残業ゼロを目指して
いまメールチェックしていて「定時帰宅コース」に乗れているのか?
2017.05.11
私は、1日の起きているすべての時間の作業記録を残して、もう10年弱になります。
こんなことを言うとたいていの人に気味悪く思われるか、あるいは、「さぞ時間を有効活用できているんでしょう!」といたずらに期待されてしまうようです。
そしてすぐPDCAが話題に上ります。つまり、記録した行動をもとにして、ムダな時間、もっと効率化できる時間を反省し、それを活かして時短を追求すれば、どこまでできるのか、といった展開が期待されるのでしょう。
これは確かに分かりやすいとらえ方で、行動ログを綿密に残していると言えば、そのように期待されるのも理解できるのですが、実際に私が行動記録を活用しているのは、そういったアプローチではないのです。
お金なら、このアプローチでもいいでしょう。
想像するほど万能ではないと思いますが、確かにお金であれば、ムダと思える支出を削ることで、もっと有効に使うなり、貯蓄するなりといったポジティブな変化を引き起こすることができます。
が、時間でそれをするのは難しい。というか事実上無理なのです。
時間はお金と違って貯蓄できない
つぶさに記録を観察すれば、行動記録からもたしかに「ムダと思える時間」を見つけ出すことはできるでしょう。
問題はしかし、その代わりに有意義な行動を取ることができるかどうか、です。
ある時間の使い方が有意義であるかムダだったかというのは、仕事中であれば生産性に寄与しているかどうかで判断することができます。少なくともとりあえずはそうするしかないでしょう。
ですが、休憩したり、脱線したりといった「ムダ」は、たいてい仕事をして疲れているからか、仕事自体をストレスに感じているから生じるものです。
そういう時に「ムダなこと」を仮に避けられたとしても、代わりに別の「ムダなこと」をしてしまっては、意味がありません。
では「ムダなこと」を避けて、とことん仕事だけに突き進めるかといえば、そんな事はないのです。お金と違うのはここです。時間は常に消費をし続けなければならないものであるため、ムダに走りやすい衝動を抑制すると「同時に」有意義な行動を取らないとそれこそ「ムダ」になってしまうので、お金よりずっと、衝動を抑えることの意味をつかむ上でのストレスが大きいのです。
それに、いまムダな行動を避けられたから、20分をストックしておいて、終電まえに20分を巻き戻す、などといったこともできないのです。これができるのがお金のいいところです。
消費パターンを見極める
ではどうしたらいいのか?
時間はお金と違うので、なににどれだけ使ったかの、その量ばかりを見るのではなく、「行動ルート」のチェックポイントとして扱うことを提案します。
たとえば私は、朝10時の段階で「メールチェック」というポイントを通っていたら、最終作業は19時台になってしまうという「ルート」を何度か通っています。これは、
メールチェック→関連業務の処理→メール返信にともなう連続作業→昼食→原稿執筆→Skypeミーティング→疲労休憩→連載原稿着手(遅々として進まず)→疲労休憩→原稿→休憩……
といった「流れ」がメールチェックの段階で生じてしまいがちであるため、業務全体の効率が下がってしまうせいです。
これに対して単純ながら、少々心理的にストレスであっても、10時そうそうに連載原稿に着手すると
連載原稿→書籍原稿→昼食→Skypeミーティング→休憩→メールチェック→関連業務処理→業務終了
という流れに持ち込むことができ、18時台で全作業が終わるという「ルート」を通ることができるのです。
もちろんほかにも、家族から用事を言いつけられたとか、子どもが熱を出したなど、様々な「ルート」を辿っていて、その記録が残っています。
いつも思うのが、1日をスムーズに終えられるルートもあれば、ひどく険しくなってしまうルートもあって、その分岐点ともいうべき時間帯は、必ずといっていいくらい午前中にあるということです。
午前中にメールチェックするのは、いまの私に言わせれば「論外」ですが、たとえ「原稿を書く」としても、連載から始めるか、書籍原稿から始めるか、はたまたブログから書き出すかによって、「ルート」がかなり違ってきます。そして、それぞれの「ルート」には典型的なパターンが必ず現れるのです。
もちろんほとんどの人の業務内容は、私の仕事とは違うでしょう。でも私がいいたいのは、どんな仕事であっても、仕事Aから始めるか、仕事Bから始めるか、仕事Cから始めるかを判断しなければならないはずであり、その判断次第では、仕事の総量が同じであっても、帰宅時間が1時間くらいは変化しているものだという点なのです。
だから、絶対に早めに帰りたいと思う人なら、「現在のルートは21時コースなのか、22時コースなのか」を知っておいて損にはならないはずです。
連載コラム〈残業ゼロを目指して〉
執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
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