コラム

企業コンサルタント大関暁夫の「組織と人事」


人事にこそ有効な「成果=知識量×行動量」の法則

2015.09.17

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目次
  1. 成果は知識量と行動量の掛け算
  2. リクルーター時代に学んだ知識と行動の法則
  3. チームビルディングにも応用
  4. 法則のお陰で成績低迷店も立て直す
  5. 壁にぶつかったらこの法則を思い出すべし

成果は知識量と行動量の掛け算

私が見てきたビジネス界の成功者は、自らの事業に関する情熱に端を発した豊富な知識を備え、かつ卓越した行動力をもって成功に至った方がほとんどです。

組織内で改革を進める時に大切なことは、リーダーが「正しい知識」を持って「愚直に繰り返す」こと。正しい知識がなければ改革は徒労に終わり、改革が進まないからと言ってリーダーの心が簡単に折れてしまっては、目的を達成することは決してありません。

営業で着実に実績を上げる営業マンは例外なく、「豊富な営業知識」を持って人一倍の「営業活動量」で営業に励んでいます。十分な営業知識なくして顧客を振り向かせることは不可能であり、知識はあっても出無精で営業活動量が伴わないなら秀でた成果をあげることは期待できないのです。

これらの経験則的事実は、「成果=知識量×行動量」という法則の下で同じように説明することができます。これは、私が自己の体験を元に様々な事象で実証し、あらゆるマネジメント領域において役に立つビジネス万能の法則としてセミナーや研修でお話しているものなのですが、実はこの法則は人事に関する実体験に端を発しているのです。

リクルーター時代に学んだ知識と行動の法則

私は銀行勤務の若手時代に、5年ほど続けて人事部から出身大学のリクルーターに任命されました。母校がある仙台の学生を採用するにあたって、当地に支店を持たなかった私の銀行は採用面では圧倒的に不利な状況にありました。現実に私が入社する前は何年かに一度Uターン希望者が入社する程度で、私が入る前も3年間入社ゼロという状況が続いていたのです。

私は考えました。まずハガキをもらった学生に片っ端から電話をかけ、勧誘はさておき情報収集に努めました。学生の今年の志望動向や、他行はじめ自社との併願ライバルとなり得る企業の現地活動など生の情報収集です。ライバル企業に関しては、そこに勤務する大学時代の同級生からも積極的に情報を集めました。次に仙台に出向いて、電話で感触のよかった学生をチョイスして面接。狙いを定めた2~3人を本社に呼んで内定が出る、そんな流れでした。

本当の勝負はここからでした。内定者にはとにかくマメに電話を掛ける。しかし決して自社に縛りつけるようなことをせず、就職相談役としてあれこれ経験則でアドバイスをしたり他から仕入れた業界就職情報を提供したりするのです。これを続けることで、ほとんどの学生は第一志望と言っていた会社から内定が出ても、私の銀行を選んでくれたのです。

まさに、「成果=知識量×行動量」。私はこのやり方で5年間毎年2名以上の学生を入社させることに成功し、人事部から「リクルーターの神様」とまで言われるようになりました。

チームビルディングにも応用

リクルーターで自信をつけた私は、営業の現場でもこの法則で実績を上げました。現場実績が認められ管理者に昇格すると、今度は若い担当者との関係をいかに構築したらよいかという壁にぶつかりました。この時も悩んだ末の結論として、この法則に従って動いてみたのです。

まずは、同席折衝や共同作業を通じて現場に目を向け、担当者目線で彼らがどう動き何を考え何に悩んでいるのかを把握。そうすることで部下に関する「知識量」を増やし、同時に一方的に指示するばかりではなく双方向での積極的なコミュニケーションをはかって対話という「行動量」を増やしてみました。成果は程なく出ました。周囲からもうらやまれるチーム力が「成果=知識量×行動量」の法則で作られたのです。

法則のお陰で成績低迷店も立て直す

既に内心で銀行の退職を決めていた折に成績低迷店の支店長辞令をもらった時は、赴任店を1年で再生させ銀行員としての区切りをつけると心に決めました。ここでも心掛けたことは、「成果=知識量×行動量」です。

まずは法人取引先に対し相手先の業界知識を蓄積し、圧倒的な訪問頻度で波入るメガバンクを押しのけて取引を拡大しました。店舗内では、時間の許す限り支店長自ら窓口に座り現場の実態を知識として蓄え、改善策の策定に向けてパート職員を含めた全スタッフの話を積極的に聞くことでコミュニケーションの行動量増加に努めました。こうして1年で成績優良店表彰を獲得し、無事円満退職を果たしたのでした。

壁にぶつかったらこの法則を思い出すべし

「成果=知識量×行動量」は負け知らず、不変のマネジメント法則ですが、私の実体験からは特に人を相手にする人事領域でこそ効果が大きく即効性もあると実感しています。人のマネジメントは、すなわち「心」のマネジメントです。

相手サイドの知識を蓄えることで懐に入り、コミュニケーションの行動量を増やすことでさらに距離感を縮めていく。「心」のマネジメントは、こうした方法が必ず成果につながると思います。人事領域で何か壁にぶち当たった際には、ビジネス万能法則「成果=知識量×行動量」をぜひ思い出して試してみてください。

執筆者紹介

大関暁夫(おおぜき・あけお)(株式会社スタジオ02 社長) 東北大学卒。横浜銀行に22年勤務。経営企画、マーケティング、営業部門を歴任した。06年に独立し、コンサルタントとして「必ず実績が上がる営業チームづくり」をはじめ、企画、人事、営業面で数多くの企業を支援。若手時代には “リクルーターの神様”と呼ばれたこともある。採用に関する持論は「リクルーティングは自社を買わせる営業である」。

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