コラム

社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発


「ライフデザインセミナー」で人生における仕事の在り方も考える

2017.07.26

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企業で行う研修は「そこで学んだことを業務に活かすこと」を目的として計画しています。そういった視点で考えると、自分の人生の中での仕事のありかたを考える「ライフデザインセミナー」というのは、本来の研修の目的とは若干異なるのかもしれません。しかし、私がかつて在籍していた会社においては、「社員に選ばれる会社」の施策として過去に何度かライフデザインセミナーを計画・実行したことがあります。

目次
  1. 対象者の選定からスタート
  2. 午前と午後の2部構成
  3. 2年目以降は50歳以上に対象者を変更
  4. 社員からのフィードバック

対象者の選定からスタート

最初に行なったのが、対象者の選定です。対象者によって、研修の内容にも大きく影響を及ぼします。社員の年齢構成比をベースに検討を行いました。それと同時に、当時定年退職者が増えつつあり、かつ、再雇用社員として継続して勤務し続ける傾向もありました。そういった状況だったゆえ、定年が60歳に対してその5年前から人生を考えるきっかけになればと思い、「55歳以上の社員」を対象者としました。初回は、55歳以上の社員全員を抽出して、開催日の2ヶ月くらい前に案内状を送付したところ、最終的には20名強の方が出席を表明されました。

午前と午後の2部構成

会社としてのメッセージよりも、今後の定年も見据えてのライフデザインのきっかけになればと思ったので、そこにフォーカスした内容をメインとしました。1日終日の研修で、午前と午後で大きく2部構成としました。午前中は、今後どういった人生を送っていきたいのかを考えることに軸を置き、午後はそのために必要な「お金」について学ぶことにフォーカスしています。そのため、講師も午前と午後で別の方にお願いしました。

午前

・自己理解
・定年後の活動(再雇用、ボランティア、地域活動など)
・これからのライフイベント
・60歳以降の時間

・午後

・定年後に必要なお金
・公的年金の仕組み
・企業型確定拠出年金・退職金
・シミュレーションケース

また、昼食は弁当を手配して、研修会場内で食べられるようにしました。所属部門が異なるとなかなか話す機会も無く、また久しぶりに会う方もいらっしゃるかもしれません。研修会場(本社)近くでお店を探し、時間のロスを軽減することも考慮しました。

さらに、会社の取引先銀行のご厚意で、研修終了時に支店から何名かの行員を派遣していただきました。午後のセッションでマネープランについて気になった受講者向けの「相談会」が行えるようにしています。その場ではなく、後日改めて必要な資料などを用意してから相談したいという方向けには、案内のパンフレットを持ち帰っていただき、各自で銀行に予約を入れて出向いてもらうようにしました。

2年目以降は50歳以上に対象者を変更

初回が終了した際にアンケートを取って研修内容などを精査しました。そこで判明したことはいくつかありましたが、一番多かったのが、

「もう何年か前にこの研修をやってほしかった」

というご感想でした。対象者を55歳以上に設定し、かつ、初回だったので参加者も55歳とは限らず60歳近くの方もいらっしゃいました。そのため、次の年(=2回目)に関しては、内容はアジェンダ毎の時間配分の強弱を変えるくらいにとどめ、対象者を55歳から50歳以上に引き下げました。また初回受講者の口コミで評判が伝わったこともあり、2年目は初回の倍以上の40名程度となりました。開催時期については、年末の繁忙期前の方がよいだろうということで、10月下旬から11月中旬のどこかということで定着しました。

人数にも依存しますが、初回受講した方が2回目以降に「再受講」することも可としていました。年数が経過することで、同じような内容を聞いたとしても新たな発見もあるかもしれないと思ったことと、再受講によるネガティブな影響が全く思い当たらなかったというのがその背景になります。

社員からのフィードバック

ライフスタイルの多様化が進行している現在において、50代=「結婚して学生か就職した子供がいて、親と同居している人もいる」というわけではありません。実際、参加された方の中には独身の方もいらっしゃれば、複数回結婚された方もおり、多種多様でした。そのため「セミナーが結婚していることを前提とした内容なので、独身者向けのものがあるとよい」といったコメントもありました。これは、そういった「結婚している/していない」という個人の事情による括りで対象者を定めるものではないと思ったので、コンテンツに配偶者がいる場合といない場合の両方を記載してもらい、かつ、講師の方に口頭でフォローをしてもらうといった形式をとることで対処しました。実際、それでよかったのかどうかは、指摘された方が再び受講したわけではないので何とも言えないのですが、少なくとも同じような指摘は発生しなくなりました。

年に1回行っていたライフデザインセミナーは、通常の研修とはまた違ったものとして定着させることができたと思います。どのように企画していけばよいのかという参考になれば幸いです。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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