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HLC定例会「正しい1on1ミーティングの実践とは?」


1on1で離職率低下! 「シリコンバレー式最強の育て方」著者が語る実践法

2018.07.18

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2018年7月2日、HLC定例会「正しい1on1ミーティングの実践とは?」が開催された。1on1ミーティングは上司と部下の関係性を良質にし、組織全体を強くする取り組みとして注目されている。

「シリコンバレー式最強の育て方―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―」の著者であり、一部上場企業から五輪・プロ野球選手などの一流アスリートのメンタルコーチも務めた世古詞一氏(写真右)が、株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括の曽山哲人氏と対談。1on1ミーティングの重要性と実践法について語った。

目次
  1. 一体感を高め、離職率を下げる1on1ミーティング
  2. 1on1ミーティングでは部下に喋らせる
  3. やる気のない部下にやる気を出させるには
  4. 部下に自ら動いてほしい時の対話方法

一体感を高め、離職率を下げる1on1ミーティング

世古氏:
「1on1ミーティングは、部下のモチベーション向上を目的に、定期的かつ高頻度で上司と部下が話し合うものです。一般的な面談は、上司は人事に評価を出すために年2回程度行いますが、それとはまったく違うんですよね。

よく『本当に結果につながるのか』と質問されますが、1on1ミーティングは人間関係の質を深めることが目的なので、時間がかかりますし数値化しにくいものです。急がば回れの精神で取り組む必要があって、そこが導入のハードルにもなっています」

世古氏は、業績が悪い時こそ1on1ミーティングの効果が出ると述べる。業績が良ければ上司と部下の関係が悪くてもさほど問題はないが、結果が出ていない時に関係が悪いと退職率が上がる。業績が悪化した時に、どれだけ社員が一体感を持てるかが重要だ。人間関係が構築できていれば、生き残れる強い会社になる。

世古氏:
「業績が良いからと組織作りを怠ると、業績が落ちた時に一気に人が離れていくので気をつけましょう。

1on1ミーティングで高める関係の質は、顔を認識しているレベルから価値観を共有しているレベルまでの5段階に分けています。現代では、このレベルを高めるのは本当に難しい。

みなさん、今日は職場でどんな話をしたか覚えていますか?仕事の話はしますけど、個人の話はあまりしていないんじゃないでしょうか。たとえば、部下のAくんはどんな気持ちで働いていて、将来何がしたいのか」

働き方改革で残業が減りつつあり、コミュニケーションの機会は確実に減っているのだ。セクハラやパワハラも問題視されるようになり、一歩踏み込んだ質問に躊躇する上司も多い。そうした環境下では、やはり優先度が高い仕事の話が中心になり、個人の話は少なくなる。

「雑談」から、部下との信頼関係を構築

著者の世古詞一氏世古氏:
「こうなると人の話はしなくなりますよね。人を把握しないのであれば、仕事はだれが担当してもいいってことになる。

だったらクライアントの状況などをデータで把握して、データに基づいて判断すればいいので、上司の価値も薄まりますよね。上司が価値を発揮するには、今までないがしろにしてきた人材マネジメントに向き合うべきなんです

優秀な社員ほど突然退職する傾向がある。それは、上司のマネジメント対象になりにくいからだ。

上司は、あまり仕事ができず多く失敗する社員に時間を割きがちだ。指導する項目はたくさんあるため、上司は「今日仕事した」と満足するものの、ひとりで仕事を任されている社員は放置されているため、気付かない間に不満が蓄積されている可能性がある。

世古氏:
「仕事を任されている優秀な社員は、ほったらかしにされているうちに今の仕事に飽きて、ほかの会社に流れていってしまう。人間関係が構築できていないから、その段階で『辞めないでくれ』と言っても白々しいですし、引き止められないですよね。

どんどん企業が仕組化され分業化されると、固定業務になりがちなんです。成長の機会は、自分で考えて何かに取り組むこと。同じ仕事を繰り返すだけだと、個人の成長機会は減ってしまいますよね。

中間層の社員も淡々と仕事をするだけで成長が鈍化してしまうんですよ。こうなると、上の2割は辞めていき、真ん中の6割は成長しない、下の2割は手がかかるというどん詰まり状況になってしまいます」

後手の人材マネジメントはご法度だ。辞めると聞いてから妥協案を提示するのでは引き止められず、引き継ぎも採用による人材補充も間に合わない。先手の人材マネジメントが必要なのである。

世古氏:
「先手の人材マネジメントにおいて、1on1ミーティングは有用です。雑談で終わってしまうケースも多いんですが、成果があればOKです。

成果とは、新たな情報収集や、問題解決、課題発見、モチベーションアップ、ネクストアクションの明確化などが当てはまります。従来は上司が指導して成長させようとしてきましたが、雑談だけでも人材マネジメントできるんですよね。

雑談すれば、自然と相談が増えていきます。そうすると安心感や信頼感も増して、部下の内省が増え、成長を促すことにつながるんですね。上司がコーチングをやろうと思うとハードルが高くなってしまうので、まずは雑談からスタートするのがおすすめです。雑談を楽しみ、部下との信頼関係を構築しましょう」

1on1ミーティングでは部下に喋らせる

曽山哲人氏と世古詞一氏①
また、自身のスタンスを変えられる上司はさまざまなタイプの部下と良質な関係を築ける。スタンスは、従来の上司らしい父親的役割、相談できる母親的役割、雑談できる友達的役割、内省を促すインタビュアー的役割の4つに分けられる。

世古氏:
「1on1ミーティングでは、決められた時間の中で何を話すか決めておくことが大切です。まず健康チェックをして、メインのテーマを話し、最後にまとめの話をするのが定番の流れですが、注意したいのは自分の熱量ではなく、部下の熱量を上げること

上司ばかりが気持ちよく話していると、上司の熱量だけが上がって、部下の熱量は下がってしまいます。自分ではなく、部下に話させましょう。

小さなことですが、面談する場所においしいお菓子を置いておくことがとても効果的なんですよ。お取り寄せお菓子を用意すると、部下の緊張がほぐれて楽しい気分になり、話しやすい環境を作ることができます」

世古氏は、1on1ミーティングで何かを大きく変えることを期待しすぎてはいけないと述べた。1on1ミーティングは部下にもっともらしい助言をする場ではなく、自然体で楽しく雑談し、部下と上司が承認し合う場にするべきだと強調した。

特に開始当初は、問題解決よりも成功共有を優先するイメージで始めて、従来の面談との違いをつくり、部下がまた話したくなる場や雰囲気になることに工夫を凝らして欲しいと述べた。

やる気のない部下にやる気を出させるには

サイバーエージェント 取締役 人事統括の曽山哲人氏
曽山氏:
「私はコンディションなど、本人の自己評価を聞くようにしています。『現状の自分って自己採点つけるとしたら何点?』などと質問して本人の自覚を聞くようにしています」

世古氏:
「いわゆるスケーリングですね。やる気がないとモヤモヤしてしまうんですが、点数をつけて可視化することで次の目標が見えてきます。ずっとやる気があったのにやる気がなって戸惑う人もいますが、やる気がないことをネガティブに捉えないのがポイントですね。

ダメだと思うとマイナスに働いてしまうので、やる気の低下も肯定的に認めましょう。『やる気ないんだ、まあ自覚できているならいいじゃん』くらいのスタンスで話した方がいいですよ。そこから『なんでだろうね?』と深堀りすることが重要です。

上司が解決してあげようと思って働きかけると、意外と機能しないんですよ。取り調べみたいになって、自立を促せないんですよね。深堀りはしつつ、本人に探させる。いっぱい喋らせると、そこから気付きが生まれて自分から動くようになるんです

これが答えだよと上司が結論を言ってしまうと、上司のエネルギーだけが上がっちゃって、部下のやる気が下がっちゃうんですよ。上司も『やる気を上げてやる』と張り切らないことです。そう思って欲を出すと失敗しますから」

部下に自ら動いてほしい時の対話方法

曽山哲人氏と世古詞一氏②
曽山氏:
自分がやりたいと思うことをまず紙などに書いてきてもらいます。事前に『やりたいこと書いてきてもらえるかな』などと伝えて本人に言わせて、その後に行動へ移してもらいます」

世古氏:
仕事の目的や部下への期待を伝えることですね。伝わっていない時は、部下に復唱してもらいましょう。『今いろいろ言ったけど、自分の言葉で説明するとどんな感じ?』と聞くと、大体答えられないです(笑)しょうがないですよ、人間すぐには理解できませんから。

部下が口ごもったら、『わかんないよね。だからメモ書いといた方が良いよ』とアドバイスしましょう。自分の言葉で言わせることが大切です。あとは、『本当はどうしたいの?』と質問するのもいいですね。部下が『自分はどうしたいんだろう?』と考えるきっかけになるので。それで宣言させるとより良いですね。

自分がこうしていくという『決意』は、一連の流れの中で何となく言わせるんじゃなくて、改めて立たせたり歩かせたりして、違った流れを作ってから言わせると定着率が上がります。例えば、コーチングの最後に窓を開けて大声で決意を叫んでもらったことがあるのですが、彼はその決意をずっと忘れなかったそうです」

部下との関係構築や育成に悩んだら、1on1ミーティングを導入して部下との対話を始めてみてはいかがだろうか。

【編集部より】

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執筆者紹介

萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010

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