感を与えるのだ。
内定出しのタイミングも「自社への志望度が高くなるまで、内定を出すタイミングの駆け引きを行う」という戦略を取る企業は、今年は少し変えたほうがいいかもしれない。
「15年卒以降の内定出しは、早く出すことを薦めています。優秀な学生でも欲がなく、1番最初に内定をもらう企業に入社を決める学生は意外なほど多いですよ」(長谷氏)。
まとめ:「リクルーター」の活用が採用の「鍵」となる
「採用は人事部の仕事であり、他部門は関係ない」という意識が根付く会社には、今後は良い人材が確保できなくなる可能性があることを人事部と経営層はしっかり認識する必要があるだろう。すでに15-16年卒採用の現場ではその差が出始めている。
加熱する学生争奪戦の勝者となるためには、人事部以外の社員が協力して役割を担うリクルーターの存在は無視できない。
「リクルーターや人事部が学生のフォローを親身に行う」「リクルーターを活用しながら、しっかりとした内定のフィードバックを行い、早めに内定を出す」。
このようなリクルーターの活用が16年卒以降の採用を成功させるための鍵となってくるだろう。
執筆者紹介
玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。
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