副業新時代~株式会社DeNA担当者インタビューvol.1
DeNAのマーケティング担当マネージャーが、副業を行う理由とは
2018.02.13

社員が熱意をもって働ける環境づくりを目的とした人事プロジェクト「フルスイング」を2017年10月2日より始動した株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。同プロジェクトによって、DeNAでは昨年10月から副業が解禁され、2018年1月までに、約30件の副業が成立しています。
社員はどんな業種・目的で副業を始め、人事担当者はどんな効果を狙っているのか? 今回は、事業戦略室でシニアマネージャーを務める今西陽介さんに、インタビューを実施しました。副業への見方が180度変わってしまうような内容となっています。
今西陽介(いまにし・ようすけ)氏
株式会社ディー・エヌ・エー
ゲーム・エンターテインメント事業本部事業戦略室
シニアマネージャー
2004年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。入社後は、Mobage、ポケットアフィリエイト、モバオク、モバコレなどモバイルサービスの複数の立ち上げに従事。現在はゲーム事業のマーケティング業務を担当している。
本業でスマホゲーム 副業でファッションアプリのマーケティング
──現在、本業として行っている仕事内容を教えてください。
今西氏:
本業では「事業戦略室」という所に今いるんですけれども、ここで、スマートフォンゲームのマーケティングを行ってます。具体的には、
- お客様にアプリを知ってもらう
- お客様にアプリを使ってもらう
- お客様にアプリを使い続けてもらう
DeNAで出してるゲームや、協業企業様と一緒に取り組んでいるケースもありますが、上記3つの視点を重視したマーケティングをやっております。
──現在、副業として行われている仕事は何ですか?
今西氏:
副業では、いくつか案件はありますが、その1つとして、スタイラー株式会社という、アジアでアプリをリリースしている、ファッション系のスタートアップ企業のマーケティング支援しております。
──ファッションアプリのマーケティング支援というのは、どういった内容でしょうか?
今西氏:
実は、本業のゲームアプリのマーケティングとやっていることの基本は全く一緒なんですね。スタイラーでは、「FACY」というサービスを展開しているのですが、そのサービスを広めていくにあたり、まずアプリを知っていただく、次に使っていただく、そしてよりファンになっていただく。この3つのことを、どういう戦略でやっていくかについて、支援をしています。
「お金のために副業はやらない」キャリア形成手段としての副業
──今西さんが副業を始めた目的・理由を教えてください。
今西氏:
目的については、これ「ええかっこしい」じゃないのですが、私はお金のための副業はやらないと決めています。お金はもちろん、自分自身の市場価値をはかる上で非常に重要ですが、自分の中での優先順位としては自己のキャリア形成とスキルアップだと思っております。
副業をはじめた理由1.さまざまな商材を扱うことで、広い視点が持てる
今西氏:
はじめた理由はいくつかありまして、まず私が担当するマーケティングの仕事は、一つの「ゲーム」というサービスをひたすらマーケティングするよりも、例えば「ファッション」や「自動車」、いろんな商材をマーケティングすることによって広い視点が持つことができ、成長できる機会があるのかなと思っています。
副業をはじめた理由2.自分の実力を正確に把握したい
今西氏:
その他の理由で言うと、自分の実力を正確に把握したいという気持ちがあります。会社で評価されていても、それはあくまでも会社内だけでの価値であって、外に出ても自分が価値ある人間かどうかは分からない、と思っているからです。
会社の外に出て仕事をすることで、自分の本当の価値が分かる
今西氏:
私は、DeNAに13年くらいいるのですが、長くいると人間関係も出来てくるので「あいつ使えない」みたいなインプットを受けなくなるのですね、受けたいわけではないのですけど。
──日本の企業自体、人間関係をベースにした評価をされやすい傾向はあるのかもしれませんね。
今西氏:
そうですね。ただ、DeNAは少し特殊で、「発言責任」という言葉がホームページに書いてあるのですが、会議でも「目上とか目下とか役職関係なく、言いたいことを言いましょう」という文化があります。だから、率直な評価を言われる方なのですが、最近は少し減ってきているかもしれません。
だから、会社の外に出て仕事をすれば、ゼロベースに近い状態で評価されるので、自分の価値が分かりやすくなると考えました。チャレンジという意味でも、もっと会社の外に出る機会があった方がいいのかなと思っています。
私は副業をやるときに、シビアなジャッジをしてほしいので「使えないと判断したらすぐ切って下さい」とわりと最初に言っています。あくまでも会社内での価値ではなくて、労働市場の価値として自分がどのレベルなのかというところをちゃんと考えなくてはいけないと思って、そうしていますね。
ゲームの仕事で左脳を、ファッションの仕事で右脳を使う
──関連して、副業をしていてよかったと思うことはありますか?
今西氏:
新しい人と出会えることはすごく大きいなと思いますね。これは広報的な打ち出しかもしれないんですけど、DeNAは「ロジカル集団」というか、関西弁で言う「カシコ」やと思われてるところがあるんですね。どちらかというと「左脳派」みたいなイメージがあるんです。
私が担当するスマートフォンゲームのマーケティングも、エンターテインメントなので、一見「右脳派」ぽいのですが、中身はめちゃくちゃ「左脳派」です。スマートフォンのゲームはリリースすることがゴールではなく、むしろリリース時がスタートです。毎日前日のゲームの状況が数値として現れるので、とにかく分析しまくって、PDCAを回して良いゲームを作って、それを長いこと運営する、という仕事です。
副業のファッション分野は右脳と左脳のバランスが良い分野ではあるのですが、フェーズによってはクリエイティブかつ感覚的な部分も多いので、ゲーム分野と同時にファッションの分野でも仕事をすると、左脳と右脳を両方使っていけるという部分もメリットですね。どちらかが優れていれば良いわけではないので、バランスが大事だと思っています。
副業を開始してから、業務の効率化により気を配るように
──副業が本業に与えている影響、逆に本業が副業に与えてる影響があれば教えて下さい。
今西氏:
私は会社の本業では基本的に11時に出勤し、いつも19時に帰るのですが、いかに効率よく仕事するかという感覚は、副業をはじめてからより研ぎ澄まされるようになっていますね。
社内では、「本業の時間を削って副業をやっている」という見え方になる場合もあります。そういう状況であれば「あの人、副業やっているけど、本業をおろそかにしてるんじゃないか」とも思われかねないんですよね。だから、効率よく成果を出すことには、より気を配るようになりましたね。
「あいつ副業やってる暇あるんだったら、本業をもっとちゃんとやれよ」と言われたら終わりだと思うので、両方ちゃんとやらないといけないと思っています。
──ある意味、副業をやってることで、自分へのプレッシャーがかかる部分もある訳ですね。
今西氏:
そうですね。ただ、それぐらいやらないと成長しないと思います。人間って、現状に満足したら終わりじゃないですか。だから、自分に刺激を与え続ける環境を作るために、副業をやっているところはあります。
市場の飽和で、マーケティングの重要性が増すゲーム業界
──副業の方もマーケティングのお仕事ということで、マーケティングという分野自体の、需要が大きくなっているところもあるのでしょうか?
今西氏:
それはあると思います。マーケティングの仕事は「お客さまが何を求めているかをきちんと理解し、その求めてる物を適切なタイミング、適切な場所で届けること」、その結果、お客さまに選んでいただいて、ファンになって継続的に使っていただくまでの一連の流れをつくることだと思うんですよね。複数の業界でマーケティングをやることで、そういう感覚はどんどん研ぎ澄まされていますね。
ファッションでもゲームでも、今はお客さんが求めているものをしっかり提供しないと、お客さんは一切リアクションしなくなっているんです。
例えばモバイルゲームの売上は、全世界で5兆円強あり、そのうち1兆円が日本で売上が上がっていると言われております。そういうマーケットでは、市場にゲームがたくさん溢れているので、普通にアプリのゲームを一本出しただけでは、お客さんが全然反応しなくなっているのですね。だから今は、よりニーズに合わせたマーケティングをしなきゃいけない。
専門性が高いマーケティング職は、スタートアップ段階では採用が難しい
今西氏:
ゲームマーケティングの事例でいうと、例えばアニメ版権のゲームがあったとすると、昔はアニメに親和性の高いニコニコ動画に広告を出したり、生放送をすればいいといった風潮があったのですが、今はニコニコ動画以外にも、秋葉原でOOH(※)をやったり、オフラインイベント、深夜のアニメユーザーをターゲットにしたCMなどとマーケティングの全体戦略を考える必要があります。マーケターは、CMやデジタル、OOHなど、1つの分野に詳しいスペシャリストよりも、これら全てを高いレベルで実行することも求められてきています。高レベルのゼネラリストというイメージですね。
※OOH
out of home(アウトオブホームメディア)の略。交通広告、屋外広告、サイン、チラシなどを指す。
今西氏:
一方で、マーケティングは専門職かつ間接部門なので、スタートアップだと採用が難しい部分があります。かといって、よく知らない相手にも頼めないので、ある程度マーケティングの知識を持っている人間のニーズというのは低くないのかな、と最近は思っています。
【編集部より】
株式会社DeNA担当者インタビューvol.2はこちら。
株式会社DeNAに関する、この他の記事はこちら。
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