「日本一オーラがない監督」中竹竜二氏に聞く
メンバー全員の意識を目標に向かわせるには?
2015.09.14
日本ラグビーフットボール協会のコーティングディレクターであり、株式会社TEAMBOX代表を務める中竹竜二氏に、人事の悩みを答えてもらうシリーズ。前回に引き続き、今回も中竹さんに質問をぶつけてみました。
Aさんは数人のチームを率いていますが、チームをゴールに導くための統率力がないことに悩んでいます。メンバーの意識を目標に向かわせるには、Aさんにはどのようなアドバイスをすれば良いのでしょうか?
メンバーを目標に向かわせる3つのポイント
中竹です。多くのリーダーたちは、組織を率いていくことに不安を抱えています。私自身、たくさんの相談を受けるのですが、実は、不安があること自体は全く問題ありません。むしろ、不安の全くない自信満々のリーダーの方が、落とし穴にハマる可能性は高いからです。
では、Aさんのような場合、どうすればいいのか?
考えなければならない問題は、なぜ、あなたはその不安を抱いているのか?また、その不安は、具体的に何なのか?ということです。
「メンバーを意識高く目標に向かわせる」
これは、実は簡単なように聞こえて、とても難しいのです。
今日は、この問題を3つに分けて考えてみましょう。
目標自体が本当に適切なものなのか?
1つは、目標自体は果たして本当に適切なのかどうかです。
まず、「リーダーであるあなた自身が、その目標に本当にワクワクしているのか?」さらに深く考えると、「その目標を目指す意義が本当にあるのか?」この両方の質問に、自信をもってYES!と答えられれば、ファーストステップをクリアしたことになります。
しかしながら、もし「NO!」もしくは「?」と悩んでしまうのならば、メンバーが意識高く目標に向かうはずがありません。その場合は、目標自体をしっかりと見つめ直してください。目標自体の質が低いと、いくらメンバーにやる気があっても、彼らが持っている能力が引き出されず、成果はあがりません。適切な目標を設定するためのノウハウはまた別の機会にお伝えします。
目標がメンバーに共有されているか
2つ目は、チームのメンバーがきちんと目標を共有しているか。当然、リーダーは常に目標を意識して行動しますが、意外にメンバーたちは責任を背負っていないため、組織の目標を忘れがちです。目の前の役割と業務をこなすだけに陥ってしまい、無目的に仕事をしていることが多いのです。
また、実はリーダーや上層部もチームの具体的な目標をきちんと伝えていない場合が多く、目標自体が曖昧なことも少なくありません。
組織のメンバー全員が目標を共有している状態というのは、意外にハードルが高いものです。
「チームの今の目標は何ですか?」
この質問に、メンバー全員が一言で答えらえるようになることが理想です。日頃から、組織の目標についてリーダーが問いかけたり、メンバー同士が目標について語り合ったりする場作りを心がけましょう。
メンバーが目標に対して心から共感しているか
3つ目のステップとして、大切なのはメンバーが目標に心から共感しているか。私が提唱しているチームビルディングでは、「目標の共有」と「目標の共感」は異なる要素として取り扱っています。
いくらメンバー全員が目標を一言で言えたとしても、その目標に心から共感していなければ、組織としての力は発揮されません。
例えば、スポーツチームで選手たち全員が「目標はインターハイ優勝です」と答えたとしても、その選手たちが「とはいうものの、去年一回戦負けだったし、今年は戦力落ちるし、いきなり優勝は無理だよなあ」とつぶやく選手らがいるチームがいい戦績を残すはずがありません。
この場面での問題は、目標共有ではなく、目標共感なのです。
目標に対する共感度を高める方法とは
では、メンバーの目標に対する共感度をどのように上げていけばいいのか?
もちろん簡単ではありませんが、リーダーのコミュニケーションスキルで共感度を向上させることは可能です。
例えば、目標を達成した先にあるメリットや達成感を意識させること。また、目標を目指すことの意義を再確認。その他、自分たちの存在意義の顕在化など。こうした事項を対話によって引き出すことで、メンバーの共感度は高まります。
目の前のことだけに集中しがちなメンバーたちに、できるかぎり視野を広げさせ、リーダーはメンバーたちに物語(ストーリー)を見せてあげてください。そうすれば、自ずとメンバーたちは意識高く、目標に向かうでしょう。ぜひ、がんばってください。
執筆者紹介
中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)(株式会社TEAMBOX代表取締役) 1973年、福岡県生まれ。早稲田大学人間科学卒業後、単身渡英。レスタ―大学大学院社会学部修了。三菱総合研究所でコンサルティングに従事した後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表監督を務め、「監督の指示に従うのでは無く、自ら考え判断できる選手を育くむ」という自律支援型の指導法でとして多くの実績を残す。日本で初めて「フォロワーシップ論」を展開したひとり。早稲田大を2年連続で全国大学選手権優勝に導きながらも、自らを「日本一オーラがない監督」と称する。
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