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特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~


「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日

2019.11.27

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特集「人手不足業界の逆襲」では、人手不足や人材定着の課題を打開するための各業界の秘策を取材する。今回は、セルフ式うどん専門店「丸亀製麺」を全国展開するトリドールホールディングス(東京・渋谷)が挑む社員のモチベーション向上施策とHRテックの活用法に迫る。

人手不足業界の本丸とも言える外食産業で「業界の常識を変えていきたい」と語る組織改革のキーマン・鳶本真章執行役員CHRO兼経営戦略本部長に話を聞いた。【取材:2019年10月23日 @人事編集部 長谷川久美】

※特集「人手不足業界の逆襲」シリーズ

目次
  1. 味だけでは勝負しない!「人材開発企業」として勝ち抜いていく決意
  2. 「顔が見える」人事評価が離職対策にも効果を発揮
  3. モチベーションの徹底した数値化で店舗の現状を把握
  4. 社員のキャリア支援を強化 麺職人のグレード制度も
  5. 「飲食業は休めない」の汚名を返上、独自の有給取得促進施策の考案

鳶本真章(とびもと・まさあき)

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大学卒業後、大手自動車メーカーに入社。マーケティング領域に従事した後、京都大学大学院でのMBA取得を経て、大手外資系コンサルティングファームへ。多様な経営戦略案件関わったのち、大手日系建材メーカーで社内コンサルティング部門を担当。複数のベンチャー企業での経営支援を経て2018年にトリドール入社。以来、グループ全体の組織・人事戦略を担う。19年より、執行役員CHRO兼経営戦略本部長に就任。

味だけで勝負はしない。「人材開発企業」として勝ち抜いていく決意

介護、建築、小売りなど人手不足に苦しむ業界の中でも、飲食業界は特に長年高い離職率に悩まされてきた。厚生労働省の発表では大卒者で就職後3年以内に離職した割合は、「宿泊業・飲食サービス業」が50.4%で、他業種と比べても最も高かった。

そんな中、トリドールホールディングス(以下、トリドール)は「外食業界で唯一無二の人材開発企業としていくプロジェクト」を9月24日に発表。プロジェクトを率いる一人、鳶本真章さんはこう語る。

プロジェクトについて話す鳶本さん

「以前は建材メーカーで仕事をしていました。『なんで今、飲食業界にいるの?』とよく人から言われますが、『飲食は世の中に必要不可欠な業界だからだ』と返しています」

「個人の幸せな時間を提供するのが飲食の、特に丸亀製麺のような外食産業ですよね。でも、いざこの業界で働こうとするとキツイ、しんどいという声があまりに多い。それはすごく不条理なことだと感じています。これを変えなきゃいけないと思いました。人を幸せにする業界が、人が辞めていく業界であってはならない

トリドールは2025年度に国内外に1700以上ある全店舗の売り上げを5,000億円にする数値目標に掲げている。目標達成には現状の約3倍の成長が必要になる計算だ。

鳶本さんは「掲げた目標の達成のために、これからは『人』で勝負していきたい」と説明する。

「いくら独自性のある美味しいメニューを開発したとしても、競合企業が多額の資金を投入すればコピーされてしまうこともある。でも、モチベーションが高い社員というのはただお金をかけてもコピーできません。人の成長あっての企業の成長だと再定義し、社員の成長とモチベーションの高さで唯一無二の力を発揮していく、それが人材開発企業としてのあり方です」

「顔が見える」人事評価が離職対策にも効果を発揮

業界特有の「苦しさ」を分析するうちに、外食産業には「目指すべきキャリアの見えづらさ」があることに気づいたという。一つの場所に限定されることなく、営業、店舗のマネージャー、あるいは職人など社員個人が複数の方向でキャリアを築けるような体制を整えることが必要だった。

トリドールではその一環として、2015年に社員個人の顔写真と紐付けて人事評価ができるクラウド管理システム「カオナビ」を導入した。

それまでは一元的に社員の人事評価を行うシステムは存在せず、人事評価にはエクセルに蓄積された手打ちのデータ参照が必要だった。しかし、当時店舗数が800店を超え、事業の成長スピードが増すに連れて一元的なデータ管理の導入が急務となっていた。

「まず最初は本社の方も社員の顔が見えていなかったので、評価するにしても『この人は誰?』という感じでしたね。カオナビの導入で、社員の人となりだけでなく、過去の成果と今の目標をしっかり紐付けて評価できるようになりました」

上長も部下の評価がしやすくなった。「社員が自分の目標に対しても明確な意識付けができるようになったという部分も非常に大きい」と鳶本さんは話す。

また、カオナビ導入は社員の離職防止対策にも効果を発揮した。

「辞めてしまう社員の履歴をデータで追っていくと、初期の配属に問題があるケースがいくつも見受けられました。他の業種と同様、3年以内に辞める人が多いこともわかってきました。どういう人がどういう時に離職を考えるのか、『辞める壁』というのもある程度明確になったことで、そこでどういうフォローが必要なのか、こちらで対策をたてる材料ができました」

モチベーションを徹底して数値化。店舗の現状を把握

社員個人だけでなく、全国にある店舗ごとの状態の把握にも努めた。3年前から導入したクラウドサービス「モチベーションクラウド」で数値化したモチベーション管理が可能になった。エクセルや文書、口頭の報告がなくとも、各エリアの店舗の状態が数値で細かく把握できるのがサービスの特徴だ。

「その店舗の達成度が50%だったら、なんでこの点数になってしまっているのか店長と細かくフィードバックを行います。始めた頃は『なんで数値が低いのか、理由がわからない』とよく言われましたが、説明ができないのは店舗の様子がよく見えていないからなんです。マネージャーがちゃんと店舗の様子やスタッフの働きを見て評価ができている状態なら、現場の人間のモチベーションは上がってきます

「モチベーションクラウド」の活用で、その店舗の社員が、会社に何を期待しているかという「期待値」も把握できる。

「たとえば、数値の上で『店長と社員の仲がいい』という結果がでたとします。すごく良いことのように思えますが、他の数値を見ると会社全体への評価が低いというケースもある。データなしで店舗を視察しただけでは把握できない情報です。見えにくい不満でも、そこをヒアリング・面談でテコ入れし、何がモチベーションを下げているのか理由を探っていきました」

プロジェクトについて話す鳶本さん

かつては評価する側が「この社員はいいな」「この店舗はよくやってるな」と感じれば評価がある程度定まってしまっていた部分もあった。

社員や店舗を客観的に評価できるシステムを導入し分析に生かしたことで、評価される社員一人ひとりの「腹落ち感」も増したという。

「一過性の対策でも離職は防げますが、長期的に離職を減らしたいのなら、『なぜ辞めてしまうのか』という負のロジックを理解する必要があります。一人ひとりが成長しキャリア形成に納得できるようにしていかなければ、本当の離職対策にはならないんです」

社員のキャリア支援を強化。麺職人のグレード制度も

丸亀製麺の全店舗には製麺機が設置されていて、店内で自家製麺を行なっている。「このうどんは生きている」というキャッチコピーにたがわず、うどんはすべて打ちたてなのが特徴だ。店舗によっては高いスキルを持つ麺職人がおり、「うどんの美味しさ」に差が表れる、と言うケースも珍しくない。

丸亀製麺では複数のキャリアを応援するという方針から、「麺職人の等級制度」を新しく創設した。等級が上がれば、小麦粉の配合、茹でる温度について職人がマニュアル外の裁量を持つことも可能だ。

うどんを茹でる人

業界でも類を見ない麺職人の等級制度がある

「いい意味で属人化させる職人の裁量」を採用する一方で、社員全員が同じ水準の料理を提供できるオペレーションマニュアルの周知も徹底して行っている。全ての店舗のうどんを「生きるうどん」にしていく、2つの方法だ。

求めるのは「料理の味」だけではない。「料理のそのもの」の美味しさに加え、「接客と店舗の雰囲気が合わさって、料理を食べるという体験を提供できる」と鳶本さんは話す。

「自分がどういうところでご飯を食べたいと思うのか、そこを追求してもらう。ただ料理を提供していると思うのか『美味しいご飯を食べる』という体験を提供していると思うのか。接客でも調理でも、体験の部分で心にフックかける。そのためには、本社がトリドールのマインドを店長に伝える必要がありますし、店長が社員をどう教育していけばいいか理解していないといけません」

ほほえむ丸亀製麺の3人

「美味しいご飯を食べるという体験」の提供が目指すべき目標

「飲食業界は休めない」の汚名返上、独自の有給取得促進施策

外食産業の最大の課題は、休暇の取りづらさだ。現場の従業員は日々の業務に追われ、社員・アルバイトのシフトの穴埋めで店長が駆り出されるといった状況が常態化しているためだ。

そこでトリドールは、年5日の有給休暇の取得の義務付けが始まった今年4月から、丸亀製麺の各店舗に向けて「店長に有給取得をさせるヘルプ部隊」の運用を始めた。全社的に各店舗の社員のシフトを把握し、店長が有給申請した際にシフトの欠員が出ると分かれば、サポート要員を臨時に派遣する。サポート部隊の要員は毎月10人ほど確保し、店長が休む際の欠員に備えている。

「本社社員は休めるけど、現場の社員は休めず働く。そういう不公平感をなくしたいという思いから考案された仕組みです。現場の店長が、マネジメントに注力するサポートをしたいと思っています

大手外食チェーンの中には、もともとの休日を出勤日にして有給を取得させ、社員の有給取得率を水増しさせる「抜け道」を画策する企業もあり、問題視されている。

有給休暇の取得義務化の新ルール 罰則や「抜け道」のリスクも解説

そんな外食産業のモラルを問う問題が浮上する中でも、トリドールは「社員の休み方改革とプライベートの充実は全体的なモチベーションアップに必須」と位置付けている。

「外食産業を幸せな業界」に変えたい、と鳶本さんは強調する。

「目標は、社員であってもパート・アルバイトであっても、トリドールの店舗で働く人がお子さんに対して『パパやママがここで働いている』と胸を張って言える会社にすることです。そして、もし会社を離れて独立することがあっても『トリドールの社員だったなら信用できる』と一目置かれるような、そんな社員を育てたい。私たちが目指す『トリドールらしさ』で業界全体を変えていきたいと思います」

トリドールの鳶本真章執行役員

企業情報

トリドールホールディングス
・事業内容:飲食業を中心とする傘下子会社の経営管理
 主なブランドとして讃岐釜揚げうどん 「丸亀製麺」、焼鳥ファミリーダイニング 「とりどーる」、とんかつ・かつ丼専門店「豚屋とん一」、美と健康のライフスタイルブランド「SONOKO」など
・設立:1990年6月
・所在地:東京本社 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-21-1渋谷ソラスタ 19階
     神戸オフィス 〒651-0088 兵庫県神戸市中央区小野柄通七丁目1-1日本生命三宮駅前ビル11階
・HP:https://www.toridoll.com/

【編集部より】離職対策とモチベーションアップの取り組みを紹介した記事はこちら。

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