新しい採用のかたち
新卒採用市場へ突きつける挑戦状!? 異色の人材サービス「就活アウトロー採用」の全貌(後編)
2016.09.28
「みんな真っ黒なリクルートスーツで、どうやって個性を求めるの?」「志望動機? 業界1位の会社に落ちたから、2位3位と受けていますけど?」――。“シューカツ”に対する違和感は、学生・企業ともに多くの人が感じたことがあるだろう。そんな就職活動に真っ向から「NO」を突き付ける「就活アウトロー採用」とは? 新卒採用、そして人材ビジネス業界に、正面から突き付けた挑戦状の詳細を、前回に引き続きキャリア解放区の納富順一氏が語る。
人材ビジネス業界における「中間支援者の介在価値」とは
――そもそも「就活アウトロー採用」を始めたきっかけとは?
これまで約10年間にわたり求人広告や人材紹介会社など、人材ビジネス業界に身を置くうちに、「中間支援者の介在価値」に大きな疑問を感じ始めたことが理由の一つです。
インターネットがない時代であれば、求人媒体が果たす役割は大きかったはずです。媒体がなければ、企業と求職者が出会いにくい。そこに“介在”することに、メディアとしての大きな価値がありました。
それが、インターネットで誰もが簡単に無料で情報にアクセスでき、ソーシャルメディアなどで、簡単に“リアル”な情報にも接することができる今日、キラキラしたことばかりを書き並べる求人広告に意味はあるのか。
そして、人材紹介ビジネスでは、大量採用、大量離職を繰り返す不人気企業でも、採用予算が多い企業だからとせっせと営業に行っては、人材を紹介している。
もちろん、どちらの仕事もネガティブな面ばかりではありませんが、はたして「誰を向いて仕事をしているのか」、「求職者とどれだけ向きあっているのか」という大きな疑問を感じていました。
今後、中間支援者として、本当に必要とされる介在価値を追求しないと生き残れないのではないかと、強烈な危機感を感じていました。
そんな問題意識を抱えているときに、この「就活アウトロー採用」の企画を考えていた、キャリア解放区プロデューサーの若新雄純と意気投合しました。直感的に、「これは自分がやるべき仕事だ」と強烈に感じたことを覚えています。
――なぜですか?
僕はずっと中途採用市場で仕事をしていましたが、新卒採用市場に対する違和感は、さらに大きかったからです。自分自身の就職活動で、テレビ局の最終選考に残ったとき。制作を希望して受けていたのですが「もし経理に配属されたら、どうしますか?」と、質問されたんですね。
「頑張ります」と、たぶん答えたとは思うのですが、僕もまだ面接慣れしていなかったので、動揺がきっと顔に表れていたと思います。そこで“ご縁”はなくなりました。そこから、就職活動や「働く」ことの意味を考えるうちに、そのまま「モヤモヤアウトロー」になりました(笑)。僕も「就活アウトロー」だったんです。
1年程のブランクを経て、テレビ局のADになり、その後人材業界へと歩むのですが、あのときから感じている「モヤモヤ」に対して、自分なりに挑戦したい気持ちもありました。
なにより、大学既卒生や中退者など、既存の就活市場では価値が低いとされる若者たちのほうが「価値がある」というコンセプト。さらに、そのような若者たちを集めて「トレーニングしない」コミュニティを作り、マッチングをしていくというアプローチ。求職者や企業に対して、これまでにはない新しい価値提供ができると思いました。
「昭和のロールモデル」をいつまで追い求めるのか
――納富さんは「現在の採用システムが、時代とマッチしていない」と、よく話されています。その時代背景について詳しくお伺いできますか?
「社会がおかしい」「『働く』ってなんだ」といった話は、大昔からあります。それこそ、60年代の安保闘争のような時代にもありました。しかし、そのころには、不満を抱えながらも一歩社会に出て、がむしゃらに働けば、少なくとも金銭的には、圧倒的に豊かな成長が感じられたはずです。
どんどん給料が上がる中で、車を買い、家族をつくり、マイホームを持つ。昭和の一般的な働く世代のロールモデルとして、こんなパターンが成り立っていたと思います。ただし、経済的に成長した時代が、必ずしも「幸せ」ではなかったことは明らかです。
「仕事一本やりで家庭を顧みない父親に、不満を持つ専業主婦の母親」。こちらも非常に一般的なケースです。そんな親世代を見て育った人間は、「働けば幸せになる」と言われても、疑問を感じるのは当然です。
ましてや、右肩上がりに成長を続ける時代でもありません。20年以上経済が伸び悩む中、「正社員」になっても、必ずしも幸せになれるわけでもありません。社会に出る前の若い世代が、「社畜」「ブラック企業」の言葉に代表されるように、「働く=搾取される」と思い込んだとしても無理はありません。
一方で企業側も、いつまでも「素直で明るい元気な子」を採用しておけばいい時代でもないはずです。成長からより成熟へとシフトする現代だからこそ、多様な人材、多様な価値観、多様な幸せのあり方を、お互いに認め合う社会が必要だと考えています。
――アウトロー採用に参加する企業が持つべき視点があれば、教えてください。
「能力が高いのに、やる気が高いように見えない③の人材が見落とされがち」
これは、就活アウトロー採用に限りませんが、現在の採用システムだと、どうしても「能力は高いのに、やる気があるようには見えない人材」を見落としがちです。ここを見抜くための努力が必要だと思います。
見抜くためにはある程度時間をかける必要があり、これまでとは違う採用フローを考える必要も出てくると思いますが、その価値は十分にあると思います。
「就活アウトロー」の人間たちも含めて、彼らが内側に秘めているエネルギーは、とてつもなくアツくて大きいと感じます。興味のある人事担当者は、ぜひ一度、彼らに会いに来てほしい。
「愛」について語ってもらうかもしれませんが、それはそれできっと楽しいと思いますよ。【了】
執筆者紹介
玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。
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