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「ポスト働き方改革時代の学び方」イベントレポート


ポスト働き方改革時代をどう生きる? メルカリ唐澤俊輔氏×グロービス井上陽介氏対談

2018.10.30

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「働き方改革」や「人生100年時代」など、企業や働き手を取り巻く社会環境が、刻一刻と変化する現在。企業が魅力的な人材を確保するためには、人事部門の活躍が不可欠になりつつある。

今回、株式会社グロービスが6月22日に開催した企業経営者・人事担当者向けのイベント「ポスト働き方改革時代の学び方」から、株式会社メルカリ執行役員・唐澤俊輔氏が、急成長するメルカリを支える人事施策・社内制度について、グロービス井上陽介氏と対談形式で語った内容を紹介する。

唐澤 俊輔氏

181030_report_01大学卒業後、日本マクドナルドに入社。マーケティング部長や社長室長を歴任し、チェンジ・エージェントとして組織内部からの変革を推進。全社のV字回復を果たす。

2017年9月よりメルカリへ移り、4月より執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長として、人や組織の観点から急成長するメルカリのさらなる拡大やグローバル化を推進している。グロービス経営大学院経営学修士(MBA)修了。

井上 陽介氏

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消費財メーカーに従事後、グロービスにて企業向け人材コンサルティング、名古屋オフィス新規開設リーダー、法人部門マネジング・ディレクターを経て、デジタル・テクノロジーで人材育成にイノベーションを興すことを目的としたグロービス・デジタル・プラットフォーム部門を立ち上げ責任者として組織をリードする。

上場はあくまで通過点。その先にある目標を見据える

井上:
今週も上場が大きな話題になりましたが、会社としてのあり方や仕組みが先進的でユニークな存在ですよね。このあたりのことも掘り下げながら質問させていただければと思います。まずは上場おめでとうございます。

唐澤:
ありがとうございます。これからが本番ですね。

井上:
上場の際の社内の雰囲気はどうでしたか?

唐澤:
前から取り組んでいることなので、プロジェクトメンバーは「一段落だな」という雰囲気で、ただ経営側からすれば「ここ、ゴールじゃないから」という話なので、これから社会の公器としてどうやって社会に貢献していけるかを真剣に考えなきゃいけない。

今日ここに来る前も、いつも金曜日は2時から2時半で全社会議してるんですけど、そこでも「今週IPOしたねー」みたいな話もなく。「来期の目標これだから」という話と、「こんだけ成長すればこれが達成できるから」みたいな話を淡々としてきましたね。

常に変わり続けているからこそ、「負債化した制度」がない

井上:
あまり浮かれることなく着実に前に進んでいる、ということですね。そういった中で、今日は働き方改革というテーマなんですけども、例えばメルカリさんで、これまでに働き方改革を意識した施策というのは、何かありますか? 時間管理などについて、お聞きできればと思うのですが。

唐澤:
僕、メルカリの社内で「働き方改革」って言葉を1回も聞いたことないんですよね。改革する必要がないというか、自分たちのやりたいようにやればいいし、そのためにいままでのことを否定する必要もないんですよ。メルカリでは何かを変えることが普通で、常に変え続けているので、「いまから改革します」という宣言にあまり意味がない。

井上:
常に変わり続けているし、そういう意味ではある種、「負債化したような制度」というのがあまりない、ということなんでしょうか。

唐澤:
そうですね。バリューに常に沿ってきているので、例えば働き方、Go Boldに働ける環境をつくろうよって会社のバリューに(制度を)全部寄せています。

例えば産休とか育休については手厚くサポートしていますね。社員が産休の際に子どもを保育園に入れたいとなった場合に、「認可保育園に全部落ちてしまいました」というケースがあって、そういった場合、会社に戻れないことがほとんどなんですけど、「それっておかしいよね」という話になって。それで無認可保育園にしか入れなかったときの(認可保育園の保育料との)ギャップ分の費用は会社が全部出す制度になっています。

でも、「社会の要請があったからサポートしましょう」とかそういうことをしたいわけではなくて、あくまでメルカリでGo Boldに働くために戻ってきてほしいからその制度をつくる、そういう発想です。

井上:
カルチャーに根差した意思決定を常にしていく。

唐澤:
はい、そうですね。そういう文化のためにそういった制度があるっていうことで。

「進んでいる」制度を全て取り入れている訳ではない

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井上:
メルカリさんには驚くべき制度もかなりありますよね?

唐澤:
あると思いますね。保育園の制度は僕も入社したときは驚きましたし、ただ一方で、世の中で「進んでいる」と言われてるものを全部取り入れているのかといえばそうでもなくて。

例えば、在宅勤務は基本的に認めてないんですよ。エンジニアとか全然家でもコードかけるので「家でいいんだけど」という声も出ることはありますが、「顔を合わせてちょっと話す」とかそこのコミュニケーションによる効率や効果って絶対あるよねって信じてるので、それは曲げないことにしています。

フレックスなので、コアタイムの12時から16時の間だけは必ず来ようというふうに制度として決めていて、ただそうなると12時に出社するエンジニアも多く、12時に「おはようございまーす」って朝会を始めるので、異業種から転職してすぐはびっくりしましたね、「いや昼だろ」と(笑)。

ミッション、バリューに共感できる人だけを採用。制度への納得感も高まる

井上:
在宅ワーク・リモートワークの禁止は、エンジニアの納得感をもって受け止められているんでしょうか。「他の会社だと普通にリモートって行われているよね」「メルカリだとリモートってできないんだよね」といった声はありませんか?

唐澤:
やっぱり「ダメですか?」って声は正直ありますよね。もちろん雪だとか天候の悪い日はOKですし、マネージャーが個別に判断はしています。ただ、採用の段階で「ミッション、バリューに共感する人しか採らない」というところですごく絞っているので、そうすると、僕たちのバリューは「All for One」だから、「1人だけ特別扱いはしない」ということは、共感してもらえる。そういう前提はありますね。

井上:
ミッション、バリューに共感する人しか採用しない。

唐澤:
はい。僕らは採用としてはリファラル採用、友人紹介をすごく重視していて、7割くらいは友人紹介で入社いただいてます。それはミッション、バリュー、カルチャーフィットを大事にしてるので。メンバーが「この友だちいいよ」っていう人は絶対いいので、そこは結構上手くいってると思っています。

個人の評価に基づき、適切な給与を決める「無制限昇給制度」

井上:
なるほど。他のメルカリさんの制度としては、「無制限昇給制度」がすごいなと思っていて。ただ、実際運用するのは大変だろうなと思うんですね。

我々も去年から新卒採用を始めていて、当社は一律の年収水準で内定承諾書にサインしてもらってるんですけど、一方では、個別に社員を見なければいけないとも思っているんですね。ただ、実際に運用となるとかなり大変ですよね。メルカリさんはそのバランスの中でどういう判断で進めているんですか?

唐澤:
基本的に、人事は現場でやることが大事だと思っているので、エンジニアリングのマネージャーやプロダクトのマネージャーがちゃんと評価できるようにすることと、エンジニアの組織の中に、その評価をサポートするエンジニアリング・オペレーションズというチームをつくったりして、仕組みとして現場が適切に評価できる仕組みをサポートできるようにしてます。

他には、新卒はインターンに極力来てもらうようにしていて、インターンで来てもらえば半年とか1年間様子を見れますよね。そのインターンの中で成長したら、1年前のオファーの段階よりも給料を上げて入社してもらえればいいと思っていて、そういうケースは多いですね。

井上:
インターンの過程で、ある程度実力値も見える?

唐澤:
成長してくれることもよくありますよね。「1年で成長してるのに同じ給与で入れっておかしいよね」という理屈で給料上げてますね。

井上:
ちゃんと「個」を見ていく。我々が十分できてない側面もあるので、非常に勉強になります。

「個人個人を丁寧に見る」ことが「人を大切にする」会社の姿勢につながる

唐澤:
まぁ、でも難しいこともありますよね。(無制限昇給制度は)原資を持たずに昇給の条件も設けないって制度なんですけど、評価が甘い上司も辛い上司も出てくる可能性はあるんですね。一緒にやっててもバンバン給与上げちゃう人も出てくるかもしれない。

それは当然よろしくないので、キャリブレーションの場で、時間をかけた会議をやってます。簡単にいうとVPが1人いたらマネージャーが10人います、その下に100人います、この11人で100人分を全部リストにして2日間くらい合宿して、この人の給与これで本当にいいの、と全部見ることをやっています。

井上:
それは年に1度ですか?

唐澤:
半年に1回です。四半期に1回評価して、給与改定が半年に1回ですね。立場上、全部の会議に入るので、1週間ずーっと人の給与を見てるみたいなこともありますね。すごいコストがかかってるなと思いつつ、人を大切にする会社と言い切ってるので、そこは逃げずに向き合っています

井上:
日本の会社には「人を大切にする」と謳ってる会社はたくさんありますよね。会場のみなさんの会社にもそういったところは多いと思うんですけども、一方でメルカリさんのように「個人個人を丁寧に見る」という意味で「人を大切にする」と謳っている会社は実は非常に新しいというか、先進性があるんじゃないかなと思いますね。

会社としての軸を持つことが重要

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井上:
改めて、日本マクドナルドとメルカリ、2つの会社を振り返って、ミッション・バリューというのは大切なものであると思いますか?

唐澤:
そうですね。ミッション、バリューとか、そういう軸を持つことってすごく大事だと思いますね。メルカリで特徴的なのは、バリューを3つ(「Go Bold – 大胆にやろう」、「All for One – 全ては成功のために」、「Be Professional – プロフェッショナルであれ」)に絞っていて、その上でなかでも「Go Bold」が大事と優先度をちゃんとつけている。それが僕はいいなと思っていて、大企業になればなるほど誰も文句が言えない素晴らしいものが出来上がってしまいがちなんですよね。

内容は素晴らしいんですけど、「それ全部できたら完璧な人間だよね」みたいなものがバリューとして出来上がってしまうんですよ。でも、そのバリュー同士がぶつかること、当然相反することはあるので、「これ全部できないよね」ということに対して、ちゃんと優先順位をつけてあげるっていうのは大事だなと思いますね。

井上:
これはでも、耳が痛い話かもしれませんね。バリューレベルの話って、基本的に良いことしか書いてないんですよね。コンプライアンス的にもいいことだし、事業モデルをつくるっていう意味でもいいことなんだけど、「Go Bold」が一番重要だと分かっていれば、社員の皆さんの判断軸ってかなり明確になりますよね

唐澤:
判断軸でやらないとバリューの意味がないので、これ仕上げればいいんだって渡してあげる、そしたら権限委譲で任せてもブレないですよね。

社内の見えない「カルチャー」を重視

井上:
人事部門の名前を「People & Culture」と決めたのは唐澤さんが中心だったんですか?

唐澤:
はい。人事を任せるからと言ってもらって、名前どうしようかなと思ったんですけど「HR(Human Resources)」、人をリソースって言うのもなんか違うんだよなとモヤっとした感覚があったんですよね。Googleが人事部門を「People & Operations」と名付けていて、そのあたりを参考にしました。

井上:
メルカリさんの「People & Culture」というネーミングで、「これがメルカリらしい」というものはありますか?

唐澤:
やっぱりメルカリは「カルチャー」が重要なんです。カルチャーってなんとなくそこにある、言語化されていないものだったりするんですけど、いまこれを言語化するかどうか議論してて、言語化するとそれだけがカルチャーということになっちゃって、見えないものがなくなっていく怖さもありつつ。そこはでもNetflixであるとか、上手にやってる会社もあったりするので、やってみようかなと思い始めているところですね。

今後は「現場での育成」に注力

井上:
その中で今日は「働き方改革とその先の人づくり」というところにテーマを置いているので、メルカリでいまされていることと、これからしていきたいと思っていること。先程の話のなかでデータ・ドリブンと人材育成、もしかするとこの中だと人材マネジメントにつながることかなと思うんですけど。

唐澤:
メルカリでは、育成はほとんどいままでやれていなかったと思っています。マネージャーだったらマネージャーができる人を採る、みたいな形でプロフェッショナルを採用して組織をつくってきたので、最近、内部登用でマネージャーになるとか、リーダー、VEPになる人が出てきているので、そういうことも教えていかなきゃいけないと思っています。

重要なのは現場で人を育てることなんですよね。だから人事があれこれやれというよりは、いろいろサポートはしますけど、結局「育てられる人を育てる」ことが大事なので、そこをどうやってやるかといういうことにフォーカスをしていますね。すべては現場のマネージャー中心。

「データ・ドリブン」と言ってるのもマネージャーのいろんなデータを取ったときに、「こういう人はこういう育成をして成果がこう上がるよね」といったデータが見えてきたらそれを育成に応用するイメージです。

メルカリを「最強の組織の会社」にすることが目標

井上:
なるほど。現在、まさにチャレンジしてることだと思うんですけど、これから5年10年、かなり長期のスパンで見たときに、どういうチャレンジをしていきたいと思っていますか。

唐澤:
いまはとにかく、メルカリを「最強の組織の会社」にしたいということしか思っていないですね。それが5年なのか10年なのか3年なのか分からないですけど、Googleみたいな会社にしたいと思っています。

それは「テクノロジーで世界を変えるプラットフォーマーである」という事業としての側面と同時に、Googleが人事・組織の面で新しい仕組みを入れたりしたら、みんなベンチマークするし、真似するじゃないですか。それが僕は楽しいと思ってて。そういうベンチマークされる会社にメルカリがなれば、次のスタートアップがそれを目指して伸びていったりだとか、僕らが支援したりだとかできるので、そういう存在になりたい。

井上:
スタートアップ界隈の、それ以外のも希望になっているんですよね。日本の新しい産業をつくっていくって希望だと思います。その中でロールモデルとしてさらなる成長をして世界に、そういった展開をつくっていただくことが大きなインパクトになると思います。

唐澤:
そういう責任があるかなって思いつつ、まだまだ踏まれれば潰れちゃうようなサイズ感ですので、そこは責任をもってがんばりたいです。

個人の成長が組織、会社を成長させる

井上:
では最後に皆さんにメッセージありましたら。

唐澤:
言うまでもなく人が組織をつくり、組織が会社をつくっていく、そこから事業をつくっていく話なので、やっぱり人1人ひとりが大事ですし、個人の成長が組織を成長させる、会社を成長させるっていうことを僕はずっと信じています。そういう組織をメルカリはもっともっとつくっていかなきゃならないし、その先頭を僕らが走れるかわからないですけど、精一杯そこを目指してがんばりたいと思います。

井上:
ありがとうございました。

【編集部より】
株式会社メルカリに関する記事はこちら。

働き方改革に関する記事はこちら。

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