メイプルシステムズ×タイミー「Twitter採用」対談(前編)
「炎上したら丁寧に対応する」Twitter採用の極意
2019.06.05
Twitterで優秀な人材と出会い、スピーディーかつ費用を抑えて採用できる「Twitter採用」。ただ、どんな採用手法もメリットや良い話ばかりではないはず。失敗談も含めて理解することで初めて「Twitter採用の極意」が見えてきます。
今回はTwitter採用を実践中のメイプルシステムズ(東京・中央)、タイミー(東京・文京)のトップや人事担当者が対談。前編ではツイートの炎上、批判ツイートへの丁寧すぎる対応、DMには5分以内に返信……など「実践者が味わった裏話」を次々と明かしました。【取材:2019年4月26日】
【後編】「採用色を出しすぎない。Twitter採用の極意と運用の裏側」
対談参加者
■メイプルシステムズ代表取締役社長CEO 望月祐介さん(写真中)
「エンジニアファーストの会社」を掲げてメイプルシステムズを設立。
離職率100%、面接をしない「ノールック採用」などの取り組みを実行。
■メイプルシステムズ取締役 人事部長CHRO 鴛海敬子さん(写真右)
メイプルシステムズのCHROとして採用戦略を次々と実行。
採用ブランディングから組織づくりまで幅広く担当する。
■タイミー代表取締役社長 小川嶺さん(写真左)
立教大学4年生の若手起業家。ワークシェアリングアプリ「タイミー」を立ち上げ、リリースから5カ月で3億円の資金調達を達成。
タイミーの採用業務も担当する。
■編集部R(女性、20代後半)
Twitterは大学卒業以来「見る専門」。「Twitter採用って人事担当者が転職希望者にDMを打ちまくるってこと?」レベルの認識だった(すみません)。
最初は「採用手段がTwitterしかなかった」
――そもそも各社がTwitter採用を始めたきっかけは?
小川さん(以下、敬称略):タイミーがTwitter採用を始めたのは2018年4月ごろ。2人で会社を立ち上げたばかりでお金もないし、そもそも採用手段がTwitterしかなかったんです。
Twitterのハッシュタグで、エンジニア用語や「転職」と調べている人をどんどんピックアップしてフォローしていました。どれだけフォローバックが返ってくるのか、データベースに蓄積しながら、フォロワーに拡散してもらえるような文章をツイートする。そのツイートがフォロワーのフォロワーにもどんどん拡散されていくんです。タイミーの初期のエンジニアはTwitterで集めました。
――拡散されるツイートとは?
小川:「3億円の資金調達をしたので、この条件面で採用を受け付けています」とか。会社概要(調達資金総額)、勤務形態、求めるスキル、報酬まで詳しくツイートします。「無料で焼き肉かお寿司を食べに行きましょう」も拡散されましたね。
【railsでの実装経験ある方限定】
本当に本当に困っていて直近3ヶ月でいいので助けてほしいです。。
少しでも興味ある方、社長、CTOと美味しいもの食べながら話しましょ!
回らないお寿司🍣希望はリツイート🤲
焼いてもらうお肉🥩希望はいいね👍
してください!
全員DMします!#タイミー #rails— 小川嶺 (@Ryo_Ogawa70) 2019年2月26日
【エンジニア大募集!】 3億円調達してお金が潤沢にあるのと、まだリリース5ヶ月なので新しいこと好きなエンジニアの方は楽しめると思います! また最初に自分とCTOがお話しせていただきますのでカジュアルに遊びに来てください! 自分に直接DMください!#twitter転職 #hiyokonitsuduke#タイミー pic.twitter.com/xo6W7zCuYR — 小川嶺 (@Ryo_Ogawa70) 2019年1月10日
望月さん(以下、敬称略):応募者が「自分が条件面を満たしているか」を分かるようにするのが大事だよね。「Railsを書ける人」とかじゃだめなんだね。
鴛海さん(以下、敬称略):私はエンジニアの専門知識はないから(望月さんが応募条件を)書いてよ。
望月:嫌だ。
鴛海:なんでだよっ!!(笑)
小川:あえてRuby(プログラミング用語)のカンファレンスが開かれたタイミングで、エンジニア募集のツイートをしたこともあります。ハッシュタグにエンジニア用語を入れると(募集ツイートが)どんどん拡散されて、応募のDMが15人前後から来ました。
望月:採用に関係ないハッシュタグにも乗っかるわけね。
小川:そうです。イベントに参加している人にターゲティングして採用できるので。
★タイミー(小川さん)のTwitter採用のコツ
・まずは自分がどんどんフォローして、フォロワーを増やす
・求めるスキル、報酬まで応募条件を詳細に書く
・ハッシュタグに採用ターゲット層に関する用語を入れて、拡散を狙う
社員のやり取りをオープンにする
――メイプルシステムズさんはいつからTwitter採用を始めましたか?
鴛海:2018年の夏の終わり頃からです。
望月:元々はWantedlyを使っていて、1通のメッセージを送るために応募者の経歴書を1時間見たり、ブログを見たりしながら採用していました。ただWantedlyを使いまくると母数がなくなってしまって。
鴛海:もう「耕し尽くしちゃった」みたいな。(笑)新たな畑を探しに、エンジニアがたくさんいるTwitterに移行しました。
望月:2009年ごろから個人アカウントは持っていたんですが、フォロワーが100人しかいなくて。真剣に取り組んでみようと思い、エンジニア向けの見積書の作り方、相見積もりの取り方などをツイートすると、かなりバズりました。
――エンジニアに刺さる専門的なツイートで、フォロワー数を伸ばしたんですね。あと、個人的な印象は、望月さんと鴛海さんのやり取りが面白い。
望月:あえてTwitter上でも鴛海とのやり取りをオープンにしています。(笑)
鴛海:「ババアいじり」がすごい。(笑)
望月:最初は(鴛海さんから「社内のやりとりを公開するのは)止めてくれ」と言われていたんです。でも、逆にそれがいいんじゃないかなと。メイプルはYouTubeチャンネルもあり、動画でも社内の温度感を伝えています。
今日はメイプルバー✨ みんな大好き!! pic.twitter.com/4wzaGBZgoE — 採用モンスター(おっしー)@キャリアファーストの人事なら任せなさい! (@recruit_monster) 2019年4月20日
★メイプルシステムズ(望月さん、鴛海さん)のTwitter採用のコツ
・エンジニアに役立つ専門的な情報をツイートし、フォロワーを増やす
・社員同士のやり取りをあえてオープンにする
――社内の様子をオープンにして興味を持たせて、DMを送ってもらえるように仕掛ける?
望月:「(メイプルのTwitterを)見たことあります」というエンジニアが増えるので、Wantedlyでスカウトメッセージを打つときの返信率が高くなります。
小川:タイミーもオフィスでスマブラをやっている様子や、エンジニアの飲み会、合宿の写真をどんどんツイートしているので、社員の楽しそうな雰囲気から採用ブランディングができていると思います。
――てっきり「Twitter採用とはDM(ダイレクトメッセージ)を打ちまくること」だと思っていました。
鴛海:DMは全然しないです。どちらかというと「DMをいかに送らせるか」ですね。
望月:よくTwitterで「転職活動中です」みたいなエンジニアを見かけるけど、声は掛けないよね。
小川:うちもそうです。すごく良い人ならば声を掛けるかもしれませんが、基本的にはDM待ちです。立ち上げ直後で知名度が高くなかった時は送っていましたが。
――固定ツイートで上位に採用情報を載せておく、ということ?
望月:メイプルでは固定ツイートで給与テーブルや「離職率100%」などの取り組みを載せています。
「すべての仕組みに逆張りを」 給与テーブルhttps://t.co/EQPnxaDUBi 高還元の謎https://t.co/2CbBuONIgj 離職率100%https://t.co/jv3eJBysGX 専門箱https://t.co/Dvpw4HmlP9 LINE@https://t.co/zotdjmGKTT notehttps://t.co/GFRA5JtwQ2 Wantedlyhttps://t.co/dKP7Nf0cVa — Motcii (もっち〜) @ 現役エンジニア社長 & 客員教授 & フリーランスでのお仕事募集中 (@ginza_no_motcii) 2019年4月10日
Twitterからの応募者は共感度が高い
――DMが来てから採用まで、どんなフローで進むんですか?
鴛海:DMが来た方には全員会って面接し、良ければ内定を出します。内定者を社内交流会に呼んで社員に合わせてグリップする。
小川:タイミーも入社前の内定者の一部を1泊2日の社内合宿に連れて行きます。スノーボードや釣りをやるんですが、費用も全部会社持ちです。内定者フォローではありますが、社員も毎日仕事を頑張っているので、たまには遊ぼうよと。
小川:応募者には全員会うって、すごいですね。
鴛海:多いときは月50人くらいと面談します。一日に11人と、全て1対1で会ったこともありました。最近は未経験の方はセミナー型にして工夫しています。
小川:タイミーも最近はグループ面接を取り入れました。
――実際に内定するのは何割くらい?
鴛海:面接からの内定出しは3割程度です。未経験や採用基準とは異なる方からの応募もありますが、会うまではどんな方か分からないのでまずは会ってみます。アカウントの画像を見て男性かと思っていたら、女性だったこともありました。
小川:タイミーは応募者全員ではなく、プロフィールや経歴書を見てから確度の高い方と面接しています。面接は月30人程度で、そこからの内定は4割くらい。
望月:Twitterで会社の雰囲気を分かった上で応募してくるので、共感度が高い。内定出しからの承諾率も高くなります。他の媒体だと、内定をもらってから他の企業と比較検討することもあります。Twitter採用の醍醐味は、応募段階で弊社への温度感が高い状態をつくれることだと思います。
――大手ナビサイトや、転職エージェントサービスは使っていない?
小川:一応登録はしていますが、ほとんど使っていないです。
望月:メイプルも使っていないです。今はTwitterとWantedlyだけで、採用単価が1万8,000円くらいなので。「それよりも安くなります?」っていう。(笑)
小川:タイミーも採用単価はそれくらいで、安いと思います。ほぼTwitterか社員からの紹介です。
★Twitter採用のポイント
・DMをいかに「送らせる」かが重要
・Twitterからの応募者は共感度が高く、内定出しからの承諾率もアップ
炎上したら、アンチにも丁寧に対応する
望月:Twitterを使っても上手くいかない人もいると思います。炎上もするし。
小川:タイミーはまだ炎上経験はないです。
望月:メイプルは客先常駐型の技術支援サービス(SES)という事業形態ですが、エンジニア業界では「嫌な仕事」「人売り」だと思われやすい。「結構いい仕事だよ」とツイートすると批判的な人に絡まれることもあります。
大事なのは、批判的に絡んできた人にも丁寧に対応すること。もし、その人をブロックすると今度は「ブロックされた」とツイートされて、もっと炎上する。批判的なツイートも必ずリツイートし、「ご意見ありがとうございます」と返信します。
アンチの人の方が、僕の発言の意図を納得してくれた時の拡散力がすごい。Twitter上でそんなやり取りをしていると、他の人たちも興味を持ってくれます。批判的な人、その周りの人の両者に丁寧な対応が伝わると、ファンになってもらえるんです。
鴛海:数えてはいませんが、プチ炎上はいっぱいありますね。メイプルは面接でも丁寧に接することを心掛けています。面接後に応募者がTwitterで「メイプルが1時間もキャリア相談に乗ってくれた」と書いてくれるんです。たとえ今が転職のタイミングではなくても、いつかメイプルに連絡をくれることもあるので、先を見て対応しています。
――Twitterをずっと見ている?
鴛海:そうですね。仕事はTwitterですよ。(笑)この世界は即レス即対応が重要。
望月:スカウトメッセージは5分以内を心掛けています。応募が来たらすぐに「鴛海から連絡があると思うので少しお待ち下さい」と一次返信し、すぐに鴛海も連絡する。応募が来たらプロフィールを見て検討する企業もあると思うんですが、「今からプロフィール見ます」だけでも返信します。「見てるよ」と先に伝える。
★Twitter採用の極意
・炎上したら批判的な人に最後まで丁寧に対応し、ブロックしない
・基本は「即レス即対応」。応募が来たらまず「今からプロフィールを見ます」と返信
――思いがけない事件はありましたか?
望月:社員が会社名を使って書いたツイートがあり、第三者から「あなたの社員がこんなツイートしてますよ」と言われたことがありました。社員も良かれと思って会社名を使ってつぶやいてくれたので…。その社員にどう伝えるかは難しいです。今は社内でSNSの規約をどこまで決めるかを考えています。厳しくしすぎるのも違うと思いますし。
小川:タイミーは今のところないですかね…あんまり尖っていないのかもしれないです。(笑)
鴛海:いやいやいや。(笑)
対談企画の前編では、両社のTwitter採用のコツや炎上への対応など、赤裸々な話が満載になりました。後編ではTwitter採用のメリットとデメリット、採用担当者の極意を語ります。【取材・編集:@人事編集部】
※後編はこちらから。「採用色を出しすぎない。Twitter採用の極意と運用の裏側」
【編集部より】
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