レポート:第7回健康経営実践勉強会「働く女性の健康経営」(後編)
働く女性の健康に必要な共通言語を探れ
2017.12.26
この記事は2017年11月28日に開催された「働く女性の健康経営」のレポートの後編となります。前編では産業医でNPO法人健康経営研究会理事長の岡田邦夫氏と、丸の内の森レディースクリニック院長を務め、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事でもある宋美玄氏の講演内容を紹介しました。後編は岡田氏・宋氏と来場者との間で行われた質疑応答の様子を中心に紹介します【写真:来場者からの鋭い質問に回答する宋美玄氏(左)と岡田邦夫氏(右)】。
レポート前編はこちら→「女性の健康管理をダイバーシティと経営という視点から考える」
質疑応答
休憩時に来場者から集められた質問をもとに、宋氏と岡田氏が対談形式で回答する時間が設けられました。司会はルネサンス株式会社の樋口毅氏。
質問:セミナー等に「女性の~」とタイトルを付けると反発がきます。どうしたらいいですか?
岡田氏「ターゲットを絞り、趣旨を理解してもらうようにすればいいのではないでしょうか。病気に関する講演会でも、病名をそのままタイトルにするだけでは人は来ないのと同じことです」
宋氏「最近ではジェンダーフリーを掲げる会社が嫌がるとか、対象としている性別の方がセミナーに来てくれないという相談がきます。だから私の場合は今回、女性の気持ちを分かってほしい! とは言わず、女性の生産性損失という視点で、お金に換算して説明しました。分かってもらうためのツール(として)」
樋口毅氏(司会)「女性の身体のことを男性にただ分かって! と伝えるよりも、経済的な価値といった共通の言語で伝えれば理解してもらえるかもしれない。これは大きなヒントなのではないでしょうか」
また、宋氏はLGBTやジェンダーフリーについても言及しました。
宋氏「ジェンダーフリーに関しても、女性だからといって妊娠しなければいけないわけでもないし、生理も(同じように)あるわけでもない。(LGBTに関して言えば)心と体も別ということもある。アメリカで月経カップという生理用品を作っている会社の人が言ってましたが、『女性を解放!』なんて言うと反発が来る。でも、『月経のあるすべての人を自由に!』みたいな言い方にすると反応がいい。心が男性で(性転換)手術はしたけど子宮は残ってる人とかもいるので、そういう人は自分も対象だなと思えるし、生理がなければ自分には関係ないなって分かる。表現の問題だと思います。今回は『女性』と冠したセミナーでしたが、その辺りはジェンダーフリーと相反するものではないので、模索のしようがあるのかなと思いました」
質問:宋先生のクリニックで多い悩みはなんですか?
宋氏「生理痛ですね。私自身SNSで発信していたこともあって、生理痛に関する世間の関心がすごく大きいのを感じます。はじめは病気としてではなく生理痛の痛さ自慢みたいな感じで広がっていったんですけど(笑)。生理痛って当たり前じゃないよ! おかしいよ! って発信したのを見てこられたりする方が多いです」
質問:会社の中で女性の健康を推進するために必要なことはなんだと思いますか?
宋氏「岡田先生がおっしゃっていましたが、医者が言っても検診を受けてくれないのに、上司が受けるとみんな受けるって(笑)。もちろん私達(医者)が啓発することは無意味ではないと思うんですけど、やはり人の行動を変容させるのは制度や風土だと思うんです。ご協力していただくとしたら、学ぶ機会を設けていただいて。今日お話した内容、体のことや妊娠についての知識だけでも持っていただければ『知らなかった』ということは防げると思います」
岡田氏「トップダウンで実施すると効果的ですよね。以前はこういった経営セミナーを開いても一般社員の方しか来なかったんですよ。経営者の関心がなかった。今は執行役や副社長が来るほど関心が高くなってきたようです。従業員の健康をきちんと守ってあげないと、企業の未来はないと。危機管理ですよね。人手不足で倒産する企業も増えてきてますし」
最後は宋氏から岡田氏に対して質問がありました。
宋氏「産業医って、会社側の人なんですか?(笑)」
岡田氏「産業医は中立の立場ですよ。働いてる方(労働者)が不利益を被って訴訟になったら企業リスクになるわけです。つまり、働いてる方が会社を訴えられないようにするのが産業医なんです」
宋氏「会社側が従業員に訴えられないようにするために、どうしたらいいか、と」
岡田氏「今は法令を守ってるだけではだめなんです。従業員が働いていて病気になったら損害賠償として責任を取らされる。そういうことが続く会社は限りなくブラック企業が多いですね」
宋氏「ようは、企業がブラック企業にならないようにするのが産業医の仕事なんですね」
岡田氏「そうです。自分が働いている会社がブラックだったらいやじゃないですか。産業医としても(笑)」
ライターのまとめ:企業の未来、キーワードは「健康」
3時間に渡るセミナーは盛大な拍手で幕を閉じました。企業の健康への取り組みといえばまず健康診断が思い浮かびますが、アプローチの方法はそれだけではないのだということを学ぶ場となりました。
今回は働く女性の健康として月経・不妊・更年期という身体的な側面の課題やメンタルヘルス・ハラスメントという心理的側面の課題を取り上げられましたが、これらはあくまでも一例にすぎません。
経営者の方もそうでない方も、企業全体の健康を保つためにできることは何があるのか考えるよい機会になったのではないでしょうか。
株式会社ルネサンスでは定期的に参加費無料の健康経営実践勉強会を開催しています。
詳細はこちら https://hcbiz.s-re.jp/btob/information/
写真で伝えるセミナーダイジェスト
前編・後編で紹介しきれなかったその他のセミナーの様子を、写真と一緒にご紹介します
岡田氏と宋氏の講演の後は休憩をはさみ、ルネサンスのインストラクターによる「イス・ヨガ」が行なわれました。
会社にいてもできる! というコンセプトでだけあって、主に上半身を伸ばす、ねじる、丸くなるなどの簡単な動作で身体の硬い人でも容易に取り組みやすいプログラムとなっていました。
ヨガの後はルネサンスの市村氏が登壇し、同社が経営するスポーツクラブや企業向けプログラムを説明。この日のセミナー参加者には特典として、無料で体験レッスンを受けられるチケットがお土産として付いてきました。
【参考】ルネサンスの「ビジネスタフネス社員育成プログラム」
https://at-jinji.jp/service/61/188(@人事サービスガイド)
共催のドコモ・ヘルスケア株式会社の大畑静美氏は、女性の健康に特化したウーマンヘルスケア事業について説明。講演した宋氏監修の女性向けの健康管理アプリ「カラダのキモチ®」についても紹介しました。
DATA:第7回健康経営実践勉強会「働く女性の健康経営」
【レポート前編】1部:岡田邦夫氏の講演 2部:宋美玄氏の講演
【レポート後編】3部:座りながら出来るヨガの紹介(株式会社ルネサンス)、4部:スマートフォン用アプリ「カラダのキモチ®」の紹介(ドコモ・ヘルスケア株式会社)、5部:質疑応答
日時:2017年11月28日(火)14:00~17:00 場所:株式会社ルネサンス(東京都墨田区) 主催:株式会社ルネサンス 共催:ドコモ・ヘルスケア株式会社 ゲスト:岡田邦夫氏[NPO法人健康経営研究会理事長]、宋美玄(ソンミヒョン)氏[ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事、丸の内の森レディースクリニック院長]
執筆者紹介
河野理沙(こうの・りさ)(株式会社スキマタイズ) 東京都出身。主に「食」「健康」「ジェンダー」の三本柱で執筆をしている。常識に囚われないんだねは褒め言葉。犬猫より鳥派。
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
ニュース・トレンド
育休取得における対象者と上司の意識調査:江崎グリコ株式会社
育休対象者の4割が申請にためらい。上司側は約5割が「育休・産休のフォローに不安がある」
江崎グリコ(大阪市)は11月14日、育休経験者及び育休取得予定者250名と育休の申請を受けた経験のある上司250名を対象に実施した「育休取得における対象者と上司の意識調査」の結果を...
2024.11.22
-
ニュース・トレンド
ビズリーチ WorkTech研究所
直近1年での退職者が増加傾向。大企業では7割超が「退職者が増えている」と回答
ビズリーチ(東京・渋谷)が運営する、働く人の活躍を支えるテクノロジー“WorkTech”に関する研究機関「ビズリーチ WorkTech研究所」は10月22日、ビズリーチまたはHRM...
2024.10.24
-
ニュース・トレンド
KDDI株式会社
社員の自律的なキャリア形成・スキルアップ支援を目的に「ジョブ図鑑」を公開
KDDI(東京・千代田)は10月21日、社員の自律的なキャリア形成・スキルアップ支援を目的として、社員向けに「ジョブ図鑑」を公開した。【TOP写真はジョブ図鑑のイメージ(リリースよ...
2024.10.22
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?