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コラム

企業コンサルタント大関暁夫の「組織と人事」


パワハラ時代の救世主!アンガーマネジメントのススメ

2016.04.25

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アンガーマネジメントとは?

アンガーマネジメントをご存じでしょうか。人間関係等で相手に対して沸き起こった強力すぎる怒りのパワーを、マイナスエネルギーには変えないという70年代にアメリカで生まれたセルフマネジメント術です。このアンガーマネジメントが今、企業の教育研修の領域で注目を集めています。

アンガーマネジメントの基本テクニックは、怒りを感じてから6秒間を上手にやり過ごす、というものです。人間は怒りを感じると、頭の中でアドレナリンが急激に発生するのですが、発生から約6秒でそのピークは過ぎるのだと言います。すなわち、強い怒りを感じて6秒以内に感情に任せた言葉を発してしまったり、行動に出てしまったりしてしまうと、先々に禍根を残すような結果になりかねないのです。

アンガーマネジメントとスポーツ

アンガーマネジメントの欠如による代表的な失敗例としてあげられるのが、06年サッカーワールドカップ決勝戦の舞台で起きた事件です。フランス代表のスーパースター、ジダン選手が、相手チーム選手の執拗な挑発にキレて世界中が見守る大ゲーム最中に頭突きをしてしまい、現役最後のゲームで反則退場となった一件です。あの時彼がアンガーマネジメントを身につけていたなら…。スーパースターを著しく貶めた汚点行為は、アンガーマネジメントにより回避可能であった例として語り草になっています。

スポーツ界でこれを真っ先に取り入れたのは、プロ・アメリカンフットボールの世界でした。アメリカンフットボールは、フォーメーションプレーと呼ばれる冷静沈着さが求められる戦略的頭脳プレーを身上とする競技です。相手のラフプレーなどに扇動された選手のヒートアップは作戦遂行上、最悪選手生命上で命取りになることもあり、現在では全チームで新人選手の必須習得技能としてマスターを義務付けられていると聞きます。

アンガーマネジメントをビジネスに応用

このようなスポーツ界に端を発した流れから転じて、アメリカではビジネス界においてもアンガーマネジメントを身につけ積極的に活用する経営者が続々現れました。経営者という実権も責任もある立場ゆえに、折衝ごとにおいてついつい怒りをあらわにしてしまい商談をフイにしてしまったり(日本でもよくある不祥事会見で逆ギレして墓穴を掘る例は、これに当たります)、あるいは社員の言動に対する不満から頭に血が上り思わずきつい叱責を発して社員の思いがけない退職を誘発してしまったり。そんな取り返しのつかない苦い経験に根ざした反省が、経営者をアンガーマネジメントに向かわせているのでしょう。

パワハラとアンガーマネジメント

日本でもここ数年ようやく注目を集めるようになり、13年に日本アンガーマネジメント協会が発足。徐々にではありますが世間にその効用が知られるようになり、企業の間でも社員教育の一環としてアンガーマネジメント研修が取り入れられはじめました。その「表から見える目的」はもちろん社員の能力開発。怒りっぽいがゆえに持てる力を十分に発揮できていない社員、短気な性格が災いして人間関係がうまく構築できていない社員の、潜在的な伸び代を十分に伸ばしてやりたいということなのです。

「表から見える目的」と申し上げたのは、実は日本企業におけるアンガーマネジメントの導入開始には、もうひとつ大きな隠れた動機があるからです。アンガーマネジメントが市民権を得始めたこの数年は、同時にパワーハラスメント職場が心身を病んだ労働者を大量に生み出し、「ブラック」という言葉が頻繁に聞かれるようになった時期でもありました。

そもそもパワーハラスメントなどというものは、昭和の職場には存在しませんでした。右肩上がりの高度成長期の職場は日々目標に追い掛け回されることもなく給与は黙っていても上昇カーブを描き、職場の上下関係もスムーズに流れる、至って平和な時代だったのです。しかしバブル経済の崩壊とともに状況は一転します。低成長時代への突入は「成果無き者、食べるべからず」的な新たな大原則への転換をもたらし、ノルマ、目標、成果主義等々で彩られた職場はストレスの塊と化していったのです。

ストレスはイライラに姿を変え、そのしわ寄せが行動になり、必ずや弱いものへ襲いかかってくるのです。低成長期突入以降、社会問題的に吹き出した職場におけるパワーハラスメントの問題は、ストレスに任せて上司が怒りをぶちまけ部下が病んでいくという構図に他なりません。すなわち今や職場活性化を阻害する大きな問題として立ちはだかっているのが、パワーハラスメントの根源たる「上司の怒りのコントロール」なのです。

ならば怒りに上手に対処する術を、上司に身につけさせたらどうか。アンガーマネジメントはそのような考えもあって、現在研修に導入する企業が増えているというわけなのです。私の知り合いの企業でも、店長クラスが皆若くパワハラ問題の続発で定着率が悪かった小売チェーンで、全店長を集めアンガーマネジメント研修を継続実施したところ、定着率が目に見えて改善しました。上に立つ者が怒りと上手に付き合うことが、ブラック回避の意外な切り札になるかもしれないと実感した次第です。アンガーマネジメントは、今注目すべき管理者向けの研修課題であることは間違いなさそうです。

怒りを感じたら「100から3ずつ引き算」

最後に、専門家が教える怒りを感じた時の有効なやり過ごし方をひとつご紹介しましょう。カチンと来たら、まず深呼吸をしてすぐには言動に走らず頭の中で100から3ずつ引き算をする。「97、94、91、88…」とアタマの中で数えているうちに6秒間という怒りのピークは静かに過ぎ去っていき、不思議と落ち着いて話ができるようになります。パワーハラスメントが懸念される怒りっぽい管理者の方々に、伝授してみてはいかがでしょうか。

執筆者紹介

大関暁夫(おおぜき・あけお)(株式会社スタジオ02 社長) 東北大学卒。横浜銀行に22年勤務。経営企画、マーケティング、営業部門を歴任した。06年に独立し、コンサルタントとして「必ず実績が上がる営業チームづくり」をはじめ、企画、人事、営業面で数多くの企業を支援。若手時代には “リクルーターの神様”と呼ばれたこともある。採用に関する持論は「リクルーティングは自社を買わせる営業である」。

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