レポート「キャリアのカリスマに聞く生き残る人材、20代・30代で身につけるべきスキルとは」
「人生100年時代」に取り残されないキャリア形成のヒント
2018.02.13

2018年の今期(第196回)通常国会では働き方改革が大きな議題となっています。終身雇用・年功序列の賃金制度はもはや過去のものと言われ、転職が一般的となった現代。副業・兼業などのパラレルキャリアという選択肢も広がりを見せつつあり、「働き方」はどんどん変化しています。しかし、その一方で将来をどう描けばいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
2018年1月24日、渋谷BOOK LAB TOKYOにて多彩なゲストを迎え和やかな雰囲気で始まったのはBusiness Insider Japanが主催のセミナー「キャリアに悩むあなたへ、20代・30代から考える100年時代を生き残るスキル」。これからの生き方のヒントはどこにあるのでしょうか? 当日の様子の一部をご紹介します。【取材:河野理沙】
75歳定年社会へ
第1部トークセッションでは、はじめに、司会の浜田敬子氏(Business Insider Japan編集長)【写真】がリンダ・グラットン、アンドリュー・スコットの著書『LIFE SHIFT ―100年時代の人生戦略』※(東洋経済新報社)を紹介しました。
「学生→社会人→定年」というこれまで常識とされてきた日本でのライフステージは現代の長寿社会では通用しないと言います。浜田氏はこの本に影響されて転職したことも告白。75歳まで働く社会になると将来を見据え、20年以上勤めた朝日新聞というプリントメディアからネットメディアへの転身を果たしたそうです。
※関連記事:働き方はどう変わる? リンダ・グラットン著「ワーク・シフト」書評
「人生100年時代構想」や「働き方改革」は今まさに国が主導している取り組みです。上記のように長寿化が指摘されている一方で、現在の少子高齢化社会では今後ますます労働人口が減ると予測されています。加えて、「ロボットに仕事を奪われる」と言われているように第4次産業革命と言われるIoTやAIなどといったIT技術の進歩もこれからの働き方に大きく影響を与えると考えられています。
生き残るには行動が不可欠
【写真】morichi代表・森本千賀子氏(左)と東大経済学部教授・柳川範之氏
中学卒業後は(学校に頼らず)独学で学んでいたという柳川範之氏は「これからの時代の変化に合わせてスキルをキャッチアップしたり、新しく身に付けていくことが必要だ」と訴えます。
「今の50代、60代の上司の姿を自分の50代、60代だと思わないでください。未来は今とまったく違う世界になるので、そのときに何がやりたいか、どんなことができたら嬉しいか、想像力を膨らませてほしい。その想像力で人生が大きく変わります」
リクルートで20年以上転職エージェントとして勤め、1年の兼業を経て独立。NPO法人の理事も務めるなどパラレルキャリアの森本千賀子氏は変化対応力を重要なポイントとして挙げました。
「変化対応力を身につけるためには移動したり、場所を変えてみることを勧めています。リソースの違う中でマネジメントする経験は絶対に力になりますから。一番は海外赴任がいいですね。これは転職してからでは難しいので、今いる会社でできればやったほうがいいです」
【写真】パナソニック社員/One Panasonic代表・濱松誠氏(左)と経産省産業人材政策室参事官・伊藤禎則氏
パナソニックで人事として働く傍ら「One Panasonic」や「One JAPAN」などの組織活性化を図った有志団体の代表も務める濱松誠氏は「染まらないで」と不安げ。
国のガイドラインで兼業が可能となっても「会社の規定で禁止されているから…」と諦めてしまう人が多い現状を取り上げ、「規定に触れない程度に出来ることをやる、社内でも自分がいいと思ったことはやってみる、おかしいと思ったことは反対する。それくらいの人を求めます。染まらないためには強い気持ちか圧倒的なスキルか仲間が必要です。行動してください。空気を読むのではなく空気を作ってください」と強く訴えました。
経済産業省の伊藤禎則氏はキャリアを「持ち札」として考えることが多様化し選択肢の増える将来のキャリア設計に役立つと言います。
「昔はキャリアラダーや人生すごろくと例えられていましたが、今の働き方ってポケモンGOみたいなものだと思っています。自分の意思でいろんな世界に出かけて、いろんなスキルや人脈や価値観を自分なりにゲットしていく。そして持ち札を増やしていく。そのようなキャリアの感覚がこれから大事になってくるのではないかと思います」
求められるマルチタスクプレイヤーとは
森本氏はほしい人材として大谷翔平選手が挙がると言います。
攻守どちらでも活躍する大谷選手はマルチタスクプレイヤーの理想像だそうです。
しかし、浜田氏から「少し前までは“日本の企業はジェネラリストが多すぎて使い物にならない、だから専門性の時代だ”と言われていましたよね?」という指摘が入りました。
それに対して森本氏は「非連続キャリアでそれぞれのプロフェッショナルであること」「スペシャリティを2本も3本も持つこと」が重要であると答え、あくまでも満遍なくできる人材ではないと強調。加えて、柳川氏は1つの会社でどれだけいろんなスキルを身につけても、別の会社に移って通用しなければプロフェッショナルとは言えないと補足しました。
しかし、会社が他の会社でも通用するスキルを学ぶ機会を与えてくれることは稀なため、自分で獲得していかなければならないとも言います。ではスキルはどのように習得すればいいのでしょうか。柳川氏は次の3つのポイントを挙げました。
1.今やっている仕事の幅を広げるようなスキルを学ぶ(記者→カメラのスキルなど)
2.今の会社に入っていなかったらやりたいことをシミュレーションし、必要なものを具体的に考える
3.これらをサードプレイスで発信・交流すること
やりたいことがない人へ
【写真】HARES CEO・西村創一朗氏(左)と経産省産業人材政策室長補佐・藤岡雅美氏
第2部ではリクルートを独立しHARES・CEO、NPO法人理事、副業研究家である西村創一朗氏と、かつてTwitterで大きな話題を集めた経済産業省の「不安な個人、立ちすくむ国家 ~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」を作成した次官・若手プロジェクトの一員でもある藤岡雅美氏が登壇者に加わり、質疑応答が行われました。
参加者からは「9時~17時の勤務時間では副業が難しい」「働き方改革をいくら進めても経営者が変わらない限り表面的なものとなってしまうのでは?」など現制度への不満が飛び交いましたが、柳川氏は「5年前には影も形もなかった副業・兼業が着実に浸透してきている。みなさんが考えているより世の中はるかに変わりますよ」とアドバイスしました。
「やりたいこと特にないのですがどうしたら見つかりますか?」という質問に、登壇者は次のように返答しました。
西村氏「自分に出来る&評価されること、それがやりたいことになった」
藤岡氏「好きなことに関わることならなんでもやってみる」
森本氏「本屋さんに行く。関心のあることを突き詰めて発信し、反応してくれた人と交流する」
柳川氏「とにかくなんでも試してみる。やってみないとやりたいことは分からない」
近い距離感での各ゲストのエピソードを交えた質疑応答はとても興味深く、ひとりひとりの話をもっとじっくり聞きたい! と思ったところでセミナーは終了。「仕事は上から来るもの・楽しくない・我慢しなければいけない」という昭和的な労働価値観が「能動的に楽しく働けるのが仕事」へと変わるのもそう遠くない未来だと感じました。
今回のイベントの内容はBusiness Insider Japanでも配信されるということなので、全容が気になる方はそちらをチェックしてみてはいかがでしょうか。
DATA
『キャリアに悩むあなたへ、20代・30代から考える100年時代を生き残るスキル』
日時:2018年1月24日(水)19時〜21時
場所:渋谷Book Lab Tokyo(東京都渋谷区道玄坂 2-10-7新大宗ビル1号館)
主催:Business Insider Japan
構成:1部/トークセッション 2部/質疑応答 3部/ネットワーキング
登壇者:【司会】浜田敬子氏(Business Insider Japan編集長)
柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)
森本千賀子氏(morichi代表、オールラウンダーエージェント)
濱松誠氏(パナソニック社員、One JAPAN共同発起人・代表)
伊藤禎則氏(経済産業省産業人材政策室 参事官)
西村創一朗氏(複業研究家、HARES・CEO)
藤岡雅美氏(経済産業省産業人材政策室長補佐)
イベント情報紹介ページ:https://www.businessinsider.jp/post-109029
執筆者紹介

河野理沙(こうの・りさ)(株式会社スキマタイズ) 東京都出身。主に「食」「健康」「ジェンダー」の三本柱で執筆をしている。常識に囚われないんだねは褒め言葉。犬猫より鳥派。
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