有期契約労働者に関する調査2018(後編)
正社員になれず有期契約で働く人の4割「やりがい感じず、職場に不満」
2018.07.05
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津里季生)が、6月28日に「有期契約労働者に関する調査2018」の結果を発表した。
調査は、無期労働契約への転換が始まって以降の、有期契約労働者の改正労働契約法の認知状況や改正労働契約法についての考えや実態を把握するため、2013年および2017年に行った調査に続き3回目。
前編、中編の記事に引き続き、同調査の結果について紹介していく。今回の記事では、主に有期契約労働者の仕事のやりがいについて報告する。以下、リリースより。
・前編:有期契約労働者の約7割「無期労働契約への転換の内容を知らない」
・中編:調査で見えた不合理な格差 非正社員の一部、食堂の利用を許可されず
働き方・職場の満足度
◆働き方の満足度 正社員になれず有期契約で働いている人の6割強が「不満」
◆正社員になれず有期契約で働く人の4割強が仕事のやりがいを「感じない」、現在の職場に「不満」も4割強
有期契約労働者は、現在の働き方や職場にどのくらい満足しているのか。
正社員になれず有期契約で働く“不本意有期契約労働者”が4割以上
まず、全回答者(1,000名)に、【有期契約で働くことになった状況】を聞いたところ、『自ら進んで(に近い)』(「近い」と「やや近い」の合計、以下同様)が57.9%、『正社員になれなくて(に近い)』が28.3%、「どちらともいえない」が13.8%となった。
雇用形態別にみると、契約社員では、『自ら進んで(に近い)』が33.8%に対し、『正社員になれなくて(に近い)』が44.7%となり、不本意ながら契約社員として働いている人のほうが多い結果となった。
“不本意有期契約労働者”の6割が、現在の働き方・雇用形態に不満
現在の働き方・雇用形態や今後の働き方・雇用形態については、どのように考えられているのか。
全回答者(1,000名)に、【現在の働き方・雇用形態の満足度】を聞いたところ、『満足(に近い)』が42.8%、『不満(に近い)』が29.8%、「どちらもといえない」が27.4%となった。
不本意ながら有期契約労働者として働いている人(正社員になれなくて有期契約労働者になっている人)についてみると、『満足(に近い)』が12.7%、『不満(に近い)』が62.2%となり、現在の働き方・雇用形態に不満を抱えている人が多いことがわかった。
“不本意有期契約労働者”の6割以上が、正社員での就業を希望
また、【今後の働き方・雇用形態の希望】を聞いたところ、『このままでよい(に近い)』が45.2%、『正社員になりたい(に近い)』が29.9%、「どちらともいえない」が24.9%となり、今後も現在の働き方・雇用形態でよいと考えている人が多いことがわかった。
不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、『このままでよい(に近い)』が10.3%、『正社員になりたい(に近い)』が67.5%となり、正社員での就業を希望する人のほうが多い結果となった。
現在の仕事にやりがいを感じるのは、全体の約4割
次に、現在の仕事にやりがいを感じるかどうかや、職場の満足度についても聞いた。
全回答者(1,000名)に、【仕事のやりがい】について聞いたところ、『感じる(に近い)』が39.6%、『感じない(に近い)』が28.4%、「どちらともいえない」が32.0%となった。
“不本意有期契約労働者”の約4割が、仕事にやりがいを感じない
【現在の職場の満足度】を聞いたところ、『満足(に近い)』が43.6%、『不満(に近い)』が26.7%、「どちらともいえない」が29.7%となった。
不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、【現在の仕事のやりがい】では『感じない(に近い)』(42.0%)のほうが高くなり、【現在の職場の満足度】では『不満(に近い)』(41.3%)のほうが高くなった。不本意ながら有期契約労働者になった人には、仕事にやりがいを感じられなかったり、現在の職場に不満を抱えたりしている人が多いよう。
有期契約労働者が抱える職場の不満
では、有期契約労働者が抱える職場の不満とはどのような不満なのか。
職場への不満1位「給料が安い」
全回答者(1,000名)に、現在の職場に対する不満を聞いたところ、「給料が安い」が最も多く46.1%、次いで、「給料が上がらない」が42.7%、「働きぶりが評価されない」が19.8%、「職場の人間関係が悪い」が18.5%、「正社員がちゃんと働いていない」が18.1%となり、給料に対して満足がいかないという人が多い結果となった。
不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、「給料が安い」が63.3%(本意36.8%)、「給料が上がらない」が56.5%(本意36.6%)で、自ら進んで有期契約労働者として働いている人よりそれぞれ26.5ポイント、19.9ポイント高くなった。
また、「働きぶりが評価されない」(本意16.8%、不本意27.9%)や「正社員がちゃんと働いていない」(本意14.9%、不本意27.9%)でも不本意ながら有期契約で働いている人のほうが10ポイント以上高くなっており、自身が適切に評価されていないことや正社員の働きぶりに関する不満を抱えている人が多いことがわかった。
【これまでの調査結果はこちら】
・前編:有期契約労働者の約7割「無期労働契約への転換の内容を知らない」
・中編:調査で見えた不合理な格差 非正社員の一部、食堂の利用を許可されず
本調査へのコメント(独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策研究所副所長 荻野 登 氏)
労働契約法第18条の無期転換ルールが本格的に実施された今年4月以降、直近の状況を知るうえで、貴重なデータを提供している。
それによると、転換申込権の対象者(175 人)のうち4 人に 1 人が「無期転換を申し込んだ」としている。この割合について、評価を下すことは 難しい。それよりも、改正法についての認知がどこまで進んでいるのかを確認することが重要だと思われる。無期転換ルールを知っているとの回答は、2017年の前回調査から倍増し、31.7%となった。
一方で、ルールは知っているが「内容までは知らなかった」が前回とほぼ同じ3 割程度を占める。内容まで踏み込んだ周知がいまだ不十分な実態が浮かび上がってくる。
では、改正法の認知経路としてはどこが多かったのか。調査結果によると、「マスコミ」が 51.6%で最も多く、次いで「勤務先からの説明」が40.1%で続いている。当機構が2016年10月に実施した改正労働契約法への対応に関する企業調査では、3社に1社が無期転換申込権の発生にかかわる周知について、「未定・ 分からない」と回答していた。この 1 年半で、企業からの周知はある程度進んだとみることができる。
一方、当機構の調査で「労働組合等からの提案」は1%に満たなかった。2018年春季生活闘争では無期転換の促進などに取り組む労働組合の割合が前年に比べて、倍増したようだが、今後も通年の課題として対応を強めていく必要がありそうだ。
一方、20条(不合理な労働条件の禁止)に関連する事項としては、いまだに通勤手当が約3割、食堂の利用で約2割が対象外となっている。慶弔休暇では対象外が約4割を占める。今後、無期転換後の待遇改善にむけて、労働組合が積極的にその役割は果たしていくことが重要である。
[調査概要]
◆調査タイトル:有期契約労働者に関する調査2018
◆調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)
◆調査期間:2018年5月16日~5月17日
◆調査方法:インターネット調査
◆調査地域:全国
◆有効回答数:1,000サンプル
【プレスリリース「連合調べ「無期労働契約への転換」の内容を 知らない有期契約労働者が依然68%」(@Press)より|2018年6月28日・日本労働組合総連合会)】
【編集部より】
無期転換ルールに関する記事はこちら
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