林修三先生のなるほど人事講座
人事のための「キャリアコンサルタント」活用講座
2016.07.04
キャリアコンサルタントが「アツい」!
「キャリアコンサルタント」と聞くと、それは求職者の就職支援を行う人であって、企業組織内ではなかなか活用されにくいもの、とお考えになっている方が多くいらっしゃるかもしれません。しかし、あえて断言します。
今、キャリアコンサルタントがアツい!
実は今年度からキャリアコンサルタントの世界では大きな変化が起きました。
それは、まさにその名の通り「キャリアコンサルタント」という国家資格が創設されたことです。
従来、CDA、GCDFなどの民間資格が(厚労省認定のものとはいえ)乱立していたこの業界ですが、この4月から新たに「キャリアコンサルタント」という国家資格が創設され、試験機関などが統合されました。これにより、キャリアコンサルタントのクオリティが一定程度担保されるとともに、それを前提として国による労働者のキャリア形成支援施策が一段と進められています。
例えば、昨年度まで行われていた「企業内人材育成推進助成金」が、今年度から「キャリア形成促進助成金」としてリニューアルされ、助成比率が引き上げられました。対象となる活動は、従業員の(社内における)キャリアパスの明確化や現状評価、キャリアコンサルティングの実施など、単なる教育研修に留まらない従業員のキャリア形成に関わるものに重点が置かれており、国の入れ込み度合いが見てとれます。
キャリアコンサルタントの知識は、実業務でどう活きる?
さて、このように国の施策が進んでいくと、従業員のキャリア形成に消極的な企業は、昨今の採用売り手市場化と相まって、人材の獲得や流出防止に支障が生じる可能性が高まるものと思われます。
それを防ぐためには、人事担当者自身がキャリア形成やキャリアコンサルティングに関する専門知識や技術を身につけ、あるいは信頼できる外部キャリアコンサルタントをブレーンとして、その知見をベースに各種人事施策を企画・実行していくのが最も望ましいでしょう。
では、キャリアコンサルタントが持つ(もしくはキャリアコンサルタント資格を目指す過程で得られる)知識・技術が、人事業務の中で具体的にどのように活かせるのでしょうか?
キャリアコンサルタント資格を取得するには140時間の講習を受講したうえで資格試験に合格する必要があるのですが、その講習で学べる知識・技術のうち、人事業務で大きく活かせるものとして、
(1)キャリアや職業能力開発に関する知識・理論
(2)メンタルヘルスの知識
(3)カウンセリングに関する理論・技能
(4)新たな仕事への適応を支援する技能
の4点が挙げられます。
(1)(2)は、会社の人事方針そのものを改善していく際に必要不可欠なものです。いかにして従業員のモチベーションや能力を向上させていくかについて、経験則だけではなく、理論的な面からのアプローチをしていくことが可能となります。
(3)は、医療的な意味でのカウンセリングではなく、いわゆる「傾聴」のことで、相手の心を開き本音を引き出していくことで、結果として自分に対する信頼感をも高めていくための理論・技能です。これは、人事担当者ご自身が従業員とコミュニケーションをとっていくうえでも大いに有用ですが、この理論・技能を管理職層に広く啓蒙していくことで、特に若手社員のモチベーション向上や、成長促進につながっていきます。
(4)は新規入社、配置転換、転勤、上位職への任用、休職からの復職など、従業員が新しい仕事や状況に直面する際のサポートの仕組みを作ることに大きく役立ちます。心理学の研究によると、人間は環境の変化に対して、(たとえそれが本人にとって望ましい変化だとしても)非常に強いストレスを感じることが明らかになっています。そのストレスを緩和させ、うまく変化に適応させていくことで、従業員のモチベーション向上や離職防止につなげられます。
今後少子高齢化がますます進んでいく状況の中で、人材の獲得や流出防止の重要度はさらに高まっていきます。
その一つの解決手段として、キャリアコンサルタントが持つ知識や技能を活用していくという選択をご検討してみてはいかがでしょうか?
執筆者紹介
林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。
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