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レポート:第7回健康経営実践勉強会「働く女性の健康経営」(前編)


女性の健康管理をダイバーシティと経営という視点から考える

2017.12.25

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パートから管理職まで、女性の活躍する場面は増える一方です。しかし、一見普通に見えるその女性が体調面の不安を抱えながら仕事をしていることを、経営者は理解しているでしょうか? そんな働く女性の健康を経営面からサポートするための健康経営®について、株式会社ルネサンス主催のセミナーが2017年11月28日に開催されました。ゲストには産業医でNPO法人健康経営研究会理事長の岡田邦夫氏と丸の内の森レディースクリニック院長を務め、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事でもある宋美玄氏が登壇しました。各登壇者の講演内容や参加者との質疑応答の様子を2回にわたり紹介します。

※「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※「男性」「女性」とは生物学におけるものであり、性的マイノリティー・ジェンダーフリーを排するような意図はありません。

DATA:第7回健康経営実践勉強会「働く女性の健康経営」

【レポート前編】1部:岡田邦夫氏の講演 2部:宋美玄氏の講演
【レポート後編】3部:座りながら出来るヨガの紹介(株式会社ルネサンス)、4部:スマートフォン用アプリ「カラダのキモチ®」の紹介(ドコモ・ヘルスケア株式会社)、5部:質疑応答 日時:2017年11月28日(火)14:00~17:00 場所:株式会社ルネサンス(東京都墨田区) 主催:株式会社ルネサンス 共催:ドコモ・ヘルスケア株式会社 ゲスト:岡田邦夫氏[NPO法人健康経営研究会理事長]、宋美玄(ソンミヒョン)氏[ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事、丸の内の森レディースクリニック院長]

主催者挨拶「ダイバーシティでの女性と男性の“働く”を考える」(ルネサンス・樋口毅氏)

イベントの司会も務めたルネサンスの樋口毅氏

イベントの司会も務めたルネサンスの樋口毅氏

グローバル化が進み、外国の方と働くなどダイバーシティが広がっており、異文化理解が必要とされています。

しかし、会社の中で男性と女性のコミュニケーションはどうなっているのでしょうか。女性の健康や女性の活躍推進と話題になっていますが、男性という立場から見ても、女性の事はわからない。健康のことはもちろん、働き方についてもそうです。そうしたことが会社の中で話題になっていないことにも問題意識を感じていました。

今回は働くということをテーマにしていただき、企業としてどう取り組むか一緒に考えていきたいと思います。

第1部 岡田邦夫氏講演「経営戦略として健康経営を見据える」

NPO法人健康経営研究会理事長岡田邦夫氏

日本の企業が直面している経営課題に少子高齢化や離職による人手不足の問題と、経営責任による損失という問題があります。

企業の人手不足は年々深刻になっており、日本商工会議所の中小企業における人員の過不足状況という調査では、2015年に人員が不足していると答えた企業は50%ほどでしたが、2017年に再度調査した際には60%に増えていました。また、国立社会保障・人口問題研究所によると、15歳~64歳の人口が2060年には現在より約3,000万人減るだろうという試算がなされています。たった40年後の未来です。

良い人材に長く働いて欲しい。どの企業もそう思っているとは思いますが、厚生労働省による平成24年度労働者の健康状況調査にて、職場の人間関係に強い不安・悩み・ストレスを感じると答えた人が全体で41%も存在しました。特に女性だけでみると48%というほぼ半数の方が不安を抱えているという結果になっています。

残業による過労や安全配慮を怠るような経営が原因で従業員から訴訟を起こされることも最近は増えているのだそうです。当然、訴訟を起こされるような企業には人は集まらず、従業員も辞めていくという悪循環を招きます。ひたすら合理化や効率化を求めるだけの過去のやり方は、ワークライフバランスやQOLを重視しダイバーシティを根本にする現代には通用しなくなってきているのです。

働く女性の健康課題

女性の健康というと特に男性の方は「そんなの男の俺がわかるわけがない」と思いがちです。時には女性同士でも、個人差の大きい月経痛(生理痛)のつらさやメンタルヘルス不調は理解してもらえないことがあります。しかし、だからこそ学ぶこと、知ることが第一歩になります。

女性の健康課題とその対応として次の6つを紹介します。
1.月経(生理):生理休暇での対応、就業規則以外で取得上限を設けてはいけない・証明は不要
2.妊活:仕事と家庭の両立を支援するような対応
3.更年期障害:心身の不調・疾病として対応
4.メンタルヘルス不調:うつ病やリストカット等、就業上の措置について検討(女性に限らない)
5.女性間のいじめ問題:職場・上司の対応が不可欠
6.その他:感情労働、経済的危機による認知機能への等

2016年12月からストレスチェック制度が施行されましたが、女性は男性よりもストレス反応が強く、高ストレスと判定された方が多く出ているそうです。

ライターのまとめ:これからの日本企業に必要とされる「健康経営」とは

これらの課題の解消につながり、なおかつ優秀な人材が集まり、経営面においても成果が期待できる画期的な方法が健康経営と言われています。

健康経営とは企業が経営戦略として従業員の健康に配慮することで、労働生産性を高め、企業と従業員がwin-winの関係を構築することだそうです。

勤務中の怪我は労災になりますが、労働環境による日々の不調は見逃されがちです。快適ではないエアコンの温度や湿度といった些細なことが実は生産性を下げる原因になっているのです。

これらは「健康経営オフィス」という考え方になっており、他にもタバコや香水などの不快なにおいを感じないか、椅子の高さが調整できるか、いつも挨拶が交わされているかという具体例が盛り込まれているので参考にしやすいと思いました。(健康経営オフィスレポート(PDF)‐経済産業省)

第2部 宋美玄氏講演「約6兆円の価値が眠る働く女性の健康」

ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事 丸の内の森レディースクリニック院長宋美玄氏

1985年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、働く女性を取り巻く社会環境は大きく変化しています。近年では子宮内膜症や子宮体がんなども増加しており、PMS(月経前症候群)やプレゼンティズム*1も顕在化しました。
(*1 プレゼンティズム:健康問題による生産性低下)

そのような婦人科系疾患(月経随伴症状、乳がん、子宮内膜症等)が与える経済損失は大きく、生産性損失の4.95兆円+医療費1.42兆円を合わせて6.37兆円になると2016年日本医療政策機構の「働く女性の健康増進に関する調査結果」で報告されています。

働く女性の健康を考える上で大事なポイントとして、月経(生理)痛とPMS・不妊・更年期の3つについて考えてみます。

月経痛とPMS

月経(=生理)とは思春期以後、健康な女性に一定の周期で規則的に起こる生理的な子宮出血です。女性ホルモンによって引き起こされます。これらのホルモンのバランスは常に変化しており、それに伴って心身の体調も変化します。
一般に生理後の約1週間は心もからだも元気な状態、それ以外の約3週間は身体に負担がかかっている状態となり、人によってはこの時期に不調が現れます。特に生理前の1~2週間前に現れる不調はPMS(月経前症候群)と呼ばれます。症状には、イライラ・眠気、だるさや気分の落ち込みといったものの他にも、吐き気やめまいがすることもあります。

働く女性の86%がPMSの症状がある(ドコモ・ヘルスケア調べ)、62%がPMSを理由に昇進の辞退を検討・辞退した経験がある(ホルモンケア推進プロジェクト調べ)と回答しており、労働者の36%が生産性を低下させる要因に月経不順、PMS等による不調を挙げ、メンタル面の不調、心臓の不調に次ぐ第3位となっています。(健康日本21推進フォーラム「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」)
また、月経随伴症状と大うつ病はきわめて強い正の相関を有するという結果も出ています。(ドコモ・ヘルスケア調べ)

今でも生理痛・PMSは自己管理として個人的に対処をしている方が多いものです。しかし、働く女性の健康はもはや「個人の事情」ではなく、仕事の生産性、ひいては企業に大きな影響を与える一因として適切に対処をする必要のある経営課題なのです。

具体的な対策としては月経周期と症状の記録・管理の推奨、生活習慣の見直し、病院の受診があります。

仕事と家庭の両立が難しい不妊という課題

不妊とは妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。(日本産科婦人科学会HPより引用)

晩婚化や晩産化によりセックスレスや妊孕性(妊娠のしやすさ)低下といった問題は年々顕著になっており、伴って不妊治療をされる方も増えているそうです。しかし、不妊治療は待ち時間が長い・通院回数が多い」ということが多々あり(病院や治療法によっても異なる)、働く女性にとって不妊治療の通院と仕事の両立はとても難しいものです。

企業に求めるサポートは以下の3つです。
・職場内でのプライバシー保護への配慮
・男性を含むすべての管理職や人事担当者に不妊治療について知ってもらう
治療と仕事が両立しやすい制度設計
例)→年次有給休暇を時間単位で取得できる制度を作り、通院の負担をなくす
治療目的で利用できるフレックスタイムを導入する

不妊治療に関わらず、あらゆる持病の治療や不調時の通院に関してもサポートする体制を整えるべきです。

更年期障害

45~55歳前後の閉経前後において、女性ホルモンの低下が原因で起こる諸症状のうち日常生活に支障をきたす自律神経失調症状や精神症状等を指します。
▼早めに現れる早発症状:のぼせ、発汗、不眠、抑うつ、思考力低下、イライラ、焦燥感、易疲労感、不眠、動悸、不安
▼遅くに現れる遅発症状:高脂血症、耐糖能異常、動脈硬化疾患(心疾患・脳卒中)、骨粗鬆症、認知機能低下、子宮脱、尿失禁、萎縮性膣炎
(女性の活躍を支える女性の健康支援、内閣男女共同参画会議重点方針専門調査会資料より)

更年期障害? と思ったら早めに受診をすることが重要です。他の疾患が隠れている場合もあるため、個人で判断せずに、まずは婦人科で相談しましょう。対症療法以外にも漢方薬やホルモン治療があるので、医師と相談しながら自身にあった治療を見つけましょう。

ライターのまとめ:思いやりのある社会を目指して

宋氏は自身のクリニックで生理痛撲滅運動を実施しているとおっしゃっており、特に印象的だったのが、「月経が必要なのは妊娠したいときだけ。一般に月経は健康の証とされているが、月経が増えることで子宮内膜症などの健康リスクが上がるため、実は月経がないほうが健康的でいられる」という言葉でした。QOLを考えると服薬におけるデメリットを差し置いてもとても画期的な提案ではないでしょうか。

また、最後に宋氏の言葉を紹介します。
「男女ともに、体調不良や病気など『外から見えないもの』は多くあります。 相手を思いやることが大切です。女性に対しては、『体調の変化がある』ということを理解し、相手に寄り添うデリケートな側面もあるため、差別的に扱わないことです。たとえば、『月経なら休めば?』というようなストレートな発言を行わないようにしましょう」

後編へ続きます

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