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レポート「What “CxO” Branding Night#0」


未だ曖昧なままのCxOの定義と、人材確保をいかにすべきか

2017.09.08

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前回の「CHRO×BRANDING -tokyo branding labo vol.4-」に続き、同じくパーソナルベンチャーキャピタル(代表:チカイケ秀夫氏)主催により、株式会社ビズリーチ会場にて[What “CxO” Branding Night#0]が開催された。
本来、企業のスタートアップやスケールアップにとってCxO(いわゆるCEOなどの最高責任者)の存在は欠かせないものであるが、そもそも対応可能な人材が不足しているばかりでなく、CxOに対する定義が曖昧であることが最大の課題だ。このイベントは、第一線で活躍中のCxOの対談を通して、立体的にCxOを定義し、専門分野で最高のキャリアとなるCxO人材を増やし、日本の人材市場の活性化と価値向上、スタートアップシーンの底上げを目的として実施された。
今回、イベントのほぼ全編をレポートにまとめるとともに、追加取材した内容を収録。ダイジェストの動画と合わせ「CxOが発信された」当日の様子を伝える。

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イベントData——————————————————
【日時】2017.5.17(水) 19:30 – 22:30
【場所】株式会社ビズリーチ(東京都渋谷区)
【主催】パーソナルベンチャーキャピタル
【タイムテーブル】ミニワークショップ~対談~懇談会
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当日は定員30名が即時満席となる盛況ぶり。登壇者5人の自己紹介が終わったところで聴講者らによるグループディスカッションと発表が行われた。各テーブルからは、「名前はよく聞くけど、結局CxOって何をやっているのか」、「企業のフェーズによって各CxOはどう動くべきなのか」、「CxOがいるから縦割りになりやすいのではないか」など、本イベントの主目的である“CxOの定義”に関わる疑問が投げかけられた。
以降は文系フリーランスの黒田悠介氏がオペレーターとして進行を担当し、登壇者による対談をメインとしつつ、「スライドドットコム」で会場からの疑問や意見をリアルタイムに拾うスタイルで、一方的なセミナーではなく会場と常にやり取りが発生する非常に活発なイベントとなった。

今回登壇した”CxO”は以下の5人

NT_Cxoprt_1_kuroda_170908黒田 悠介(文系フリーランス)
日本のキャリアの多様性を高めるために自分自身を実験台にしている文系フリーランス。新しい『事業』『働き方』を生み出すことが生業。帽子とメガネがトレードマーク。東京大学文学部心理学→ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランス(ポートフォリオワーカー)→兼業COOというキャリア。スタートアップやベンチャーのディスカッションパートナーとして年間20社の新規事業の立ち上げを支援。

NT_Cxoprt_2_hashimoto_170908橋本 祐造(株式会社ネクストスケープ HRエバンジェリスト)
1978年生まれ。2002年に早稲田大学卒業後、NHKに入局。営業職として約3年間従事。その後、人材コンサルティング会社を経て、GMOインターネットのグループ人事部にて、採用担当、人材フォロー担当として活躍。以来、いくつかのIT企業で人材採用の戦略構築や方針策定、実行および人材育成プログラムの策定、人事評価制度の構築・運用に携わる。現在は株式会社ネクストスケープでHRエバンジェリスト兼人事部長として従事。成し遂げたいビジョンは「人が最大限の力を発揮することができる組織づくり、社会システムづくりに一生を通じて携わる」。特技は「人の心に火をつけること」。「すべての組織にCHRO(最高人事責任者)を」をテーマに、CHROのあり方、組織での役割、最新情報に特化したWEBメディア「CHRO|最高人事責任者の流儀」を運営。

NT_Cxoprt_3_koresawa_170908是澤 太志(株式会社Speeeエンジニアマネジメント責任者 兼 エンジニア採用責任者)
シーエー・モバイルでプラットフォームメディア事業、広告事業、検索事業など幅広くの技術領域を経験し、レコメンドエンジン開発会社などを経て、前職ではEC関連のベンチャー企業でCTOを務める。偶然の出会いを経て、Speeeの風土とカルチャーにビットバレーを彷彿とさせるベンチャースピリットを感じJOINを決意。

NT_Cxoprt_4_suda_170908須田 仁之 (Sudax)
マジニア社長秘書→ソフトバンクグループ(スカパー、YahooBB)経営企画→アエリア/CFO→スダックス/複数ベンチャー役員。20代:イマジニア社長秘書、ソフトバンク放送子会社立上げと株式上場(IPO)、YahooBB事業立上げ→30代:アエリアCFOでIPO、ベンチャー支援。現在:複数スタートアップの役員・アドバイザー。関与先弁護士ドットコム、クラウドワークスが株式上場。

NT_Cxoprt_5_chikaike_170908チカイケ秀夫(パーソナルベンチャーキャピタルCEO)
すべての人にスタートアップを」をミッションに、GMOグループ上場企業での企業理念策定/社内浸透新党に参画。2008年よりGMOグループにてベンチャー企業の立ち上げと、全グループ5,000人に関わるプロジェクトのリーダーとして、グループ内ブランディングを経験。「ブランディング」を通して、スタートアップ/ベンチャー企業に特化した支援事業を展開。

CHROは社長に「No」を突きつけ、コンディションを整える立場(橋本)
経営陣とどれだけ本音でぶつかり合えるかがCTOの価値(是澤)

黒田 ここからはオペレーションを担当します。改めて今回のメンバーそれぞれに自己紹介をしてもらいます。私は「CQO」、最高質問責任者をやっています。私はよくこういう肩書をねつ造するんですが(笑)、バイアスにかかりやすい経営者を社外からサポートする仕事をしています。大手からベンチャー、スタートアップまで幅広く。

須田 僕は元々 CFO をやっていたんですけど、簿記 3 級も落ちています(笑)。若い頃は数字にとても弱くて、事業計画とか作って10 億とか余裕で間違えたりしてました(笑)。CFOといっても財務や数字ばかりではなく、採用や提携営業、事業企画などCEO や COO の サポート役をやることが多かったですね。

橋本 私はCHROです。これまで人事畑で来て、途中フリーランスになり、失敗し預金残高が死を意識するレベルのところから這い上がってきましたので、普通の人事経験者とは少し違うと思います。新卒でNHKに入社し、「自分が組織を変えてやる!」と意気込んでかなり暴れましたが、結局同期の中で一番に辞めました(笑)。キャリアのメインは GMO インターネットです。スピード感も発言力も相当高い経営陣から様々な無理難題を要求された思い出もあります。経営者の人って「圧」が強いので、本当は間違っているのかも...と思いながらも突き進んでしまう場合が多いと思います。私はそういう突き進む経営者に対して「いや、違う」と対抗する勢力になることで、会社全体のコンディションを整える役割だと考えています。社員ひとり一人、チーム、役員らのコンディションを整えて、それを業績につなげていく、という感じです。

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是澤 20代はエッジの効いたエンジニアをやりつつ、ゲーム会社とかも経てIT業界で事業開発からで検索エンジンを作ったり研究開発なども経験してきました。
僕は人に恵まれていると思っていて、いろんな出会いがあり、貴重な経験ばかりさせてもらってきました。で、ある日マネジメントで失敗して猛省、ドラッカーを読むところから始めて猛勉強するようになりまして。その後起業もしましたがうまくいかず、シーエー・モバイル時代の上司の紹介でベンチャーにジョインして開発組織のマネジメントをしつつ、レコメンドを広告に生かすような新プロダクトを開発したりもしてきました。そのときはパワポ2枚ぐらいの資料を社長にプレゼンして2カ月後にはプロダクトリリースにするようなスピード感で開発をしていましたね。結果プロダクト自体の成果は微妙でしたが、広告事業にも参入するきっかけができ、そこに興味をもった会社から投資を受けることにもなり存在感を発揮できたと思います。
僕はわりと経営者と本音でぶつかり合う方なのでエンジニア組織論で方向性が違い退職を決意して、その後CTOとしてメルカリの競合のような企業にジョインしました。CTO的役割の人はCEOとどれくらい本音を言い合えるかが重要だと考えていまして、技術に関してはCTOのほうがプロなわけですから経営者とどれだけやり合うかにかかっていると思うんです。スタートアップは、エンジニアにパートナーとしてやって欲しいなら、エンジニアに株を渡さない経営者はダメなんですよ(笑)。

黒田 お酒飲んでないですよね?

是澤 いえ、飲んでいます(笑)。でもこういう部分が、今回の伝えたいことだと思ってますね。Speeeに入ったのは4年前で、一エンジニアからスタートしましたが、アドテク事業を立ち上げるときに責任者になり、採用も口出ししていたら「お前、全面的に採用をやれ」となり。顧問の井原さんも来てエンジニア人事的な責任者をやれといわれたときは、かなり無茶ぶりだと感じましたけど、今となれば結果的に成果も出て、エンジニア人事というポジションも世の中には必要性が上がってきているので、いろいろ話せると思います。

チカイケ 20代はデザイナーでしたが、制作というものに限界を感じて自分でビジネスモデルを作ってみたくてGMOグループに入りました。そこでいろいろ学び、今はスタートアップのブランディングを中心に支援しています。
具体的には今日来ていらっしゃる会社さんの社外CBOという形で入っています。そもそもブランディングって何? から入るので、約一年パートナーとしてお付き合いをして、完結できたときに社外CBOとして入る感じです。よく社内に入ってくれとお願いされますが、どうしても社内だと力関係が生まれてしまうので、言いたいことが言えなくなる。あくまでも僕は社外、にこだわっています。
つまりは現場。現場が変わってくれないと会社は変わらないので、客観的に社長とぶつかることができる立場ですね。いつでもクビにしてくれ、くらいの想いで。ブランドって人事と密接にかかわってきます。この流れでCHROというエリアに張っていますが、そもそもCxOってなんなんだ、というところから今日のイベントにつながっています。

CxOに会いたいならSNSとメディアを使え(橋本)
一度でも「経営」を経験している人と、そうでない人の差は非常に大きい(チカイケ)

――最初のテーマは、「どうしたらCxO人材に出会えるか」。それぞれの経歴や立場から、非常に興味深いコメントが発せられた。

是澤 CTOであれば、今は出会うだけなら簡単です。Facebookでメッセージ出して会いに行けばいい。でも出会う門戸は開いていますが、簡単には口説けない。まず失敗します。単に人を雇うのとは違うから、さきほど話した株を渡すというのもありますけど、本当にパートナーになって欲しいなら対価を払ってでも、という覚悟があるのかというところですね。こういう機会を逃すと、逃がした魚は本当に大きくて、「あの会社からさ...」という話は瞬く間に業界に広まりますから。僕らエンジニアも失敗はしたくないし、そもそもスタートアップに行く理由もなくなってきているんです、正直。

大きな会社のほうがやれることが多いしいまではメガベンチャーのほうがエンジニアに自由を与えていたりします。それを覆す何かといえば、成果に対する対価でしかない。ではCTOはそので得た対価を何に使うべきかというと、投資側にまわれるべきだと思うんです。自分が出した成果の報酬を投資して、この業界をよくしていく、という感じです。そこも踏まえて、「この人なら一緒にやってくれるかも」と可能性を信じてもらうことが重要ですね。

須田 出会いたいけどそもそも人がいません。ベンチャー界隈で優秀な人の母数が少なすぎる。なので、普通に人材エージェント経由や、知人の紹介(リファラル)しか方法がありません。社長にとっての初期メンバーなどは昔からの知り合いというのも良いと思います。付き合ってきた時間が長いですから。面接しただけの人って付き合いの時間が短くて、結局相互理解が薄いままのジョインになって、入社してから「あれ? なんか期待してたのと違う」みたいな期待値の差に苦しむケースが多々ありますね。あと、CxOっていう肩書にあまりこだわらないほうがいいんでしょうね。肩書だけで何か偉くなったように思いますが、実際には権限がほとんどなかったりしますし。

橋本 私はずっと人事の人たちに絶望していて、経営サイドを見ていて、本気で人事に取組もうという人はこの世の中にいないのではないか、とつい最近まで真剣に思っていました。で、去年の秋にある人事系メディアからご縁があって取材を受けて、ここからいろいろな人事の人から信じられないくらい連絡がありました。多くの人に実際に会うと、CHROをすでに実践されている人もいて、逆にたくさん勉強させてもらいました。

CxOをやりたいのであれば、メディアに取り上げられるような活動することが近道になるかもしれません。
メディアといえば、FacebookやTwitter、yentaなんかですぐに仲良くなれて、そこから新しい輪が広がったり。今は初対面の人と出会う障壁が本当になくなっています。

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チカイケ 一度でも「経営」を経験している人と、そうでない人の差は非常に大きい。Cx系はCEOと基本的に同等だと考えていて、ただ分野として“x”のところが違うだけ。経営に対する責任も持っているし、ビジョンもコミットするはずなので。だから、極論を言えばCEOが各CxOをやるのが一番スムーズです。なので私はCHROとして動く場合は対人事部ではなく対CEOになりました。

黒田 たしかに会社を経営していて、その後、フリーランスになったCEO、CxOみたいな人よくいますし、私も一回会社やって、フリーランスやって、またCxOやってたりするので。そういうキャリアパスみたいなのアリかもしれないですね。

「成果に対して何を与えてくれるか」でCxOは視座・視点高く育つ(是澤)
圧の強い社長なんてもう古い (須田)

――次のテーマは、会場からの質問も多かった、「CxOに必要な資質」。自身がいずれなりたい、またはどのような資質の人材を確保したらいいのか、という点で不安があることが分かる質問だ。

是澤 CTOはテクニカル領域の便利屋ではなく、あくまでギークであるべきです。初期のアップルにはウォズニアックがいたから、アップルの製品が生まれた。技術戦略の要になるのがCTOだと思います。

日本の場合ここが少しズレていて、エンジニア組織をまとめるVP of Engineeringみたいなところがメインになっていたり、スタートアップではCIO(最高情報責任者)やCSO(最高セキュリティ責任者)あたりの領域もやらされてしまって、広報も採用も人事も...と広範囲に求められてしまう。それが日本独自のものであるなら、周囲がちゃんとその方向性に共感できて、キャリアとして成立させないといけない。CEOは技術領域のことは分からないし、理解は必要だけど判断する必要はないので、しっかりとわかる人に相応の対価を支払ってパートナーとしてやってもらえればいいだけです。とはいえエンジニアには怠惰な人間も多いから、技術力だけではなくて成果を出せるか否かに着目して責任を与える必要がありますね。

――ここで、会場から「CTOは投資なんてしないのではないか?」と質問が出た。

是澤 視点の高いエンジニアは視野に入れていると思いますよ。技術に対していえばエンジニアは感度高く投資できるので、技術の筋がいいかとか、自身の得意領域であれば投資でもなんでもできると思います。ただ成功を収めたその先の話です、投資は。成功したあとの設計が視点・視座を上げる上で重要だと思うんですよ。だから結果に対して何を与えてくれるか、が重要なんですよね。その先が何もないならいつかエンジニアはみんな自分で起業しちゃう。
NT_Cxoprt_9_suda2_170908須田 単に、いいCEOと出会っていないだけのような気がします。

是澤 それは確かに的確で、僕だけじゃなくてそういう人は多いのかもしれない。
一緒にやるということは、どういうことなのかを深く考えてもらえたらいいのにと思います。同じリスクを背負ったのに、成功したときに気づいたらCEOだけに富が集まっていたり。それじゃ他のCxOは育ちません。

橋本 要は人と組織の関係を使って、どうやって売上、利益を上げて成果を出すのか、っていうのが究極的に求められることで。『急に人がやめた』『この事業のチームよくなくて』という言い訳しないヤツが絶対求められるところだと思っています。
自分が究極的に思うのは、経営者って基本は数字で物事を語るけど、従業員に対して数字で物事を言っても心が動かないんですよね。感情で攻めなきゃいけないところで。

自分なりにずっと悩んできて、結論として今のところ持っているのは、おそらくこの仕事は人生について語れるやつじゃないときついんだろうな、と。ぶっちゃけ「お前、どう死にたいんだ」と本気で聞けるやつが求められるんだと思っています。

どんな会社でどんな経験してきたとか、どんなスキル持っているかを聞いて、この人欲しい! と採用するわけですが、大体うまくいかない。そうじゃなくて、どう生きてどう死ぬのかっていうのを逆算していったときに、「うちの会社だったら、こういう人生になるよ」という提示ができないといけないんです。私も4万人面接してきて、他人の人生に寄り添って向き合って、という経験があるから言えるし、この経験がCHROとしての自分の資質は育ってきたと実感しています。

チカイケ CxOって何なのかと考えたとき、やはり行きつくのは経営に対する責任と、売り上げに直結しなければいけないという点です。ブランディングであれ技術であれ、その専門分野から売り上げへ結びつける。自分はブランディングの筋道としてまず理念があって、ここを必ず経営者に一番に決めてもらいます。コーポレートアイデンティティーって、今は社長が私物化してしまっているところがあって、会社=社長になってしまうと、結局判断がブレてくるんですね。悪いことではないんですが、周囲が混乱してしまうし、それが不信となって人離れが起きてしまう。ここに対しては僕はCEOとよくぶつかりますが、創業時の理念と今の事業がかけ離れていることがとても多くて、そこをCBOとして正さなくてはいけなくて。たとえ売り上げが下がっても違うことはやってはいけないと役員会議でもズバズバいうわけですが、どんな場であれ覚悟を持って経営者と対峙できるかどうかが資質だと考えています。

須田 僕もこう見えて経営者とはバチバチぶつかってきましたね。どの会社でも同じだと思いますが、人と人はトラブルがどうしても起きてしまう。経営と現場、親会社と子会社みたいなところで起きるケンカの調整役みたいな仕事は多かったと思います。社外役員やアドバイザーをやっている今でもよくこの役回りになります(苦笑)。
僕自身はとても“圧が強い”環境で働いてきたのですが、最近は“圧の強い経営”ってもう古いなって感じますね。“圧がなくても結果出す”みたいな経営が求められているんです。

橋本 圧強い系で言うと、新任のCEOの方が、すぐに結果出さなきゃいけないから焦っていたんだろうなというのはありましたね。『いくらでも代わりは取れるんだから、取ってきたらいいじゃねえか。ウチの会社に入った時点で、コミットしてるんだからフォローなんかしなくていい』と、ある会社で社長が言われたんですよね。

私のポリシーとしてはそこは絶対曲げられないわけですよ。人は財産だから。そこで戦ったわけですよね。そしたら、「やめろ、ネガティブな意見が出てきたらどうすんだよ」と。でも、いいんですよ。水面下でランチ行ったり文句言ったりすればいくらでもやれるので、見えないところで動いたりしましたよね。

黒田 たとえ認められなくとも、自分の職務を全うする、ですね。

橋本 そうしないと自分の存在価値が無いですから。皆さんもそうだと思います。

チカイケ 基本的に会社の社長と現場って、ギャップがあるんですよ。社長はずっと先を見てるし責任を負ってるから、こうした方がいいっていうのがあるけど、現場はみんな目の前の仕事で忙しい。たしかにみんな間違ってないんですよ。CEOが言うことも、現場が言うことも間違っていない。大事なのは、そこにギャップがあることをお互い認識したうえで、じゃあどうするのかっていうところで。

前職ではけっこう他罰的になっていたんです。「誰が悪い」とか。しょうがないんですよ、問題っていうのはどこかしら人に紐付くことだけど、人をやめさせたら解決するかっていう解決しない。どんどん人を責めていくと人がいなくなって、ブラックになっていく。基本的にブランディングをやるときも、問題を深掘りしていくと上司だったり部署だったり、最終的には会社とかCEOとかになっていくんですよね。そこの順番をちゃんと作って、人を責めるのやめて、会社の仕組みを作っていかないと、会社の資材にもなっていかないので。CEOが変われば基本的には会社は変わるので。そういう話はよくしますね。

黒田 バトルといえば是澤さんはすごそうですが。

是澤 いや、僕は分かり合えないと思ったら辞めてしまうから(笑)。
すでに今の会社に4年もいるんですが、僕が4年も続くなんてっていろんな人から言われます。それは、経営陣が柔軟で、変化を歓迎するし、今強いかではなくてこれから強くなるための行動について考えている。常に未来に対するポテンシャルを追いかけていて、そういうところにようやく出会えたという感触があります。僕みたいな面倒なやつをこのポジションに置いておくという覚悟もすごいと思っていて、ミーティングがあると必ず何かしら気になることがあって小言を言うんですが(笑)、そういうのもしっかりと聞いてくれる。どんな情報でも集めて、っていう姿勢があるんですね。

マネジメントというのは、成果を出すためにやることであって、手段やプロセスは問われないべきです。成果が出ているということはマネジメントができている証拠。人を管理するとかモチベーションを上げるとかいう小さなことではなくて、成果を上げるために何をやっているのか、という見方をしてくれているように感じます。

“アウトプットを出せなければ何の意味もない”(是澤)
“理念ほど費用対効果の高いものはない”(チカイケ)

――次のテーマは、会場から寄せられた「各ポジションから見た、スタートアップに必要な要素とは?」。スタートアップに限らず、事業拡大を目指す企業にとっても非常に参考になる意見が多く出された。

須田 自分で言っておいて古いなと思いますが、結局のところ気合じゃないかと(笑)。

是澤 その気合が現れたものがアウトプットだと思っていて、これを出せない人は何を言っても説得力がないですね。評価なんか気にしてるよりも暇があったらアウトプットを出したほうが評価される、と思います。プロダクトでもなんでも成果としてカタチにできるかどうか。成果を出すための仮説としてのPDCAをいかに早くまわせるかにかかっています。どんなものでもアウトプットすれば必ずフィードバックがある。この回数をどれだけ増やせるかで決まるところが強いんじゃないですかね。

黒田 ちゃんとした会社にしようとして、社内に向いたことばかりやっちゃう場合もありますしね。バランスは重要ですが、まずはアウトプットで成果物。そのほうが人も来ると思うんですよ。「このプロダクトおもしろいから、お金なくても手伝います」みたいな人もたまにいたりするので。NT_Cxoprt_10_kuroda2_170908
橋本 私は成果ももちろん重要ですが、夢は語ってほしいですけどね。先日会った経営者の方もそうだったんですけど、「とにかく宇宙に突き抜けたいんです」って真顔で言うんですよ。そのあと、30分くらい宇宙の話になったんですけど(笑)。こんな話をしているのに医療の会社で。” 人間の体の中って宇宙なんですよ“みたいなところからスタートして。
こことは別の会社で、今100人くらいの規模ですが、そこの社長が「100人くらいは俺の人間力で連れてこれるんだ」と断言していました。やはり人間力って大切だなと思いつつも、そこから先は人間力だけでは無理で、人事の責任者が必要になるとご本人も言っていて、なるほどなと感じましたね。

チカイケ みんなお金も人脈もない。一番は想いの強さですね。企業はなぜ存在しているかというと、そこはもう創業者の想いだけなんです。この根本的な部分と、ビジョンを語ってもらうようにお願いしています。ビジョンは言語で表現するものですが、採用から何からすべてに関わってきます。こんなに費用対効果の高いものはない。
お金がなければCEOが一番のリソースだし、思い、ビジョンがいちばん大事なので、とりあえずそれを話してくれると僕は言っています。それで結局、良くなっていくんですよね。

そもそもみんな会社がどこに行っているのか分からないし、何のためにとかも分からないんですよね。そこで経営者がさっきの宇宙でもいいので、「俺達は宇宙に行くぞ」っていうのがあれば、みんなの目線がそっちに向くんですよね。

“会社ごとにCxOの定義をして、丁寧に説明すべき”(須田)
“今ある資産でレバレッジすることがCxOの責任”(チカイケ)

――ここからは黒田氏からの提案で、「CxOとはマネジメントなのか」という論点で対談が進行した。

黒田 人を惹きつけてマネジメントするというケースもあれば、それが果たしてCxOとマッチするものなのか、というお話を聞きたい。経営論とか組織論になりそうですが。

橋本 CHROはマネジメントの部分が6割あるんじゃないかなって、自分では定義しています。
そうはいっても、人のことは興味関心あるし、ついつい現場の方に向いちゃうんですよ。CHROが絶対やっちゃいけないのは「現場がこう言ってるので、経営は絶対こうすべきなんです!」って10対0で言っちゃうこと。それは経営ではないので。
なので、自分は経営6現場4というスタンスで必ずやっていて。時にはあまり言いたくないですけど、人を切らないといけないときもあるので、そのときはその割合でやりきるというところです。そういう意味では人のマネジメントも現場のマネジメントもしています。

――須田氏から「マネジメントって何なのだろう」と逆に会場へ問いかけ、質問者から「会社を経営していくためには成長してかなければいけないので、それはマネジメントだと僕は定義しています。最初のお話の方で、「CTOはギークがいい」という話になったとき、それってどこまで経営にコミットするのかってところで。どこまで役割が分断されてるのかな、と疑問に思いました。」と質問の趣旨が説明された。

黒田 となると、マネジメントの有無は”x”の中身によって変わりそうですね。

須田 その会社によるかと。お互い曖昧なままだとズレてしまう。当社の CxO はこうあって欲しい、と事前に明確な説明をするといいと思います。「CXOのポジションを与えたのに経営の意識が低くて困っています」みたいな相談はよく受けますね。オーナー社長とナンバー2や3となるCXO役員との認識のズレは、モロに経営インパクトありますから、よくコミュニケーションをとってほしいと思います。三顧の礼で役員に迎えたのに「やっぱり合わなかった」なんていう理由で退社していくのは切ないですからね。

是澤 結局、マネジメントという以上、成果でしかないと思うんです。売上とか、そこで握っている何かを達成するためにその人がいることが重要なんですよね。「CTOはギーク」って言ったのは、やはりギークだからこそ出せる技術成果っていうのを負っていると思うんです。日本だとどちらかというと組織に依っていて採用とか評価とかに責任を負っているCTOも多いと思うので、であればそういうことで成果を出すって感じですかね。NT_Cxoprt_11_koresawa2_170908

チカイケ 自分も「なぜ」を深掘りしていって。マネジメントっていうのは、インプットがあって、プロセスがあって、アウトプットなんですよね。これは日本の戦後の工場の時代に、いかにインプットだのアウトプットだのを管理するか、がマネジメントであると定義されているので、スタートアップ時ははそれをやっていると成果が出ないので、レバレッジなんですよね。今ある成果を使って、成長させるか、レバレッジを効かせて、スケールさせるかなので。

マネジメントっていう言葉は...ファシリテーションじゃないですけど、みんなが向く方向は、社長には限界があるので、そこを今ある資産を使って、いかにレバレッジして売上をスケールさせるかっていうのがCxOのひとつの責任だと思っています。

“未熟なままCTOを名乗ってしまい失敗”(是澤)
“数字を見て見ぬふりをした結果大リストラへ”(橋本)

――最後のテーマは、スライドドットコムの書き込みで急上昇してきた「失敗談」。最高責任者になるような人の場合、成功談に偏りがちになるが、こういう場だからこそ包み隠さず失敗談を聞きたいという要望が多かったようだ。

黒田 初めてCxOだったときの、未熟だったなという失敗談があれば。

須田 僕は 20代のころに友達がやっていた会社にCFOとして入りました。僕の前任のCFOがいましたが、どうもケンカして出ていったようで、その後釜ということで。創業時から社外役員で資金調達を手伝ったりしていまして、時代も良かったので1998年創業当初で 5億くらい集められた。で、3年くらいで大半のお金を溶かしてしまったようで、「須田、もうお金が無くなったからフルコミットで来て」って言われて。それが2002年ですね。

フルコミットでジョインしたら、まず株主総会がありまして、そこで投資家(VC)の人たちが「お前ら、やめろ!」みたいなノリでした(苦笑)。僕、そもそもVCっていう存在をそんなに知らなかったんです。VCっていうのは社外役員で資金調達手伝っていたときに、プレゼンしてまわったときにいろいろとアドバイスをくれた「優しいお兄さん」みたいな印象しかなくて。株主総会ではその優しいお兄さんの人たちが急にみんなすごい剣幕で「今期の数字は何億赤字ですか? ...お金返してください」という感じで。結局、僕が最初にやった仕事は「もうこの会社はダメだから売却しましょう」という、会社の売却。 2カ月で楽天に売却しました。ソフトバンクに残っていたほうが良かったな、と思いましたね。給料も恐ろしく下がりましたし(苦笑)。

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是澤 最初にCTOを名乗ったときは、2人の会社で技術できるのが僕だけなのでCTOを名乗ったっていうのがあって、自分にそんな能力はないのに。そのときのCEOはエンジェルみたいな感じでやっていて、お金を出しててくれるだけだったんですけど、それに甘えた時点で失敗ですよね。僕に能力ないので、うまくいくわけがないと。事業やビジネスをつくることはできなくて、物をつくるだけしかできなかったわけですから。

橋本 前職のことですけが、これは今でも苦い思い出で。50人いる会社で、自分がほぼ毎回経営会議に出ていました。3つ新規事業のうち2つがうまくいっていないことを目の前で見ていました。

でも、明るい雰囲気の経営会議で、うまくいっていない部署の部門長に対して茶化しながら「頑張れよー」みたいな感じでやって、目をつぶっていたんですよね。で、それでいいかなと思ってたんですよ、雰囲気も良かったし。そしたら、年が明けたところで、実はえらい赤字があったってことがわかったんですね。目の前で見ていたのに。数字も見ていたんですよ。結論は50人いる会社で12人リストラ。人事責任者としてやりました。
とても辛かったです。今でも忘れられないですね。3時間くらい会議室でうつ病の子に泣かれたりとか。何回も「私は死ねばいいですか」とか「会社出たところで、手首切るってことでよろしいでしょうか」とかって言われて。なんでそこにコミットするのかっていう(会場笑)。

苦い思い出でありつつも、人事としてはいい経験をさせてもらったなと思っています。おかげで経験値は明らかに上がったと思います。失敗談なので、こういうのを防ぐために数字はちゃんと見ておくことはもう最低限ですね。

チカイケ ある制作会社にブランディングのパートナーとして入っていて、大手商業施設のロゴ案件の話で、作ったのはいいけど判断が付かないから、自分がその案件のブランディングで入ることになりました。ブランディングから、ロゴ作成あとに年間キャンペーンで大手のコンペで代理店と競合になり、代理店のそもそものブランディングを無視したやり方に、自分は反発をしたんですが、パートナー会社のCEOが当初のブランディングより大手代理店との仕事をとってしまい。当初の大手商業施設の方と合意したブランディングを無視するようなやり方、そしてブランディングより目先の利益をとったCEOに対して、 結果的に「私はやめます」という形でケンカ別れになってしまいました。失敗といえば失敗 なんですけど、失敗とは思っていない部分もありますし。後悔もしていません。

途中途中でスライドドットコムに書き込まれた質問や意見に反応しつつ、5人の登壇者と聴講者が一体となって盛り上がるシーンも多々あり、いわゆる壇上からの一方的なセミナーとは一線を画す内容であった。
聴講者にはこれからCxOを目指す人、スタートアップ真っ最中の経営者、事業拡大を狙う役員クラスなどが多数来場しており、時間が経つにつれ熱気を帯びるイベントとなり、懇親会も大いに盛り上がった。

今回は#0ということで実験的な面も多く取り入れられていたが、今後も継続して実施されるようなので、興味のある方はパーソナルベンチャーキャピタルのFacebookページをチェックしておくとよいだろう。

あらためてCxOの在り方を問うイベントだった

 【写真】左から橋本氏、須田氏、チカイケ氏、是澤氏、黒田氏

後日、本イベントを終えたあとの5人に再度取材できる機会があったので、後日コメントを寄せてもらった。

チカイケ秀夫氏

普段、CxOの方の意見や価値観を聞く機会はなかなかありませんが、印象的だったのはCTOの是澤さん。経営層に対して物言う姿勢ですね。むしろ経営層に物を言える姿勢だからこそ、CxOのポジションや、エンジ ニア採用の人材採用まで信頼を得ている印象を持ちました。そして何より須田さんがぶっ飛んでいて最高でした。

橋本祐造氏

CHROは従来の人事部長のポジションの枠ではなく、経営と現場の間に立ち、人と組織の関係を最適化し、組織の力で経営に最善の成果を出すための役割を果たす人になります。おそらく通常の人事のキャリアをずっとやってきました、という人ではなく、一人一人の人生に向き合って、寄り添って、解け合える素養を持っている人、人の懐に入るのが得意で組織の雰囲気を自然とプラスに持っていき、チームビルディングに貢献できる人を抜擢して、思い切って権限を与え、どのように考え、どのように動くのかを見極めながら、CHROとして育成していくことをオススメします。

黒田悠介氏

新しいCxOジャンルが次々と生まれてきたり、企業にエンジニアが一人しかいないからCTOをやっていたりと、「名ばかりCxO」も増えているなかで、改めてCxOの在り方を問うイベントになったと思います。定義としては「xの観点から経営にコミットする」と言えると思いますが、組織という複雑な環境で単体の定義はあまり意味がありません。CEOや他のCxOとの関係性や、納得感のある採用方法、業務上必要なスキルやマインド、といった実践的な視点でディスカッションできたと思います。

須田仁之氏

いろんな人の話を聞いてやはり感じたのは、結局は「気合と根性」だということでした。

是澤太志氏

長く活躍してくれる優秀なCTOと一緒にやりたいと思う経営者の方は、対等性を重要にして一緒に成長してくれることに期待することが大事だと思っています。CXOという役割というのがその分野におけるスペシャリティの強みなので、それを生かして成長することが必要になる。最終的には責任領域においての成果を出し続けるしかない。フェーズが変わっても成長して成果をだす、進化と呼べる変化をするもののみが生き残るのです。

当日の雰囲気を伝えるプロモーション動画

執筆者紹介

高井 直樹(たかい・なおき)(株式会社スキマタイズ 代表) 「感動」「驚き」「満足」「発見」「喜び」の5感覚で伝達力を強化し、エンジニア出身ならではの論理的課題解決をコンテンツメイクで実現する、ドキュメンテーションアートディレクター。徹底した取材と言語化翻訳、映像、Webとメディアを問わず"表現代行"を生業とし、車とゲームと電子楽器をこよなく愛する無類の速いモノ好き。

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