コラム

残業ゼロを目指して


「期間限定!」で仕事を片付けよう

2017.08.31

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟さんの連載企画。今回のテクニックは、どうやら夏の終わりに関係があるようです。

「夏が終わる前に旅行へ出かけよう」

まもなく夏が終わります。

今年はお盆を中心に、少し気候がいつもとは違っていたので、普段よりも少し早く夏が終わってしまうのではないかという心配もあります。夏を充分に堪能できなかった人も多かったと思います。季節が変わってしまう前に、小さな旅行などを企画するのはどうでしょう?

とまぁ、こんな言い方をされると、ただ「8月に旅行に行きませんか?」などと言われるよりは、気持ちが動いてしまう方が多いのではないでしょうか。

少なくとも、そういった人が多いからこそ「学生時代最後の思い出に」とか「20代最後の夏に」といった、実はそこまで重大ではないことをキャッチコピーにするPR手法が今も脈々と続いているのです。

人は「失われてしまうもの」にこそ価値を見いだす

持っていても使い道がないと思っていた物でも、いざ家族などから「売ってもかまわないよね?」と言われたりすると、急にその物が惜しくなってしまう。みなさんにも、そんな経験はありませんか?

これは、心理学的には「リアクタンス」という言葉で説明できます。個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した動機的状態。この状態を「心理的リアクタンス」と呼びます。

人は「今まで自分が自由にできたものが失われてしまう」ことを極端に恐れます。「何かを失いたくない」と思う気持ちのほうが、何かを新しく得たいと思う気持ちよりも、一般的には強いのです。

タスクを「〇〇最後の仕事」として振り分ける

私はこの心理を利用して、自分を仕事に駆り立てる方法を実践しています。具体的にいいますと、仕事を「○○が終わってしまう前にやる」と決めるのです。

たとえば私は朝4時30分前後に起き、5時には仕事を始めるという生活スタイルを取っていますが、実ははじめのころは、早朝には仕事がはかどりませんでした。

理由は単純で「こんなに朝早いから、まだまだ時間はある」というつまらない気持ちにとらわれていたからです。ひどいときには、「ぼくはこんなに早起きして偉いなあ」という気分に浸るだけで、時間を過ごしていたものです。

そんな気持ちでただ時間を過ごしてしまうなら、寝ていた方がずっとマシなわけです。そこで私は、仕事を進める手を考えました。それが上記の「○○が終わってしまう前に」という考え方です。

「期間限定」感のある、仕事を進めるキャッチコピーをつくる

たとえば、4時50分は、「朝4時台の最後の10分間」です。「朝5時になってしまう前に、届いているメールを確認しよう」。こう考えることで、メールを確認するという仕事は5時までにしっかり終えられるようになります。

私はフリーランスなので仕事を進める時間を自分で決めていますが、会社勤めの方でも、この手法は問題なく活用できます。たとえば、あるタスクを「午前最後の仕事」と固めて、「正午になる前に、この仕事は必ず終えてしまおう」と自分に制約をかけます。こうすることで、その仕事を進める推進力が生まれます。

これは「夏が終わる前に海に行かなければ!」と言う気持ちに近い「深い意味のない義務感」なのですが、人は意味より感情に突き動かされるのです

私の場合は、特に子供を起こさなければならない朝6時30分の「前」は、効果絶大です。「一人で過ごせる最後の30分で、原稿を終わらせよう!」と頭の中で作ったキャッチコピーを復唱すると、別人のように高速で仕事を進められるようになります。

多少こじつけでもかまわないので、こうした「仕事を進めるキャッチコピー」をつくることで、タスクへのモチベーションは自分で作ることができます。

「これが最後になるかもしれない」という考え方をしてみる

同じように「これが最後になるかもしれない」という考え方は、行動の推進力になります。その経験を永久に手放すということは、多くの人にとって避けたいことだからです。

このことを真剣に考えると、よほどやりたくないことであっても、ものすごく貴重なことのように思えてくるから不思議なものです。

たとえば、固定資産税を払いに行くといった、右から見ても左から見ても前向きになれない雑務ですら「固定資産税の支払いも、これが最後になるかもしれないな……」などと映画の主人公のような気持ちで頭の中で再生してみる(さすがに恥ずかしすぎて口には出せないですが)と、「今回はきちんと払おう」と思えたりします。

まして「本を書くのもこれで最後になるかもしれない」というのはリアリティがありすぎて怖いくらいなので、かなりの威力があります。ほぼどんな著者であっても、そうであって別に不思議ではない話ですから。

何にせよ「これは始まったばかり」だから「やろうと思えば機会はいくらでもある」というとらえ方で、モチベーションを高めるのは難しいでしょう。1日は始まったばかり。時間はたっぷりある。そう思うと仕事に手をつけようと思えなくなるのが人情です。「期間限定」感のある、自分を動かすキャッチコピーを作って仕事を進めてみましょう。

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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