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採用学4周年記念セミナー・杉浦二郎氏講演(後編)


書類選考、面接、一切なし!「即、採用コース」はなぜ成功したのか

2017.11.09

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「なぜ採用をするのか?」採用の本質を問い続ける中で見えてきたのは、「シンプルにそぎ落とすこと」の大切さでした。今回は、採用学4周年記念セミナー(株式会社ビジネスリサーチラボ運営)の講演から、シンプルさを突き詰めた採用事例「即、採用コース」についてご紹介します。

※この記事は採用学4周年セミナー・杉浦二郎氏講演「母集団って本当に必要? 採用成功の鍵は、シンプルにそぎ落とすこと」の続編です。

杉浦 二郎(すぎうら・じろう)

jirosugiura01株式会社モザイクワーク・代表取締役社長

2015年9月まで三幸製菓人事責任者を務め、同年10月より現職。株式会社モザイクワークを設立し、採用プランナーとしても活動中。また、外部アドバイザーとして三幸製菓の17年度採用にも関与。「カフェテリア採用」「日本一短いES」等々を生み出し、TV、新聞、ビジネス誌等、多くの媒体に取り上げられる。イベントでの講演多数。また、地元新潟において、産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組んでいる。HP:http://mosaicwork.co.jp/

従業員約200人「総研ホールディングス」の事例

ということで、前置きが長くなりましたが、取り組み事例を1社ご紹介したいと思います。

総研ホールディングスさん。この会社さんは名前を出していいということで、あえて名前を出させていただいています。ホールディングスということで、外壁塗装・屋根塗装を主とするリフォーム会社「プロタイムズ総研」と、大家さんが直接入居者募集をできる賃貸情報サイト「ウチコミ!」の運営会社である「アルティメット総研」の2社がグループ会社です。

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資本金6505万、従業員数は今200名くらいなんですけれども、毎年20~30%くらい社員数が増え続けている会社です。創業が2011年なので、立ち上がって6年ちょっとの会社です。売上も順調で毎年ずっと上がってきていて、成長率は3倍近いです。

外壁の塗装リフォームというと、みなさんからしてもよく分からないだとか、正直なところ「ぼったくられるんじゃないの」だとか、あまりいいイメージのない業界かもしれません。

僕も中に入っていろんな話を聞いてわかったんですが、業界内では、平気でペンキ薄めちゃったりとか、やっぱりそういうことがあるらしいんですよね。そういう「業界の悪い風習に風穴を開けたい」っていう熱い思いを持って、総研ホールディングスさんは起業して参入しているという経緯があります。

学生から印象が悪い業界における、採用の現実

業界としては、基本的には外の仕事で、営業といってもやはり外ということで、なかなか大変な労働環境なんですね。ですので、人はなかなか来ないし、辞めていく人もいる。

採用のコンディションとしては、かなり厳しい状態でした。そこで、去年の7月から採用の取り組みを実質スタートさせたんですけれども、やってみて、驚きの連続でした。

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リクナビの登録でずーっとゼロが続く。人生ではじめての経験でした。「これ、なんのためにお金払ってんだろう」という状況が続きました。

学生に聞いても「そんな業界よく分からないです」とか、「あんまり行きたいとは思いません」みたいなことを言われてしまう業界ですね。

なので、もう一度やっぱり原点に立ち返ろうということで、役員のみなさん、社長も含めて、「そもそもなんで採用するんですか?」というところから、一緒に話し合ったんですね。

社員数が増えれば売上が上がる、シンプルな事業モデル

改めて話して分かったのが、事業モデルが極めてシンプルだということです。

実は「労働集約」に極めて近い産業なので、売上と人がどうしても紐づいている。人がいないと売上が上がらない。だから人が必要なんだと。そんなに学歴優秀な人じゃなくていいし、そんなにハイテクなものを扱っているわけでもないから、リテラシーが高くなくてもいいんだけど、やっぱり人がいてくれないと、ビジネスに繋がっていかない。

つまり、売上と社員数が、きれいにリンクして右肩上がりに伸びていく、分かりやすいモデル。これは、採用する必要がありますよね。そんな中で、採用をスタートしていったということがあります。

採用ターゲットの分析を、途中で辞めるという決断

次に「採用ターゲット」を設定しなくちゃいけないねということで、社員の方へのインタビューやアンケート調査など、わりとオーソドックスなことからスタートしたんですね。で、最初は受けてもらっていたんですけど、途中で分析をやめたんです。

なぜかというと「あっ、間違った」と。途中で私自身が気づいてしまった。この会社はこのやり方じゃない、というふうに思ったんですよね。「分析」をやる以前に、もっとやるべきことがあると思ったんです。

理由はいくつかあるんですけれども、まず思ったのが、スタートアップで事業モデルがどんどん変わっていく中で、細かく採用ターゲットを分析していったところであまり意味はないということ。今日分析したところで、来年になったらそのデータが使えなくなる可能性があるからです。

そもそも母数も、いろんなカテゴリに分けてしまった場合それぞれが数十人程度しかいなくて、分析に耐えられる可能性も極めて低い。

これは、分析自体がやりすぎなんじゃないかと。企業にはそれぞれのやり方があるし、「もう少しシンプルな形で考えよう」と思ったんですね。

求める人物像を無理に高く掲げることはない

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右側(多様性のある人材)を採用するには、それなりに分析をかけていく必要があるんですけれども、総研ホールディングスさんについては、左側(同質性の高い人材)をどんどん高めなきゃいけない時期なんですよね。

となったときに、「求める人物像」と言われるとどうしても高いところを求めがちなんですけれども、そうではないんだと。

総研ホールディングスさんの今のフェーズでは、人材を現状にとにかくフィットさせて、強固な組織を作り続けていく。この結びつきをとにかく高めていかなくてはいけない。そのためには、戦略を変えなければいけないと気づきました。

社内には、そもそも大卒の方はあまりいなかったんです。あまり新卒採用をしていない、ほぼ初年度のような状態で、社内には中卒あるいは高校中退の方もいたりする状態です。それで今回は、大卒の社員をメインで取りたいと。

杉浦さん、大卒来るんですか、エリートっすね!」みたいな会話が繰り広げられることがよくありました。彼らからしてみると「大卒来るんだ、すげぇ」みたいな状態だったんですね。

仲間意識の強い会社では、新卒を異分子にしてはいけない

ただその時、彼ら彼女らが「大卒」を意識している段階で、「これはヤバいぞ」と思ったんですよね。 本当に会社の同質性を高めるなら、そこにヒエラルキーを作ってはいけないし、「壁」を感じてはいけないわけです。

総研ホールディングスさんは「仲間意識」という考えや「お祭り企業」というコンセプトをとても大切にしていて、「社風担当役員」という役職も作っているんですね。おそらくこの役職があるのは全国でここだけだと思うんですが、それくらい、社風を大切にしている会社なんです。

このような会社に、新卒を「異分子」のような形で入れてしまうと、崩壊してしまうなと思ったんですね。

だから、社内のみんなが納得できないような、細かい分析をしてロジカルに説明して突き進むという採用活動をするのではなくて、シンプルな採用プランを考えなくてはいけないなと思ったんです。

そこで、もっとみんなが一緒に参加できるように、社員の方々が「この採用、超面白いじゃないですか」と言ってくれるような、そんな採用にしようということで方針を切り替えました。

1つだけ「これだけは持っていてほしい」というものを決める

その際に僕らが考えたのは「極めてシンプルにそぎ落とす」そして「本質を突く」ということです。

改めて社長と「一つだけ僕らが大事にしなければならないこと。これだけは持っていてほしいというものを決めましょう」という話をしました。

それで、一生懸命みんなでディスカッションして決まった、一個だけ大事にしなければいけないものというのが「覚悟」だったんですね。

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先ほど申し上げたように、高卒の方が多かったりだとか中卒の方がいたりだとか、大卒の方がそもそもいない集団の中に、いっしょに仲間として溶け込める、そういう覚悟を持ってもらいたいと。

それで、現場の人たちも、「覚悟さえ持っていてくれれば、僕らがなんぼでも育てます。」「だから覚悟だけは持っていてほしいんです」と、そう約束してくれたんですね。

ですので、「覚悟」を持った人を採る、という要素は必ず入れたうえで、さらに採用としての「面白さ」を出そうと考えました。

採用を考えるときには、みんなが「これすごいっすね」と驚くことを僕らは提案したいと思っていて、そこで考えたのが「即、採用コース」です。

連絡先と入社希望日を記入すると内定が出る「即、採用コース」

この採用は、「即、採用コース」のWebページに行って、「連絡先」「電話番号」「入社希望日」、この3つを入力したら、内定が出ます。内定するんです、本当に。

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入社希望日は一応プルダウンになっていまして、毎月入社できるようになっています。それと、「辞退はできない」という制約がかけられています。

みなさんからすると「えっ」と驚くだろうし、「こんなんで内定出しちゃうの?」と感じられると思うんですね。

実際にこのプランを出したときに、社長には事前に一生懸命説明したのでOKしてくれたんですが、いろんな方から本当に心配されました。

役員からも個別に連絡をもらって「杉浦さん、あのプランはないよ。大丈夫なの?」という声をいただいて。

ただ、そこからみなさんに丁寧に説明していったんです。

「いいですか、逆に考えてみてください。よく分からない、会ってもいない、面接もされていない会社のWebページで、『連絡先と入社希望日だけ入れて、内定が出ます。ただし辞退はできません』と言われて、普通の人が連絡先入れますか? 応募するのは、よっぽど覚悟のできた人ですよ? 僕だったら、応募しないです」

こう話をしたんですね。そうしたらみんなけっこう笑ってくれて、「なるほど、たしかに」と。「これを入力して来るのは、よっぽどのやつだよな」と理解をしてくれて。「これやってみよう」。「逆にこんなので来る奴どんなやつか見てみたいな」というふうにその場が盛り上がったんですね。

集め方自体に工夫を凝らし、「来てほしい人」にだけ応募させる

僕らはとにかくシンプルに考えたんです。

相手の「覚悟」をアセスメントツールや適正検査で判断するんじゃなくて、入口のところで極めてシンプルに見極めましょうと。

リソースもそもそもないですし、長く採用を行っている会社でもありませんから、中の人たちがそんなに採用・選考を回せるわけではない。となれば、「集め方そのもの」に工夫を凝らすしかないんですよ。

つまり、「こういう人だけ来てほしい」というメッセージを、一番最初のところに持ってくる。「覚悟」を持っている人だけが応募できる仕組みを作って、打ち出す。

結果として、「即、採用コース」では今3名内定してます。

実はそれ以外にも「弟子入りコース」だとかいろいろ違うコースも設けていて、内定している方はいるんですけれども、内定式をやったときに、社長が「この子とこの子とこの子、いいよね」と言った3人の内定者が、全員、即採用の子たちだったんですね。

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当然、社長もその子たちもお互いはじめて会っているんですけれども、やっぱり、全然違うんですよ。もう、入る気満々どころか、入った後のことすら想定している。「入口」の部分で人材を見極めた結果、覚悟のできた子たちが集まったわけです。

「いつから研修はじめるんですか」とか、なんだったら「今もう入っていいですか」みたいな人がいたりだとかですね。その子たちが横の内定者たちに「この会社やっぱりいいよね」と言ってくれて、さらに伝播していったりだとか、そういう面白い現象が起きています。

ということで、これまでの取り組みとは全く逆かもしれませんが、僕らの取り組み「即、採用コース」をご紹介させていただきました。

【編集部より】
「採用学」著者、服部泰宏先生による、杉浦二郎氏へのフィードバック記事はこちら。

「採用学」に関する、この他の記事はこちら。

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