社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発
社費留学(MBA取得)や大学院派遣。知っておきたい企業の現状
2018.01.12
社費による大学院留学制度は以前から存在していましたが、制度の内容はだいぶ変わってきています。一時期、下火になり廃止された大学院への留学制度も、制度内容を変更して継続させるケースや、逆に、今まで存在しなかったものの、新たに制定する会社も存在しています。社費による留学制度の特徴や、そういった留学にまつわる企業の動きについて、今回は取り上げたいと思います。
社費による留学制度の今
社費による大学院への派遣といって、真っ先にイメージするのは「海外のMBA大学院への社費による留学」ではないかと思います。大手の日本企業では、何らかの制度を持っているところが多いのではないでしょうか。かつては留学のための渡航費・学費の補助だけではなく、場合によっては留学期間中の生活費の支給あるいは有給扱いといった「大盤振る舞い」を行う制度も存在したようです。イメージとしては、「大学院で学位をとるのが業務である」といったところでしょうか。今でも、そういった制度を維持している会社もあるようですが、近年では、「留学期間中は休職扱いにする」というケースが多いようです。また、制度自体を廃止したところもあります。理由としては、主に以下の2つの要素が挙げられます。
- 学位を取得してからすぐに退職するケースがある
- 完全に業務から2年離れたMBA取得者を、企業内でうまく活用できない
海外でMBAを取得する中で、自分自身のキャリアを見直すきっかけを得たり、他国から来ている方々に多くの影響を受けたりすることによって、派遣元の会社に対して疑問を持つということは珍しいケースではなかったようです。「大学院卒業後、一定期間内に退職した場合は学費を返還させるということを留学前に念書として取る」という手法は、帰国直後の退職を防ぐという意味では有効なのかもしれません。
社費による留学という投資を再検討している企業も
また、会社側が「高額な投資を一人の社員に行う割に、その後の社内での活躍が期待ほどではなかった」と判断し、制度そのものを廃止するケースもあります。今では、社費による留学やMBA取得以外にも、企業における人材育成のために有効な手法がかなり増えてきていることが、その判断の背景にはあります。
本来必要とされているのは、企業自身がいろいろな方法を組み合わせて、目的に則した人材育成を行うことであるため、大学院にそのすべての役割が担えるのかという点は、検討の余地があります。
業務と並行した社費留学が増えている
最近は国内でも、MBAに限らず、平日の夜や週末に1~2年通うことで学位がとれる大学院が増えてきており、そういった大学院の学費を会社負担にするケースも増加しています。私が以前在籍していた企業でも、特定の大学院に限定した社員派遣制度を設けていました。「学費は標準在籍期間の2年間のみ支給。卒業後3年以内に退職した場合、学費は全額返還」という念書にサインをした上での「留学」でした。
こういった場合、社員は通常業務と大学院における勉学の両方を行うことになるので、かなり忙しい状況になります。しかし、休職せずに大学院に在籍することができるため、生活面は全く支障がないうえ、たいていは自宅から通うため家族の負担は海外留学よりはかなり少ないと言えるでしょう。さらに、SBI大学院大学や英国国立ウェールズ大学経営大学院などのように、オンライン上で受講できる大学院も既に多くの卒業生を輩出しており、「通学すらしなくてもよい」という選択肢も検討できるようになりました。一定期間のスクーリング授業や学内SNSなどのオンラインツールもあるため、在学生同士のネットワーク形成も十分に可能となってきています。
大学院の単科コースに社員を派遣するケースも
大学院で学位の取得を目的とするのではなく、単科コースに社員を派遣させるケースは、近年増加しています。大学院の授業は1科目あたり3ヶ月~6ヶ月くらいの期間をかけて行われるため、それぞれのテーマにおけるフレームワークを知るだけではなく、それを使ったケーススタディにもじっくり取り組むことによって、確実に知識を習得することができます。
会社で行う研修でもそういったことは扱いますが、1日~2日の研修の場合、どうしても簡易的になってしまうケースは否めません。会社にとっては、研修を受講することや学位をとることは単なる手段にすぎず、目的ではありません。本当の目的は、受講して得たことを使って業務に活かし成果をあげることです。とりあえず大学院に派遣しておけば、モチベーションもアップして会社に貢献もしてくれるだろう……といった考えは、通用しなくなってきています。
会社による大学院への派遣は、現在でも一定の役割や価値を持っています。ただし、それによって期待する効果については、よく検討し、場合によっては導入した制度を定期的に見直すことも考慮したほうがよいでしょう。
執筆者紹介
永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?