厚生労働省
【令和3年版 過労死等防止対策白書】過労死等の認定、近年は脳・心臓疾患が減少もうつ病などの精神疾患は増加。令和2年度は前年比約100件増の608件
2021.10.27
厚生労働省は10月26日、「令和3年版 過労死等防止対策白書」を発表した。
白書の中から、主にうつ病などの精神障害に関する調査結果や、企業のメンタルヘルス対策の状況などについて抜粋して紹介する。
関連記事:20年ぶりの変更と3年ぶりの大改訂【社労士解説】労災の過労死認定基準・過労死等防止対策大綱の重要なポイント
主なトピック
- うつ病などの精神障害の認定件数は、前年度から約100件増の608件、うち自殺(未遂を含む)に係る支給決定は81件で前年度から7件減少
- 精神障害で自殺した人の発病時の年齢階層別で最も多いのが「40~49歳」が163 件(32.8%)
- 精神障害で自殺した人の業種別で最も多いのが「製造業」で107 件(21.5%)
- 精神障害で自殺した人の職種別の自殺事案数は上から「専門的・技術的職業従事者」が175件(35.2%)、「管理的職業従事者」82件(16.5%)
- 自殺事案を発病から死亡までの日数別にみると「6日以下」が235件(47.3%)で最も多く、早期発見・対応が求められることが分かった。
- 自殺事案の労災認定の疾病に関して医療機関への「受診歴なし」が約3分の2の318件(64.0%)で、本人以外の周囲の人間が発見する重要性もうかがえた。
労災認定と過労死等の現状
白書によると、令和2年度の脳・心臓疾患の労災補償の認定件数は194件でうち死亡に係る支給決定は67件でいずれも前年度から減少している。
一方、うつ病などの精神障害の認定件数は、前年度から約100件増の608件、うち自殺(未遂を含む)に係る支給決定は81件で前年度から7件減少だった。
近年、脳・心臓疾患は減少傾向、精神障害は増加傾向にある。
民間雇用労働者の労災補償の状況
※令和2年度については、新型コロナウイルス感染症に関連する(*)脳・心臓疾患の支給決定(認定)件数は0件、精神障害の支給決定(認定)件数は7件であった。
*請求人が業務で新型コロナウイルス感染症に関連する出来事などがあったと申し立てたもの
図:令和2年度我が国 に おける過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和3年版過労死等防止対策白書の概要)[厚生労働省]より
過労死等をめぐる調査・分析結果(うつ病などの精神障害事案のうち自殺事案の抽出・分析)
平成24~29年度(2012~18年度)に、精神障害事案で過労自殺と認められた497人について分析した結果では、性別の内訳で479件(96.4%)が男性、18件(3.6%)が女性だった。
発病時の年齢階層別
発病時の年齢階層別にみると、「40~49歳」が163 件(32.8%)で最も多く、「30~39 歳」が129件(26.0%)、「29歳以下」が99件(19.9%)が続く【図:第2-1-11】。
図:令和3年版過労死等防止対策白書(本文)[厚生労働省]より
業種別の自殺事案数
業種別の自殺事案数は最も多いのが「製造業」で107 件(21.5%)。次いで「建設
業」77件(15.5%)、「卸売業,小売業」63件(12.7%)だった【図:第2-1-12 図】。
図:令和3年版過労死等防止対策白書(本文)[厚生労働省]より
職種別の自殺事案数
職種別の自殺事案数は「専門的・技術的職業従事者」が175件(35.2%)、「管理的職業従事者」82件(16.5%)、「事務従事者」77件(15.5%)の順だった【図:第2-1-13 】。
図:令和3年版過労死等防止対策白書(本文)[厚生労働省]より
発病からの死亡までの日数、労災人手の疾病に関する医療機関の受信状況
自殺事案を発病から死亡までの日数別にみると「6日以下」が235件(47.3%)で圧倒的に多く、なるべく早い対応が求められることが分かった。
また、自殺事案の労災認定の疾病に関して医療機関への「受診歴なし」が約3分の2の318件(64.0%)、1か月の残業が160時間以上の「極度の長時間労働」があったケースではさらに割合は増加し67件(76.1%)であったことから、本人以外の周囲の人間(家族や友人、職場の上司や同僚など)が発見する重要性もうかがえる。
※ 平成24年4月から平成30年3月までに労災認定された自殺事案を抽出・分析。
図:令和2年度我が国 に おける過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和3年版過労死等防止対策白書の概要)[厚生労働省]より
具体的出来事別の自殺事案数
自殺事案の具体的な出来事(理由)別データを見ると、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が177件(35.6%)が最も多いことが分かった。以降、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」109件(21.9%)、「上司とのトラブルがあった」92件(18.5%)、「極度の長時間労働」が88件(17.7%)、「恒常的な長時間労働」が201件(40.4%)が続く【図:第2-1-17】。
図:令和3年版過労死等防止対策白書(本文)[厚生労働省]より
職場におけるメンタルヘルス対策の状況
令和2年度の「メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合」は61.4%で、前年度から微増しているものの、目標の「令和4年度に80%」達成には企業規模50人以下の事業所に向けたより一層の取り組みが求められる。
図:令和2年度我が国 に おける過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和3年版過労死等防止対策白書の概要)[厚生労働省]より
また、「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業所割合」は、令和2年度時点で目標の「令和4年度に60%」を超えているものの、「仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者割合」は、平成30年から減少しており、目標に向け国や自治体からの働きかけが必要だ。
図:令和2年度我が国 に おける過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和3年版過労死等防止対策白書の概要)[厚生労働省]より
以下、厚生労働省の発表情報および、記事の参照元情報
令和3年版過労死等防止対策白書
「令和3年版 過労死等防止対策白書」の主なポイント
- 本年7月30日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下「大綱」という。)の変更経緯やその内容について報告。
- 大綱において定める重点業種等のうち、自動車運転従事者、外食産業に関する労災認定事案の分析など、企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果(新型コロナウイルス感染症の影響を含む)を報告。
- 長時間労働の削減やメンタルヘルス対策、国民に対する啓発、民間団体の活動に対する支援など、昨年度の取組を中心とした労働行政機関などの施策の状況について詳細に報告。
- 企業でのメンタルヘルス対策や勤務間インターバル制度の導入など、過労死等防止対策のための取組事例をコラムとして紹介。
■本文(「白書、年次報告書」のページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/21/index.html
「白書、年次報告書」のページに、白書本文の全体版と分割版を掲載
■骨子
https://www.mhlw.go.jp/content/000847737.pdf
骨子[PDF形式:2,446KB]
■概要
https://www.mhlw.go.jp/content/000847738.pdf
概要[PDF形式:3,305KB]別ウィンドウで開く
【参照】報道発表資料「令和3年版 過労死等防止対策白書」を公表します」2021年10月26日・厚生労働省)
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