特集

就活ルール廃止時代に求められる人材採用・育成・組織開発


「就活ルール撤廃」は採用と組織をゼロベースで見直す絶好の機会

2019.05.22

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度重なる変更に、企業と学生を翻弄してきた経団連による就活ルールが、2021年以降いよいよ撤廃される。ルールなき時代に、人事は採用活動をどう行うべきか。大手企業を中心に企業の人材開発を数多く手がける株式会社セルムの社長加島禎二氏に、新時代の採用活動のあり方を聞く。

参考:就活ルール廃止を見据え、採用から研修を一気通貫で考える

加島 禎二(かしま・ていじ)

セルム代表・社長加島禎二氏インタビュー

株式会社セルム 代表取締役CEO
神奈川県生まれ。1990年に上智大学文学部心理学科を卒業後、リクルート映像に入社。営業、コンサルティング、研修講師を経験。1998年セルムに入社。企画本部長、関西支社長を経て2010年代表取締役社長に就任(現職)。CELM ASIA 取締役、升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司 総経理を歴任。一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、20年間に亘って、次期経営リーダーの開発や人材開発体系の構築、グローバル人材育成、理念浸透、組織風土変革などに携わる。顧客のプロジェクトの最前線に立ちつつ、優れた経営と強い事業に貢献する人材開発のあり方について、積極的に発信を続けている。

目次
  1. 就活・採用活動は「本来あるべき道」に向かっている
  2. 「石の上にも3年」と若手に我慢を強いる企業に未来はない
  3. 新時代のリーダー採用のヒントは、ハーバード・ビジネススクールで人気の「東北フィールド・スタディ」にある

就活・採用活動は「本来あるべき道」に向かっている

―2021年から就活ルールが廃止される。これからの新卒採用のあり方をどう考えるか。
非常に大変な道ではあるものの、「本来あるべき道」になると感じています。時期を決め一斉に採用活動をスタートする現行のルールは、時代にそぐわなくなってきているのは確かです。

本来採用活動に必要な視点は、経営者目線であり、「どうすれば我が社の事業を通じて、社会はよりよくなるか」、「わが社が発展するために、社会にとってどんな存在であるべきか」という、創業精神、経営理念、哲学です。

一方、人事部は人事部で経営計画、人員計画に基づく採用目標人数の達成に追われている現状もあります。理系・文系、大卒・高卒、男女の採用比率などを考慮しつつです。そのような現状があるため、経営者目線と人事部目線がずれてしまうケースは往々にしてあります。

また、人事部は、採用プロセスにおいて課題解決思考でオペレーション・エクセレンスを追求しすぎてしまう傾向もみられます。効率的かつ効果的に採用プロセスを進めようとするために必要だった数々の施策が、結果として、さまざまな歪みを生んでしまっているとも言えるのではないでしょうか。

例えば、入社後の配属ルートを固定化するあまり、採用する人材に偏りが生じているケースも見受けられます。総合職採用の社員を1年目に営業職に配属させる企業では、どうしても採用時に「営業として人当たりが良い人」の視点は外せなくなっているのが良い例です。

企業における成長戦略上、マーケティングや商品開発、グローバル展開など、各部門でプロフェッショナル人材が求められているにも関わらず、こうした状況がある。このままでは「企業に必要な人材」と「採用する人材」にどんどん乖離が生じてしまうでしょう。

さらに、大手ナビ媒体の広告ありきの採用手法で人材を獲得してきた企業では、社の知名度に頼るばかりで、「人が人を口説く」という本来の採用力が、極端に低下してきているのではないかと懸念しています。

これら多くの課題を解決するために、新卒の採用活動をゼロベースで再構築していく必要性があるのではないでしょうか。経団連のルール撤廃は、そのきっかけの1つになります。

―ゼロベースで採用のあり方を見直すために、企業の人事部はまず何から手を付ければよいか。
経営者・経営陣と企業の経営理念や未来について、しっかりと話し合い、共有し合うこと。それがすべてのスタートです。理念、目指す未来が語れないビジネスでは、人を魅了することはできないと考えます。

学生は就活するうえで、「どうすれば社会はよりよくなるか。そのために自分は何ができるか」と真剣に考えています。これは経営者が考えている目線とまったく同じです。企業の経営理念、目指す未来と、学生自身が描く将来像が重なり合えば、自然と学生たちを惹きつけられるでしょう。

セルム代表・社長加島禎二氏インタビュー

「石の上にも3年」と若手に我慢を強いる企業に未来はない

―まずは経営層と経営理念と目指す未来に基づき、採用活動を見直してみる。その次に、人事がすべきことは?
企業によっては、「若さ」の価値観を根本から見直す必要もあります。50年以上前に、本田宗一郎が言及した通り、「若さ」とは困難に立ち向かう意欲が高く、新しい価値を生み出すすばらしい才能です。

「石の上にも3年」と若手社員に我慢を押しつけているようなら、せっかくの才能をわざわざ押し殺しているようなものです。それでは、変化の激しいグローバル環境で戦える人材を育てることはできないのです。

―採用の手段だけを議論しても、あまり意味はないということか。
その通りです。「若さ」という貴重な才能を最大限に活かすには、採用手段だけでなく、入社後の受け入れ体制やキャリアパスを含め、大胆な組織改革を行う必要があります。

我々が顧客企業に推奨していることは、大きく3点あります。
1.通常の採用枠とは別にリーダー候補人材採用枠を設ける
2.リーダー人材を対象にしたヤングタレントマネジメントの導入
3.リクルーター制度の再定義と導入

1点目の「リーダー候補人材採用枠」ついてですが、ここで我々が定義するリーダー人材とは、「混沌とした時代の中で、新しい価値を生み出し社会をよくしていく人材」を示します。我々の言葉では「没頭層」と呼んでいます。常に目の前のことにワクワクしながら没頭していて、成長意欲も高く、世の中に貢献したいという思いも強い人材層のことです。
しかし、没頭層は、自らの人生を自分でハンドリングしたい意欲も高いため、日本企業によくある「総合職採用、配置は人事部任せ」の方式を、「他力本願」「運任せ」だと感じ、敬遠しがちな傾向があります。

それゆえ、2点目にあります「ヤングタレントマネジメント」を導入し、リーダー候補人材には入社時から特別なレールを歩むキャリアパスの構築を推奨しています。
これまでの「20代は若手扱い、40歳で課長、50歳で部長」を一般的なモデルとするなら、リーダー候補人材に対しては「配属は成長事業や海外事業、29歳で課長、39歳で部長」といったようなスピーディーなキャリアパスを構築・提供していくことが必要です。ヤングタレントマネジメントは、私が知る限りでは、グローバル企業では必ず導入されています。
我々の顧客企業A社の例です。ヤングタレントマネジメントを導入して以降、学生からは保守的な印象が強かったのが、「内定者が外資系コンサルか成長ベンチャーかA社かと検討の選択肢に上がるようになってきた」という報告を受けています。

1と2の導入には時間がかかるかもしれませんが、3のリクルーター制度は、ぜひ早急に導入を検討していただきたいですね。
「人を魅了し、口説き、感化させる」というリクルーターの仕事は、採用する側のリーダーシップを育むにも最適です。リーダー候補として採用した入社2、3年目の社員、もしくは若手のエース社員にリクルーターを是非経験させてほしいです。

これまで30年近く人材開発に従事してきた中で、「リーダーはリーダーにしか感化されない」と強く感じています。つまり、没頭層は没頭層にしか感化されない。ベンチャー企業が採用に成功しているのは、熱意あるリーダーが没頭層を感化しているからだと分析しています。

もし、若手エース社員が採用業務に時間を割くことに所属部門が不満に感じるようなら、経営層から人材採用(リクルーター制)の重要性を発信してもらうべきです。万が一、「採用は人事の業務」と経営層までもが協力を拒否するような企業であれば、残念ながらその企業の未来は厳しいものになるでしょう。「若さ」という貴重な才能を最大限に生かすことが、リーダー人材の育成につながり、企業の未来を創造するはずです。

新時代のリーダー採用のヒントは、ハーバード・ビジネススクールで人気の「東北フィールド・スタディ」にある

セルム代表・社長加島禎二氏インタビュー

―どうすれば、リーダー候補人材となり得る「没頭層」を採用できるか。
どうすれば没頭層を惹きつけることができるのか。どんな言葉に反応するか――。ダイレクトリクルーティングの活用などを通じて、我々も2年がかりで、少しずつ理解を深めているところです。あるプロジェクトで没頭層の学生一人ひとりにインタビューして気づいたのは、彼ら・彼女らは就活では早期から活動しているとは限らないといこうとです。企業が掲げている経営理念、実現したい未来に惹かれて動いています。また、社の知名度では動かないため、メディアによるマス広告では効果が低いと考えられます。

就活ルール撤廃以後については、就活の早期化問題がクローズアップされています。確かに、「諸条件が整う中で成果を出す人材」は、就活生の中では比較的早く動いていくと思われがちですが、「混沌の時代でも価値を生み出す没頭層」は、必ずしも早期から動くとは限りません。むしろ、自分がやりたいことに集中するあまり、一括採用をベースとする就活イベントには乗りたくないと考える人材も多いです。

そのような中、没頭層を惹きつける1つの解になりうると感じているのが、「東北フィールド・スタディ」※を活用した「採用×教育」プログラムです。没頭層の学生を数十人集め、そこで複数の企業から参加するリクルーターと一緒に、被災した東北を復興させるビジネスモデルを考えるというプログラムです。

オフィスなどで仕事の説明を受けるよりも、東北フィールド・スタディを活用した「採用×教育」プログラムを通じて、より深い次元で経営理念やビジネスへの姿勢に共感・共鳴すると、企業への志望度はぐっと高まるようです。良い経営理念が良い人材を惹きつける。良い人材は、良い仕事をし、お客様を喜ばせる。お客様が喜べば企業は儲かる。それがビジネスの基本です。
基本に立ち返り、愚直に誠実に実行する企業が、ビジネスでも採用でも最後に笑うと信じています。
(2019年2月27日取材)

※「東北フィールド・スタディ」:ハーバード・ビジネス・スクールが2012年から東日本大震災の被災地で実施している、現地に深く関わりながら実践することを重視する体験型の授業。

【企画:@人事編集部】

セルム代表・社長加島禎二氏インタビュー

企業情報

株式会社セルム
事業内容:企業内研修/人材開発コンサルティング/組織開発コンサルティング/組織調査・人事設計
本社所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-19-19 恵比寿ビジネスタワー7F
設立:1995年12月22日
HP:http://www.celm.co.jp/

執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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