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コラム

企業コンサルタント大関暁夫の「組織と人事」


採用担当者が持つべき、「新卒採用が会社を育てる」という視点

2015.10.28

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新卒をあえて取らない方針は合理的だが…

上場企業並みの歴史と売上、収益規模を持ち合わせ、ここ数年来株式上場に向けた準備を進めていると耳にしながら、なかなか上場実現には至らないA社。長期的な人材戦略を前提とした来年度の新卒定期採用の見通しを、同社総務部長に聞く機会を得ました。

「弊社は新卒採用を予定していません。これまでもそうですし、来年もそうです。年間を通し各職場の人員補充要望に合わせて、第二新卒のイメージの人材を中心に採用し、OJT教育を基本として即戦力化に努めています」

景気上昇局面にある現在、準上場企業とも言えるA社クラスでもなかなか人材確保ができないほど新卒採用市場は厳しいのか、と私は思ったのですが、念の為部長にその理由を尋ねてみたところ意外な答えが返ってきました。

「新卒が採れないのではなく、これは弊社社長の方針なのです。新卒採用に本気で取り組むなら、新人教育には大きなコストがかかる。ならば、他社さんで導入教育をしていただいた人材を即戦力として活用させてもらうのが効率的、というトップの考えなのです」

なるほどA社社長の採用に関する考え方は、合理化戦略的観点、コスト戦略的観点からは十分に納得性のある、なかなかな妙案とも言える戦略であると思わされました。しかし、今ひとつ決め手を欠き上場に踏み出せない同社の現状は、もしかするとこのあたりに原因があるのかもしれないと同時に感じさせられたのも事実でした。

ホッピービバレッジに学ぶ、新卒採用の意義

その解決のヒントになりそうな話を、とあるセミナーで耳にしたことがあります。セミナーの話し手は、アルコール飲料製造販売「ホッピービバレッジ」社長の石渡美奈さん。石渡さんは三代目経営者で、古い体質を抜け出せずに「着実に廃業に向かって突き進む」状態にあった自社を、“ホッピー・リバイバル”でV字回復させた立役者です。

その大改革の着手過程において彼女は、変革を嫌う社内ロートル人材の若手への入れ替えを中途採用で行い苦労していました。そんな折、ベストセラービジネス書作家でもある企業経営者の小山昇社長に会い「どうしたら自社の体質を変え、発展軌道に乗せられるか」を相談したところ、即座に「新卒を採用しなさい」と指南されたのだそうです。

「中途採用人材でも戦力化することに四苦八苦している中小企業が、新卒を採用して一から教育するなんておこがましくてできません」と石渡さんが返答すると、小山社長から「新卒社員を教育するのではない、新卒社員に会社を教育してもらうのです」と一喝されたと。「新卒社員に会社を教育してもらう」とはいかなることなのでしょう。

新卒社員に会社を教育してもらう

小山社長の論理はこうです。まっさらな白紙状態の新卒社員を育てて戦力化するためには、それなりの覚悟と計画性に基づいた準備が必要になる。例えば、新卒社員に徹底すべき企業の理念やビジョンをそれに先がけてしっかり固めて全社員に徹底する必要があったり、新卒社員に職場の基本ルールを守らせるために社内規定の整備や書面化をはかったり、各職場で上司が新卒社員に基本指導できるように管理者教育をする必要があったり…。

すなわち、まっさらな状態の新卒社員を迎え入れて自社の戦力としてしっかり定着をはかるためには、迎え入れる側の戦略的社内体制の整備が不可欠であると。社内の受け入れ態勢が整っていないなら新卒社員は適正な形で戦力化できず、会社にとっても新卒社員にとっても不幸なことになる。そうならないためには企業側の努力が必要になる。言いかえれば、新卒社員の受け入れは自社の長期的発展に向けて何が欠けているのかを知る絶好の機会になるのであり、転じて「新卒社員に会社を教育してもらう」ということなのです。

実際に石渡さんは、このアドバイスを受けて一念発起で新卒採用をスタート。自社の社内整備をすすめることで古い体質を一掃し、一気に発展軌道に乗せたのだそうです。

長期視点で戦略的な採用活動を

業績好調ながらなかなか次のステージに至らない冒頭のA社と、ジリ貧の旧態然とした社風を脱し成長軌道に転じた石渡さんのホッピービバレッジ。人材採用を短期穴埋め型かつ費用対効果的観点で捉えるにとどまるか、長期育成型かつ戦略的観点で捉えた取り組みに至るかが、実は企業組織の成長過程におけるひとつの大きな分岐点にもなり得る。採用方針を検討する際には、自社の置かれた立場に応じてそんな観点から考えてみることも大切なのです。


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執筆者紹介

大関暁夫(おおぜき・あけお)(株式会社スタジオ02 社長) 東北大学卒。横浜銀行に22年勤務。経営企画、マーケティング、営業部門を歴任した。06年に独立し、コンサルタントとして「必ず実績が上がる営業チームづくり」をはじめ、企画、人事、営業面で数多くの企業を支援。若手時代には “リクルーターの神様”と呼ばれたこともある。採用に関する持論は「リクルーティングは自社を買わせる営業である」。

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