コラム

城繁幸、ニュースを斬る


一億総活躍時代、人事担当者として取り組むべきこととは?

2016.01.22

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一億総活躍時代と人事制度

安倍政権の掲げる“一億総活躍時代”というスローガンが話題となっている。今後、人口減が避けられない中、目指す方向性としては正しい。とすれば、その方向性に対し、企業は人事制度をどのようにマッチングさせるべきだろうか。

従来の日本型雇用制度を振り返る

まず、従来の日本型雇用制度がどのような設計思想だったのかを整理してみよう。戦後に確立した終身雇用、年功序列制度は、以下のようなコンセプトに基づいたものだった。

  • 若者は常に余剰気味
  • 組織は拡大し続けるもの
  • 長期雇用は素晴らしい

団塊世代が社会に出た1960年代から、その子供たちである団塊ジュニアが巣立った1990年代まで、基本的に社会には若い働き手があふれ、企業は若い人材だけを働き手として確保することが容易だった。

そして、90年代初頭まで経済は安定成長を続け、売上げは拡大し、組織は常に拡大するものと相場が決まっていた。そうした経営環境においては、若い人材を自社に特化した形で育成し、長期間雇用するスタイルが合理的だった。

転機は2000年前後から

ただし、2000年前後から歯車は逆転し始める。現在、先述のコンセプトはすべて裏返しとなっている。新成人数は団塊ジュニアと比較して4割減り、企業が若い人材だけをえり好みできる状況ではなくなった。人口減で国内マーケットの縮小が確実な中、組織は拡大よりもスリム化が課題であり、必然的に「将来的にポストで報いる」という年功序列的報酬システムは形骸化しつつある。

そうした諸々の結果として、もはや長期雇用は組織にとって合理的とは言えなくなっている。20年かけてゼロから新人を育成するよりも、マーケットからその都度必要な人材をリクルートし戦力化できる人事制度の方が、長い目で見れば合理的と言える時代の到来だ。

そう考えると、一億総活躍の時代に必要な人事制度の方向性は明白だろう。勤続年数や入社年次による一括管理から、性別、年齢によらずに活躍できるシステム、そして「将来のポスト」ではなく、より短いスパンかつ基準の明快な報酬制度の整備が必要となるだろう。

具体的に言えば、年齢給、職能給といった属人給から、役割給、職務給といった属人的要素によらない賃金体系へのシフトを徐々に進めること。通年採用や社内公募といったキャリアパスの多様化を進め、組織内の新陳代謝を図ることが挙げられる。

従来の人事担当者は、常に「いかにして人材を辞めさせないか」を念頭に業務を遂行していたものだが、これからは「いかにして多様な人材を採用し、戦力となってもらうか」に注力すべきだろう。

執筆者紹介

城繁幸(じょう・しげゆき)(人事コンサルタント・作家) 1973年生まれ。東京大学法学部卒。富士通を経て2004年独立。06年よりJoe’sLabo代表を務める。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社)、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』(筑摩書房)、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』(PHP研究所)など。

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