山根一城の「今日からできる採用実践講座」Vol.1
【前編】人材紹介会社の実態を正確に認識し、「選ばれる求人情報」を提供する
2017.08.02
1カ月で紹介数を5倍にする人材紹介会社の動かし方
人材紹介会社に採用支援を依頼しても、なかなか成果につながらないと悩んでいる人事担当者は多いのではないでしょうか。応募数を1カ月で5倍にするなど、採用ブランディングの領域で大きな成果を上げる山根一城氏(株式会社Potentialight 代表)に、今日から実践できる「人材紹介会社の活用法」を語っていただきました。
紹介会社は数百~数千の求人の中から、どのようにして求職者に紹介しているのか
昨今の採用市場の加熱化により、人材紹介会社を利用した採用活動は必須だと思います。
そこで、「紹介会社に選ばれるために準備すること」「人材紹介会社の活用マネジメント」「人材紹介会社を動かす上で人事に求められる3つのスキル」についてお話させていただきます。
まず、「紹介会社に選ばれるために準備すること」ですが、御社と同じ類の求人は数百〜数千存在します。
莫大な求人を保有する中でどのように御社の求人をキャリアカウンセラーが紹介して下さっているのかをご存じでしょうか?
何を基準に紹介する求人を選定しているのか、という部分を中心に説明していきます。
「面談時」に求職者へ紹介される求人数は5〜40件
紹介会社は各々特徴が異なりますが、求職者の方が来社して「面談時」に紹介する求人数は5〜40件程度です。この数字自体は論点ではありません。ある紹介会社の事例をあげると、保有求人は15,000件程度あり、例えばその中でWeb系の開発エンジニアの求人数は1,000件を優に超えます。
この「1,000件」の保有求人の中から、紹介してもらえる5〜40件の中に選ばれなくてはならないのです。まずこの事情を認識してください。とはいえ、
「紹介会社と打ち合わせはしたのに全然紹介してこないじゃないか!」
「紹介はしてくるけど全然良い人がいないじゃないか!」
と、思いたくもなるでしょう。気持ちはわかります。
ただ、1,000件の中の5〜40件に入っているとすれば、紹介会社は頑張ってくれています。まずは、その点を認識することが、人材紹介会社の活用を考える上でのスタートになります。
人材紹介会社はどう求人を選定しているのか?
紹介会社は求職者に求人紹介をする際、どのような基準で求人選定をしていると思いますか?
この部分を押さえなければ、ご紹介は難しい(無い)と思ってください。もし、次に紹介する施策を実施せずに多くの紹介を得ているという場合は、あなた(採用担当)の功績というよりは、所属している会社が元々魅力的である部分が大きいだけです。
(1)採用意欲が高い企業
いくら魅力的な企業でも、採用意欲が感じられなければ紹介してもらえません。採用意欲とは具体的に、
- 書類選考通過数(率)
- 面接通過数(率)
- 内定数(率)
などが一定数あることです。いくら紹介しても選考通過率が低い企業は紹介リストから外れていくことが多いです。ただ、「紹介される人材がミスマッチだから通過率は下がってしまう」とおっしゃる企業もいるかと思います。その場合に重要なのは、
- 選考スピード
です。通過しなくとも選考スピードが速い企業は人材紹介会社にとって魅力的です。採用活動に対しての温度感が伝わってきます。
採用が加熱化している今の業界では、応募時から1日以内に選考結果を出す企業が全体の2〜3割で、2日以内では5割程度だと言われています。
御社のスピード感はいかがでしょうか?
(2)その人材紹介会社のことを好きになれるか
紹介会社に高圧的な態度を取っていませんか?
紹介会社の営業マンは打ち合わせ時に、「自分だったらその企業に入社したいか?」という視点で話を聞いています。
事業内容や特色、福利厚生などはもちろん重要ですが、大前提としてあなた(人事や社長)を人間的に好きになれるかどうか、という視点が非常に重要です。
紹介会社にとって、採用企業との唯一の接点は、打ち合わせをした人間です。そのため、その企業のイメージ=人事や社長になります。その方が素晴らしい人間であって、自分もこの会社に入りたいと思えば、自分事のように紹介をしてもらえる可能性は高まります。
例えば、事業内容は競合他社とあまり変わらないものの、「この会社の人事は、採用活動に一生懸命で、自分たち(紹介会社)と同じ目線で仕事をしてくれる。紹介する求人を強化しよう」という話はよくあります。この点を軽視してしまっている採用企業が多いように思えます。
実際には、紹介会社が発注先、つまり自社が顧客側になりますが、そうではなく、紹介会社を「お客様」だと思って接してみてください。
紹介数が一気に跳ね上がることもあります。
(3)その企業が魅力的であるかどうか
上記(1)、(2)を押さえて、(3)を考えることが重要です。
紹介会社の営業マンの仕事の流れをイメージしてみましょう。
まず、採用企業へ訪問する前に「事前準備」をします。事業内容や特色などを分かる範囲で把握します。
そして打ち合わせ。募集職種や事業内容、特色などを理解しようと皆さん(採用担当者や経営者の方々)に質問をします。
打ち合わせ後、社内に戻り求人票を作成します。事業内容、会社の特色、職務内容、想定年収、必須要件、歓迎要件などです。
その後、「社内への求人情報の共有」を行います。ココが重要です。
御社に変わって紹介会社の営業マンが御社のプレゼンを社内カウンセラー向けに行うのです。
その際にこのような質問がきます。
「この企業の競合他社との違いは?」
「設立背景は?」
「他企業とは異なる福利厚生はある?」
「最近入社した方がこの企業に決めた理由は?」
などです。
上記はほんの一部ですが、紹介会社へ回答となる情報を伝えることができていなければ打ち合わせをしている意味がありません。また、回答していたとしても、内容が抽象的であったり、情報量が足りていなかったりする場合もあり、実はこうしたケースは少なくありません。
例えば、「御社ならではの社風は何ですか?」と特徴(イコール競合他社との違い)を聞かれた際に、下記のように答えていないでしょうか。
「社内の風通しが良いですね」
「社長や役員との距離が近いんですよ」
こうした回答をしている企業は御社の他に1万社くらいあるでしょう。他社との違いを打ち出す「特徴」とは言えませんよね。故に魅力的に映る情報ではないです。
ここでは、他企業には無いような御社ならではのキャッチーな情報が求められています。また、そういった社風に至った背景・理由なども説明しておくと良いでしょう。
例えば、
「当社は社員数500名なのですが、社長室を作っていません。社長の席は一般社員の横にあり、社員と同じ目線で社長が仕事をするように心がけています。また、役員の席も一般社員の間に配置されています。これは社内全体がフラットであり、社内の風通しを最大限良くするためです」
このように伝えるだけで紹介会社に伝わるイメージがまったく違ってきます。このように具体的な情報があり、初めて、1,000件近くある求人の中から5〜40件に選ばれるのです。
紹介会社に対して、断片的な情報提供をするだけでは「特徴」を伝えることはできません。現在の社風を構築した背景をできるだけ具体的に、細かくお話していただいたほうが紹介会社の頭の中に残りやすいのです。
後編では、人材紹介会社をマネジメントする具体的なノウハウとスキルを解説します。
今日からできる採用実践講座/1カ月で紹介数を5倍にする人材紹介会社の動かし方編
- 【前編】人材紹介会社の実態を正確に認識し、「選ばれる求人情報」を提供する
- 【後編】系統別紹介会社のマネジメント手法と人事に必要な3つの能力
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執筆者紹介
山根一城(やまね・かずき)(株式会社Potentialight(ポテンシャライト) 代表取締役) 株式会社ネオキャリアに入社後、キャリアカウンセラー 兼 営業として4年従事。その後、IT/インターネット/ゲーム業界に特化した人材紹介会社の立ち上げに参画。2014年、同社取締役に就任。2017年4月に株式会社Potentialight創業。 これまで担当してきた企業実績700社以上。キャリアカウンセリング実績4,000名以上。転職先支援実績600名以上。転職決定率:同業カウンセラーの4倍程度。リクナビNEXT主催のキャリアカウンセラーランキングでは1位を獲得(3,000名中)。
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