社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発
「横のコミュニケーション」の活性化に役立つ、社内サークルのススメ
2017.10.13
さまざまな取り組みを通じて「社員に選ばれる会社」を作るポイントを解説する、人事のプロ・永見昌彦氏の連載企画。今回は、社員間のコミュニケーションの活性化に有効な「社内サークル」について解説します。
社員有志によるサークル活動が企業内で活発化
社員数がそれほど多くないスタートアップ企業に限らず、社員有志によるサークル活動を行っている企業は結構多いでしょう。
もともと、気が合う同僚社員と休日に旅行する、フットサルチームを組んで地域大会に出るといったことは以前から多く見られましたし、この記事をご覧になっている方の中には、そういったことを経験された方もいらっしゃるかもしれません。ただ、業務ではない活動に対して会社が何らかのサポートをする、あるいは会社として公認するといった流れは、ここ数年でみられるようになった傾向かと思います。
今回は、企業がこうした活動をサポートする背景や、具体的にどんな施策があるかなどをご紹介します。
社内サークルを企業がサポートする背景
社員数がそれほど多くないときは、お互いの顔もわかるし、それぞれがどういった仕事をしているのか、そもそもどんな性格の人なのかといったことも掌握しやすい環境といえます。しかし、だんだんと社員数が増えてきて規模が大きくなったり、別会社と合併して全く異なる企業文化の方が入ってきたりと、社内環境に大きな変化が生まれやすいのが現代です。
企業の規模が大きくなると、社内のコミュニケーションは、意図的な仕掛けがないと停滞する傾向にあります。組織間に見えない壁ができ、情報・ノウハウ・スキルの共有が進まなくなる一方、企業として体裁を維持していくためのルールが徹底され、お互いの顔が見えにくくなり、信頼関係も生まれにくくなってくるでしょう。そういった状況を打破する施策のひとつとして、社内サークルを導入している企業は増えつつあると実感しています。
そもそも、企業内のコミュニケーションは大きく3つに分類されると思います。
- 縦のコミュニケーション:経営層と社員間
- 横のコミュニケーション:部門内外の同僚間
- 面のコミュニケーション:部門を超えた組織/全社レベル
これまで、「縦のコミュニケーション」に関してはラウンドテーブルミーティング、「面のコミュニケーション」に関してはファミリーデーといった施策をご紹介しました。これらの施策は、両方とも「横のコミュニケーション」にも影響を及ぼすものですが、より「横のコミュニケーション」にフォーカスした施策が、社内サークルとも言えます。
社内サークルの定義や条件
社内サークルに関しては、企業によりますがいくつかサークルとしての定義・条件を行っているところが多いです。例えば以下のようなものです。
- メンバーは5名以上
- メンバーは3つ以上の所属部門で構成
- 活動は業務時間外
- 活動報告レポートを年に1回提出
- 使用経費の内訳を提示
こういった定義・条件をクリアしているサークルを「社内公認サークル」として、そのサークルに対する一定額の活動補助金を支給している企業があり、そうした企業では、金額は実費の40%支給(金額上限付)、一律で5万円など、企業の環境に応じた設計を行っているようです。
単なる食事会や飲み会しか行っていない場合は、社内サークルではないという扱いです。そういった食事会に会社が補助するケースもありますが(これは別の機会に紹介します)、社内サークルの場合は、あくまでも何らかの活動を行っており、その活動に対する費用補助を行うべきでしょう。
私が昨年8月まで在籍していた会社でも、活動補助金を支給する条件としては、
- 使用経費の内訳を提示すること
- 飲食代は補助対象外
という規定がありました。社内にはゴルフサークル、自動車部、フットサルクラブ、野球試合を観戦する会、ハイキング部というようにさまざまなサークルが存在していました。そこでの活動をきっかけにお互いを知り、仕事上でも円滑なコミュニケーションがはかれるようになったこともありました。社内サークルは「横のコミュニケーション」を生み出すのはもちろんですが、それだけにとどまらず「面のコミュニケーション」にもつながっていきます。
サークル活動が、社内外での宣伝につながる
こういった社内サークルは、社内外での宣伝にもなります。
まず、社内においては活動内容の紹介や、何らかの試合に参戦するサークルの場合は試合での活躍の様子などを社内報に掲載するケースがあります。これは、単なる情報共有よりも、上記の「横のコミュニケーション」のさらなる拡散という狙いもあります。
一方、社外に対しては、採用情報や自社メディアに掲載することによって、企業としてのイメージや働きやすさをアピールするためのトピックとしてあげられます。実際、各社の新卒向け就職サイトや自社サイトを拝見すると、高い確率で社内サークルについて言及している企業が見受けられます。
企業が社内サークルを公認するのは、社内におけるコミュニケーションを活性化させることで、組織の見えない壁にとらわれることなく、業務を行い、事業をより大きく推進させるという点が大きいでしょう。
「何をするのかよりも、誰と仕事をするのか」という点を重視している方であれば、こういった社内サークルに参加して、趣味や好きなことを通してさらに横のつながりを拡げてみてもよいでしょう。あるいは、人事担当者ならば、こういったものを経営層に提言して仕組みをつくってみるのもよいでしょう。
執筆者紹介
永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。
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