若者の雇用に関わる法改正
青少年雇用促進法における企業側の注意点について
2015.11.30
2015年10月から「青少年の雇用の促進等に関する法律」が施行されている。その背景には、若年層の離職率の高さや、非正規社員の増加などがある。近年、これらが問題視されるようになったことで、若者の雇用の促進、定着を図るために、勤労青少年福祉法等の一部改正が行われたのだ。少子化が進む中で、優秀な新卒人材を確保したい企業はどのような点に注意すればよいか、労働法のプロ、社労士の郡司果林氏に話をうかがった。
青少年雇用促進法とは
(1)法改正により、新卒の求人を行う全ての企業は幅広い情報提供が努力義務となった。厚生労働省の指針によれば、労働条件等を法改正前よりも細かく明示することが求められている。たとえば、賃金の総額だけでなくその内訳である手当の部分に至るまで、より詳細に示すことになる。
また、応募者等からの求めに応じて(ア)募集・採用に関する状況、(イ)労働時間等に関する状況、(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況の3類型ごとに1つ以上の情報提供が義務化される。応募者から問い合わせがあれば、企業は従業員の労働時間の状況などの情報を提供しなければならなくなる(2016年3月より)。
(2)ハローワークは、一定の労働関係法令違反をした企業からの求人申し込みを拒否できるようになった。求人不受理の対象となる法違反は、労働基準法違反で繰り返しの是正勧告・または送検レベルのものや、男女雇用機会均等法、育児介護休業法違反で企業名公表に該当するものという基準が検討されている。
(3)厚生労働省は、若者の雇用管理状況が優良な中小企業を認定する制度を新設し、労働局で申請を受け付けている。認定企業は新卒応援ハローワーク等で積極的にPRされるほか、認定企業を紹介するポータルサイトの公開や、認定企業限定の就職面接会なども計画されている。ハローワークに求人を出していない企業も取得が可能で、認定マークの使用等も自由に行うことができる。
企業側の注意点
ハローワークのほか、民間の求人メディアでも、(1)の情報公開が義務付けられる。提供した情報と実態があまりにもかけ離れている場合は、ハローワークからの指導や監査が入ることもあるという。近年は、法違反等の情報や不誠実な対応があれば、すぐに若者同士のSNSであっという間に共有されてしまうというリスクもある。法令の遵守は当然のこととして、積極的かつ誠実な情報提供が望ましいことは、言うまでもない。
厚生労働大臣の認定取得をすることで、優良企業としてのPRとなる効果が期待できる。応募者の視点に立てば、「育休取得率75%以上」「有休取得率70%以上」「過去3年間に新卒の内定取り消しを行っていない」など、具体的な数値として国のお墨付きがあることが分かるのは、大きな安心材料と言えるだろう。
労働契約に際しては、面接時の口頭での確認だけでなく、労働条件通知書を交付することも重要である。法改正以前より、企業には労働条件通知書の交付が義務づけられているが、実際には交付されていない事例が多いことから、今回の指針でも改めて示されている。労働条件通知書が無いことにより、従業員が「求人票の内容=労働契約内容」と誤認するトラブルも数多くみられる。
求人票での情報公開に加え、詳細を労働条件通知書に明文化し、労働契約を明確にすることが信頼関係につながる。その信頼関係が不要なトラブルを予防し、従業員の定着率の向上にも良い影響を及ぼすに違いない。
執筆者紹介
郡司果林(ぐんじ・かりん)(社会保険労務士) office role代表、第1種衛生管理者。日本大学卒業後にIT企業のSEとなるが、過酷な労働環境に疑問を持ち、社会保険労務士の資格を取得して外資系IT企業の人事担当に転職。10年あまり人事担当として、社内の規程整備、衛生委員会の構築運営、メンタルヘルスケア対応等を行ってきた。現在は独立し、労務相談実績1500件を超える。
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