特集

採用の流儀~「ファーストリテイリング」編


会社のイメージを正しく伝える、ユニクロの採用手法とは?

2016.04.22

  • 採用
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「2020年に売上高5兆円」――。カジュアル衣料品「ユニクロ」など8ブランドを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が公言する目標だ。現在17の国と地域に3,000店舗以上を展開する同社では、この目標の実現に向けて、海外出店計画を加速させている。同時に国内店舗でも、過去の画一的な運営からの脱却が求められている。グローバル展開と地域密着を同時に進める同社の新卒採用手法を、グループ全体の採用を統括する人事部部長の中西一統氏に聞いた。

かつてない規模の海外インターンシップを実施

ファーストリテイリンググループでは、ブランドごとに求める人物像や企業フェーズが違うため、複数の選考ルートを用意しています。ユニクロ配属の募集では、さらに「グローバルリーダー社員」と「地域正社員」の二つに勤務形態に応じて採用チームも分けています。

名称の通り、「グローバルリーダー社員」は、世界で勝負できる実力を身に付けることを目指し、世界各地どこにでも転勤の可能性があります。16年にユニクロに入社した新入社員のうち、約半数はこのポジションです。

「地域正社員」では、転居を伴う転勤は発生しません。地元志向が強い学生にも、より個々の希望に合った働き方に寄り添えるように、14年にリニューアル導入した雇用形態です。

この2職種では、入社後まったく違う道を歩むイメージを持つかも知れませんが、実は本質的に求めたい人材像は同じです。「全員経営」を標榜する当社では、採用するすべての職種に「経営者」のマインドを求めています。もしくは、会長の柳井の言葉を借りるなら「商売人」を求めています。

われわれは、常に進化し変化しているので、誰かの指示待ちでは仕事が間に合いません。各自が各自のポジションで何ができるか、常に全力で考えて周囲を引っ張っていくような人材が欲しい。

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では、そんな人材に、どうやったら当社に興味を持ってもらえるか。特に、海外志向が強い学生に、どう興味を持ってもらうかには注力しています。

たとえば、16年2月に実施した「グローバルスタディプログラム」という海外インターンシップも、その取り組みの一つです。海外にある私たちの拠点を訪れてもらい、それぞれの事業が抱える問題の解決策を一緒に考えてもらうプログラム内容で、宿泊費や旅費はもちろん当社負担です。

最終的に73名の参加でしたが、これだけの規模の海外インターンシップは、過去に例がなかったようで、事前に新聞各紙でも取り上げて頂き、応募総数は2400名を超えました。

他にも、新卒採用では募集条件を「2020年までに卒業見込みの方(既卒も可)」として通年採用を行っています。つまり、大学に入学したての1年生でも応募は可能です。

こういった取り組みはメディアでも取り上げられますが、それ以外にも大学と連携し、よりユニクロの実態を知ってもらうなど、地道な取り組みも行っています。

「近所のユニクロ」のイメージをどう脱却するか

就職活動の時期に学生が当社へ持つイメージは、決して良いモノではないでしょう。ファーストリテイリングの仕事に対して「材料の買い付けから、デザイン、企画、製造、物流、小売りまで、すべて自社で一貫し世界のトップを目指すSAP(製造小売り)企業」ではなく、「近所にあるカジュアル衣料品店」と認識している学生も少なくはありません。

つまり、リテール業(小売業)における店舗での接客販売のイメージです。メディアで見かける「大学生就職活動人気ランキング」には、決してランクインしない「不人気業界」と言っても過言ではありません。

そんな、当社がいわゆる「就職活動解禁」以降に採用活動をスタートさせても、形勢は非常に不利です。優良人材を確保するには、まだバイアス情報が少ない時期に、いかにファーストリテイリングの実態を正しく知ってもらえるかが、一つの大きなポイントだと考えています。

そのため、ナビ媒体だけに頼らず、自社採用サイトにも様々な情報を積極的に開示しています。「残業が多そう」「休みが取れなそう」などの憶測に基づく誤ったネガティブイメージを持たれることも多いので、そのあたりの情報はすべて公開しています。

ちなみに残業時間は、全社で削減に取り組み、現在は月間平均で20.9時間。有給取得率は46.3%です。まだまだ、胸を張れる数字ばかりでもないですが、より柔軟に働きやすい環境づくりに、全社で取り組んでいます。

どんな人気業界相手でも「勝てる」魅力がある

面接や選考時に、必要以上に学生を「口説く」ことはしていません。なぜなら、グローバル志向が強い学生や、仕事を通じて自己を成長させたい意欲が強い学生には、選考に参加してもらえれば、必ず当社の魅力を理解してもらえると思っているからです。

少なくとも日本企業の中では、われわれほど高いビジョンと目標を持ち、完全実力主義で、年次や性別に関係なく登用し、若い社員を積極的に海外に派遣している企業、アパレル製造小売業ならではのキャリアの幅が広がる可能性がある企業は、他にはないと自負しています。

30代の活躍ステージにしても、グループ企業の役員になる者、海外事業経営を任されている者、本部でスピード出世していく者や、銀座店のような超大型店舗の店長になる者などそのキャリアは本当に様々です。

仮に、会社のビジョンや実現できるキャリアを、業界・社名非公開でフラットに並べれば、どんな人気業界の企業に対しても、必ず「勝てる」だけの魅力があると思っています。

だからこそ、特に母集団形成時においては様々な取り組みも行いますが、その後の選考方法は極めてスタンダードな手法です。特別なことは何も行っていません。

面接では、過去の経験を基に、本人が何を感じてどう行動をしたのか、具体的に掘り下げていくような質問スタイルを推奨はしていますが、細かいやり方は面接官ごとに任せています。

ユニクロの「店長業務」に詰まったビジネスの真髄

ユニクロの選考では、店長業務をより深く理解してもらうために、選考過程で必ず一度はインターンシップの形で実際に店舗に行き、店長が店舗の何を見ながらどう動いているのかを学んでもらいます。

ユニクロの店内は、大型店舗だと最低限の「Men」「Women」などを示すサインボードはあっても、詳しい商品ごとのサインボードはできる限り置いていません。それでも、欲しい商品目当てに来店したお客様が、スムーズに該当商品にたどり着くように店内ディスプレイに工夫をしています。

そんな、お客様の立場ではなかなか意識することのない店長業務の仕事の幅広さや奥深さを、事前にしっかりと肌で感じてもらいたいのです。売り場づくりから人員配置や数値管理、接客方法等々、この店長業務には、経営者に必要とされるすべての要素が詰まっていると思っています。
新卒入社では、まず店長になることを目指してもらうのも、このビジネスの本質をしっかり学んで欲しいからです。

国内でも、一昔前のように、本部のおすすめ商品だけを画一的に置いておけば売れる時代ではありません。オンラインショッピングも充実させる中で、わざわざ店舗に足を運んでもらうための仕掛け、もしくは通りすがりについつい買ってもらえるような店舗づくりは、今後、各店ごとにさらに工夫が求められます。

そして、海外であれば、国や地域によっては、「UNIQLO」ブランドがまったく無名のエリアに進出することももちろんあります。まっさらな状態から、いかに愛される「UNIQLO」ブランドを作り上げるか。同じ「店長業務」でも、これだけの違いがあることを伝えています。

選考で重視するのは「チームワーク」形成力

選考で一番重視しているのは、「チームワーク」形成力です。あとは、チャレンジ精神や成長意欲の強さですね。われわれの仕事は、一人では本当に何もできません。どんなに優秀な人間でも、一人で店舗運営はできないのです。

全体を管理する本部でも、素材からはじまり、デザイン、企画、生産、物流と各部門が分かれる中で、一人で完遂できる業務はほとんどありません。いかに、周囲の人を巻き込む力があるか。チームで目標を実現することが本質的に好きか。そういった点を選考では重視します。

誤解を恐れずに言えば、われわれが行っている仕事は「誰でもできる業務」のはずです。でも、ただ「できる」だけでは足りないのです。まずは自分が学んでしっかりできるようになり、そして人に教えることができるようになり、教えられた人も、さらにその下の人に教えていけるようにする。

「自分だけできればいい」というのではなく、周囲をしっかり巻き込んで欲しい。秀でた能力を持つ一匹狼タイプの専門家より、われわれが欲しいのは、そういったチームワーク力を持つ人間です。

そして、現状維持では決して満足せず、日々成長意欲を持って、新しい取り組みがあれば積極的にチャレンジして欲しい。われわれが求めているのは、そんな人材です。

面接工夫のワンポイント ~Q&A~

Q:当社でも、海外進出を加速させるべく、海外志向の強い学生に応募をしてほしいと考えています。どうすれば、そのような学生にエントリーしてもらえるのでしょうか?

A:海外で働きたいという意欲の高い学生は、当然ですが「海外」「グローバル」と言った言葉に非常に敏感です。「営業職」として募集するよりも「海外営業職」としてある方が、断然目を引くでしょう。過去、海外赴任して活躍している人がいれば、その実績を募集要項や会社案内に詳しく紹介すればいい。これから海外進出を考えているなら、具体的にどのように活躍の可能性があるかを記載すれば、きっとエントリーはあると思います。

中西一統(なかにし・かずのり)
1975年香川県生まれ。京都大学教育学部卒業後、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)入社。以後、一貫して人事畑を歩む。同社で10年間人事を担当後、大手ソーシャルゲーム会社・グリーを経て、2014年ファーストリテイリングに入社し、グループブランド・ジーユーの人事責任者に就任。現在はユニクロやジーユーを含む、ファーストリテイリンググループ全ブランドの採用を統括している。

執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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