2019年4月「改正出入国管理法」施行が決定
人事担当者が知っておくべき改正入管法と外国人雇用のポイント
2019.02.04

改正出入国管理法(以下、改正入管法)案が昨年12月に成立し、2019年4月から施行される。この改正の目的は、外国人労働者の受け入れを拡大することだ。深刻な人手不足を打開する策とみる一方で、日本人雇用に与える影響を懸念する声や、移民問題、保険制度などの受け入れ体制が整っていない中での実施は早計だという意見もある。
人手不足に悩む企業にとって、この法改正は救いの手となり得るのだろうか。
改正入管法のポイントと、企業に与える影響について、特定社会保険労務士の永井知子先生、フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表松井勇策先生、両名の見解を聞いた。
改正出入国管理法と外国人雇用のポイント
2019年4月から、改正入管法の施行が決まりました。制度運用の詳細が決まっていない部分があることも懸念されていますが、結論から言いますと、入管法の改正は必然でもあり、さまざまな利点もあります。今回は、改正入管法の概要と必要性について概観します。
入管法の前提としての外国人労働者の現状
日本の人手不足は非常に深刻であり、到底、国内で賄いきれない現状があります。こういう中で外国人労働者に頼る以外に選択肢は多くありません。外国人の労働に懸念を示すような意見もよく聞かれますが、国内の現状は、さまざまな制度改正によって改善に向かいつつあります。
過去においては、外国人労働者である技能実習生などを受け入れている企業に対する指導が完全ではなく、企業の自主性に任せていたところがありました。しかし、2017年11月の制度改正により、外国人技能実習制度に関わる監理団体に所属するすべての監理責任者や、受け入れ企業に所属するすべての技能実習責任者には、技能実習制度に関する講義の参加が義務付けられています(経過措置あり)。この講義では、技能実習法や労働基準法、出入国管理法をはじめとした法令順守や、労働災害防止のための実務的な指導もしています。
このように新しい制度では、受け入れ企業に対して手厚いサポートが行われているのです。
外国人による労働には課題が残るものの、改善に向かっていることは事実です。そして外国人労働者の活用は前提であり、その前提を成り立たせるのが改正入管法であると言えます。
改正入管法の内容と効果
改正入管法では、新たな在留資格が設けられました。以下の2つです。
【特定技能1号】
技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば得られる在留資格です。在留期間は通算5年で家族帯同は認めません。
人手不足が特に深刻な、農業、漁業、飲食料品製造、外食、介護、ビルクリーニング、素材形産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊の14業種での適用を想定しています。
【特定技能2号】
特定技能1号よりさらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与える在留資格です。更新が可能で、更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく、長期就労も可能です。家族の帯同も認められています。2号での滞在期間は永住権取得の要件の一つである「5年の就労期間」に算入されます。
※特定技能2号については詳細未定(2019年2月4日時点の情報をもとに作成)
改正入管法施行により期待される効果
労働力不足の改善
改正入管法は、労働力不足の現状に対する解決策です。
政府では特定技能1号について、2019年度から5年間で最大約34万人の受け入れを見込んでいます。これによって、製造業をはじめとした多くの人手不足の業種で技能実習生以外の外国人労働者の受け入れができるようになりますし、留学生に頼らざるを得なかったサービス業の分野でも人手不足が軽減される見込みです。
今まで高度な専門職に限定してきた外国人の受け入れを単純労働へも拡大するため、今まで技能実習生や留学生アルバイトに頼らざるを得なかった分野の人手不足も改善されることが期待されます。
より良い労働環境の提供
改正入管法は労働力不足を改善するだけではなく、今後連動して行われる施策によって、外国人労働者の労働環境を改善する効果もあります。
例えば、法改正に合わせて、ベトナムやフィリピンなどアジア9カ国と2国間協定を結びます。これによって、警察当局が捜査情報を互いに共有できるようになるため、従来問題となっていた、技能実習制度における外国送り出し側での悪質なブローカーの摘発につなげることもできます。
さらに政府は、外国人労働者の生活環境改善策も検討しています。例えば、外国人労働者は金融機関によっては来日してから一定期間、銀行口座が作成できないことがありました。法改正後はすべての金融機関で口座を開設できるように検討されています。
外国人技能実習生に対しての入国後講習終了後の日本語教育については、法令での規制がないために企業によっては全く対応していないところもありました。この点についても政府が日本語習得の支援をすることにより、外国人労働者全体に向けての改善が期待されます。
その他、都道府県に日常生活の相談窓口を設置したり、公共機関の窓口に翻訳システムを導入したり、地方の外国人の住環境も改善しています。外国人受け入れで先導的な取り組みをした自治体への財政支援も検討されており、より理想的な方向に進んでいくことが期待されます。
人事担当者が取り組むべきこと
それでは実際に外国人労働者を受け入れる際に、企業として対応が必要なこと、対応が望まれることについて解説します。
1.外国人雇用で必要な知識の確認
【在留資格、在留期限の確認】
外国人は、出入国管理及び難民認定法で定められた在留資格の範囲内において、日本での就労活動が認められます。在留資格で認められた範囲や在留期間を超えて就労すると不法就労になります。留学生の場合、資格外活動の許可があればアルバイトができますが、週28時間を超えて就労すると不法就労になります。
外国人を不法就労させた場合、事業主も不法就労助長罪として処罰の対象となります(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又はこれらを併科)。不法就労者であることを知らなかった場合でも,在留カードを確認していないなどの過失がある場合は処罰を免れません。書類送検される企業もあるため、特に注意が必要です。
【労働時間の管理】
労働基準法をはじめとした諸法令は国籍を問わず適用されるため、日本人の労働者と同様に労働時間の管理が必要です。
前述のように、資格外活動の許可がある留学生であっても、週28時間を超えて就労すると不法就労になります。よって資格外活動で働く外国人の場合は、労働時間を週単位でも確認しておく必要があります。
【外国人雇用状況報告書の提出】
外国人(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇入れまたは離職の際に、氏名、在留資格、在留期間などについて、厚生労働大臣(ハローワーク)への届け出が義務付けられています。雇用保険被保険者の場合はもちろん、アルバイト等で雇用保険の被保険者でない場合も届け出が必要です。この届け出を怠ると、30万円以下の罰金が科されます。
2.社内制度の見直し
【仕事の範囲を明確にする】
外国の企業では、ジョブディスクリプション(職務記述書)により仕事の範囲が明確にされているのが通常です。日本では大企業であっても職務記述書を作っていないところが多いですが、外国人労働者に納得して働いてもらうためにはジョブディスクリプションは作成しておいた方がよいでしょう。
【通年採用の導入】
新卒採用を春に限定するのではなく、年に数回、必要に応じて採用する形態です。通年採用を導入することで外国人労働者だけではなく、海外の大学を卒業した者や帰国子女の秋採用なども可能になります。
【職種別採用の導入】
外国人の場合、ジョブローテーションによる異動があると、職種によっては在留資格の活動範囲外になり就労が難しくなる人もいます。資格外活動の許可を得るか、在留資格の変更を行うことで異動が可能になることもありますが、一貫したキャリアプランを提示するためには職種別採用制度を導入するのも効果的です。
【長期休暇の取得可能時期の見直し】
日本の企業では、お盆とお正月に長期休暇を取ることが多いですが、例えば中華圏の労働者の場合は2月の旧正月、フィリピンや欧米系の労働者ではクリスマス、イスラム教圏ではラマダン(断食月)に合わせて長期休暇を取る傾向があります。
具体的な対応として、お盆とお正月に限定せずに長期休暇を取れるようにしたり、同じ国籍の人が同じチームに数名いるようであれば、ローテーションにして毎年交代で休暇を取得してもらったりする方法があります。
3.日常生活のフォロー
前述のように外国人労働者の住環境の改善もこれから進められますが、企業側のサポートも重要です。
例えば、病院に行くときや賃貸物件を借りるとき、役所で手続きをするとき、クレジットカードや口座を作るときなどです。人事側で外国人の生活をサポートすることで、外国人も安心して職務に専念できることになります。
法改正を契機と考え、労働力拡大を前向きに捉える
外国人労働者はこれからの日本を支えてくれる大切な人材です。企業がさらなる発展を遂げ、より豊かな社会システムを構築していくために、行政だけでなく企業側もさまざまな工夫をしていく必要があります。改正入管法を前向きに捉えることにより、企業の業績アップや従業員のモチベーションアップにつなげることもできるのです。
執筆者紹介
松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト)
東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。
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永井知子(特定社会保険労務士)
コスモポリタン インターナショナル HRソリューションズ代表。 青山学院大学大学院 法学研究科 ビジネス法務専攻 人事労務コース 修士課程修了(ビジネスロー)。イギリスで語学留学後、外資系企業の人事部やアウトソーシング会社にて10年以上勤務。主に給与計算・社会保険事務・就業規則見直し・労務相談等の業務を担当。海外赴任に伴う給与計算・社会保険事務、外国人の労務管理について専門誌で多数執筆。
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