コラム


経営者たるもの、「利益追求」と「長時間労働対策」の二兎を追え!

2016.12.28

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HARES代表の西村です。2016年もいよいよ残すところあと僅かですね。

2016年、皆さんにとってはどんな一年だったでしょうか。

2月に娘が生まれて3児のパパとなり、さらに約6年勤めた会社を辞めて独立を決めるなど、僕にとっても非常にインパクトの大きい1年でした。

「働き方」という観点で世の中に対して大きな影響を与えたのは、某大手広告代理店の若手女性社員の過労自殺に端を発した「長時間労働問題」でしょう。事の顛末は既に各種マスコミが報じている通りですが、月100時間を超える超過勤務や、上司のパワハラなどが原因で心身が崩壊し、ちょうど1年前のクリスマスの日に自ら命を絶ったのです。

さらに残念なことに、こうした勤務問題が主原因とされる自殺者数は認定されているだけでも年間2000人以上いることが分かっています(平成28年版過労死等防止対策白書)。「過労死」や「過労自殺」は最悪のケースですが、死には至らずとも、過労が原因で体や精神を壊してしまう人は後を絶ちません。

本来、生活に必要なお金を稼ぐため、人生を豊かにするための営みであるはずの「仕事」であるはずなのに、気づけば仕事に人生の全てを飲み込まれてしまい、ついには命まで絶ってしまうーー。 そんな不幸の連鎖は、僕らの世代で止めなくてはなりません。3人の子を持つ親としては、かなりの確率で溺れることがわかっている「長時間労働の大海原」に子どもたちを送り出すことは到底できません。

そんな思いから『長時間労働撲滅プロジェクト』を立ち上げ、4万人以上の署名を集めて国に対して長時間労働の是正に向けて①労働時間の上限設定と②インターバル規制の義務化を直接要望するに至ったのです。

目次
  1. なぜ、長時間労働はなくならないのか?
  2. たくさん働け!はむしろ逆効果?
  3. エネルギーの最大化にコミットしよう。
  4. 「人間らしいマネジメント」によって、業績が3倍に。

なぜ、長時間労働はなくならないのか?

では、なぜそもそも「長時間労働」はなくならないのでしょうか。

その理由はシンプルで、「働いた時間に比例して、成果が増加する」と今もなお信じられているからでしょう。

日本の高度経済成長期と時代を共にした「モノづくり全盛期」においては、確かにそうだったかもしれません。一つの工場で生産できる製品の量は、工場の稼働時間に比例して決まります。

だからこそ、労働時間と成果(=生産量)は比例関係にあると考えられていました。8時間働いて得られる成果が100だとするならば、16時間働いて得られる成果は200になるはずだと。

労働力と成果の比例関係

そう考えると、経営者からすればある意味「従業員には1時間でも多くの時間を働いてもらった方が合理的」なわけです。いくら法律で上限をかけたところで、あの手この手でかいくぐろうと躍起になることでしょう。それでは、いつまで経っても「長時間労働」はなくなるはずがありません。

ところが、もしその前提が誤りだったとすると、どうなるでしょうか。

たくさん働け!はむしろ逆効果?

「限界効用逓減の法則」というものがあります。先ほどの図のように「財(労働時間)の消費量を増やせば増やすほど、効用が得られる」という単純なものではなく、「財の消費量の増加に伴って、追加消費分から得られる効用はだんだんと小さくなる」というものです。例えるならば「ビールも最初の1杯が一番美味しく、2杯目、3杯目と飲めば飲むほどさほど美味しくなくなり、一定のラインを超えるともう飲みたくなくなる」という状態ですが、長時間労働もそれと似たような事態を招く可能性があるのです。

限界効用逓減の法則

今や「長時間働けばそれに比例して成果が得られる」という時代ではありません。「知識労働」がメインになった現代においては、いかに社員のスキルとエネルギーを最大化して、ビジネスにコミットしてもらうか?が最大の経営課題なのです。

「社員に成果を出して欲しい」と要望すること自体は悪いことでも何でもなく、むしろ正当な要望です。しかし、それはイコール「社員に長時間労働をして欲しい」と要望するべきだ、ということにはつながりません。

実際に成果を出してもらうために重要なのは「社員が最大限成果を出せる環境をいかに整えるか」であり、長時間労働を求めることはむしろ、社員が成果を最大化することを妨げることにもなりかねません。

エネルギーの最大化にコミットしよう。

仕事の成果は社員のスキルとエネルギー量の掛け算によって決まり、エネルギー量はコンディション(本人の健康状態と職場における関係性の質)とモチベーション(仕事そのものに対する熱量)の掛け算によって決まります。

経営者が利益を最大化する上で、HRM面で考えるべきは、①いかに社員のスキルを伸ばすか、②いかに社員のエネルギー量を最大化するか、の2点です。

事業戦略上、時と場合によって、一気にアクセルをかけることは必要ですし、そのために長時間働くことが必要なタイミングももちろんあります。ただ、慢性的な長時間労働は、従業員が常にスキルを高め続ける上で必要な「学習意欲」を奪いますし、健康状態を悪化させることはもちろん、モチベーションが損なわれてしまいます。

また、今のように転職市場が活況だと、市場価値の高いスキルを持った生産性が高く優秀な社員ほど、自らのスキルやエネルギー量を最大化できる環境を求めて、他社に転職してしまうのです。

「慢性的な長時間労働」は百害あって一利なし、とも言えるかもしれません。

「人間らしいマネジメント」によって、業績が3倍に。

完全にプログラムされたロボットであれば、10のミッションに対して10の成果の出力を期待できるわけですが、残念ながら人間はロボットではありません。

エネルギー量が不足していれば、10のミッションに対して5とか6の成果を出すことしかできませんが、健康状態も良く、モチベーションも高い「高エネルギー状態」を維持できれば、10以上の成果を生み出すことも可能になるのです。

その象徴が、株式会社ガイアックスで最年少部長が起こした奇跡でしょう。停滞していた部門の売上を伸ばすために彼が着目したのは、「従業員の幸福感の追求」でした。

従業員を縛り付けていた「KPIマネジメント」を辞めて「顧客への提供価値」のみを追求するマネジメント体制に変えた上で、さらにクラウドソーシングの徹底利用とリモートワークの推進などによって労働時間を大幅に削減した結果、メンバーが自発的に学習するサイクルが生まれ、自分らしくイキイキと働けるようになり、これまで数年間横ばいだった売上が、たった1年で3倍以上に跳ね上がったそうです。

参考:KPIマネジメントを辞めて「学習する組織」に変貌せよ。

「感情」という非論理的なもので支配された人間をマネジメントすることは非常に難しいものです。でも、だからこそ「どうしたら成果を最大化できるのか?」は追求しがいのあるテーマですし、「従業員の幸福実現」の先にこそ、本当の「利益実現」が待っているのです。

「利益追求」と「従業員の幸福実現」はなんら矛盾するものではありません。むしろ、「従業員の幸福実現」に経営者が正しくコミットすれば、結果的に従業員のエネルギー量が高まり、顧客への提供価値が最大化するため、結果的に「利益」が最大化するのです。

「どうすれば、うちのメンバーのエネルギー量を最大限まで引き出せるのだろうか?」

2017年、経営者やマネージャーの方は是非とも考え尽くして実行に移したいテーマです。従業員のエネルギー量を「労働時間」で測ってしまう、という愚策に陥らないように気をつけながら……。


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執筆者紹介

西村創一朗(にしむら・そういちろう) HRイノベーター/複業研究家。1988年、神奈川県生まれ。首都大学東京法学系を卒業後、2011年に新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、法人営業、新規事業企画、人事採用を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得れる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。2016年末にリクルートキャリアを退職し、独立。 プライベートでは三児のパパ。NPO法人ファザーリングジャパン理事。週末は地域の少年サッカークラブのコーチも務める。2017年9月より「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経産省)の委員を務める。

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