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コラム

@人事 ドイツ支部通信


ドイツでは「入社時期がバラバラ」でもなぜうまくいくのか

2019.05.24

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スーパーを展開しているサミット株式会社が、中途入社の社員を通年採用すると発表した。また、入社時期を年3回から毎月に増やし、新卒の通年採用も検討していると日本経済新聞が報じている。

通年採用への注目は日に日に高まっており、それと同時に「入社時期を限定しない採用」についての議論も活発だ。今回は、随時入社のドイツを踏まえ、どうやったら入社時期を限定せずに採用できるかを考えていきたい。

雨宮紫苑雨宮 紫苑(あまみや・しおん)

ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。

目次
  1. 需要が高まる通年採用とそれにともなう随時入社
  2. 随時入社が一般的なドイツの仕組み
  3. インターンシップやアルバイトを活用し、基礎を学んでもらう
  4. 入社時期を限定しないことで採用活動をさらに柔軟に

需要が高まる通年採用とそれにともなう随時入社

より柔軟な採用活動を目指し、通年採用の導入が進んでいる。ソフトバンク、ヤフー、リクルート、ファーストリテイリング(ユニクロ)といった名だたる大企業も積極的に取り入れているほどだ。

通年採用のメリットとしては、既卒や帰国子女など、従来の就活スケジュールではターゲットにしづらかった層にもリーチできること、内定辞退されてもカバーしやすいことなどが挙げられる。

売り手市場である現在、「できるだけ多くの人を対象に募集をかけたい」という企業は多い。その手段として、通年採用はこれからも増えていくだろう。

しかし、通年採用によって随時内定を出すようになれば、「入社時期をどうするか」という問題が起こる。いまのところ新卒は4月1日入社が主流だが、通年採用が広まればそうもいかなくなるのだ。

では、随時入社に必要な仕組みとは、どんなものだろうか。

随時入社が一般的なドイツの仕組み

ドイツは、全員同時に大学を卒業してそのまま就職、という仕組みではないので、入社時期はみんなバラバラだ。

大学の単位取得がむずかしいため自分のペースで履修していき、学生の約半数が卒業を伸ばす。大学在籍中にインターンをして職歴をつくり、卒業の見込みが立つ、もしくは卒業してから就活をはじめる。内定が出れば、双方が合意したタイミングで入社だ。

そう聞くと「採用する側は大変なのでは?」と思うかもしれないが、そうでもない。

まず、ドイツは欠員募集で即戦力採用が前提なので、新卒であっても入社すればすぐに仕事を任せられる。必要に応じて指導はされるが、基本的に新人一括研修はない。だから、入社時期がバラバラでも問題ないのだ。

また、同一労働同一賃金が前提なので、いつはじめても給料は同じである。たとえば、まったく同じ仕事をするAさんとBさんは、1年目だろうが2年目だろうが同じ給料をもらう。年次による区別がないので、いつ入社しても問題ない。

さらに、文化的に先輩後輩関係が日本のように明確ではないため、「数カ月先に入社した同期にタメ口でいいのか?」「どこまでを同期と呼んでいいのか?」なんてことにもならない。

ほかにも、ドイツではどの企業で働くかよりも何をするかが大事なので、企業による学生の奪い合いが起きづらいというのもある。企業は欠員が出たら求人を出し、学生は就職できるタイミングで望むポジションの募集をしている企業を探す。そのため、「通年採用だから広報で苦労する」という心配は必要ない。

こういった仕組みなので、ドイツでは必然的に随時入社になるし、それが可能なのだ。

インターンシップやアルバイトを活用し、基礎を学んでもらう

では、日本ではどうだろう。通年採用を実施すれば、いままで一般的だった「一斉に採り、育てる」ことができなくなる。それが通年採用、随時入社導入の最大のハードルかもしれない。

これを解決するために、学生に入社前に業務に必要な基礎知識を身につけてもらうのはどうだろうか。

ポテンシャル採用の日本でそれがむずかしいのは承知しているが、たとえば事前にアルバイトやインターシップ生として雇って最低限の知識を身につけておいてもらうのだ。1年に数度の入社時期を設け、内定後は入社までアルバイトしてもらってもいい。

定年まで同じ企業に勤め続けることが一般的ではなくなった現在、どの部署に配属されるかわからないままでの採用は、それだけで離職につながる可能性すらある。早期離職者を出さないためにも、採用の段階で仕事内容を明確にし、相手にもそのつもりで勉強しておいてもらうほうがいいだろう。

メンバーシップ型の採用からジョブ型の採用に、という機運が高まっていることもあり、「仕事内容を明確にし、その業務に適した人材を採用する」という方向にシフトチェンジしていくいい機会かもしれない。

オフィスで会話する人々

また、一括研修の見直しは、通年採用の際に指摘されがちな広報のむずかしさの打開策にもなる。長期休暇中にだけフルタイムバイトをしてもらったり、週1で長期のインターンシップを実施したりと、学生をいつでも積極的に受け入れられる体制にしておくことで、広報の効果も期待できる。

研修内容にもよるが、Eラーニングを活用すれば、対面でみんな一緒に研修を受ける必要もなくなる。一括研修を再検討すれば、随時入社実現のハードルはかなり下がるのだ。

入社時期を限定しないことで採用活動をさらに柔軟に

通年採用についての議論が盛り上がるなか、通年採用のメリットを最大限に活かすためには、「随時入社」についても考えていく必要がある。

いままで新卒一括採用が一般的だったため、入社時期を限定しない採用はまだ馴染まないかもしれない。しかし大学のあり方や仕事に対する考えが見直されている現在、採用の入り口を広くして柔軟に対応することは、今後より一層大切になるだろう。

通年採用を検討している企業は一度、随時入社の可否についても考えてみるといいのではないだろうか。

執筆者紹介

雨宮紫苑(フリーライター) ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

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