有期契約労働者に関する調査2018(前編)
有期契約労働者の約7割「無期労働契約への転換の内容を知らない」
2018.07.05
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津里季生)は、6月28日、「有期契約労働者に関する調査2018」の結果を発表した。
調査は、無期労働契約への転換が始まって以降の、有期契約労働者の改正労働契約法の認知状況や改正労働契約法についての考えや実態を把握するため、2013年および2017年に行った調査に続き3回目。
これから、全3回(前・中・後編)に分けて、同調査の結果について伝えていく。以下、リリースより。
・中編:調査で見えた不合理な格差 非正社員の一部、食堂の利用を許可されず
・後編:正社員になれず有期契約で働く人の4割「やりがい感じず、職場に不満」
2013年4月施行改正労働契約法の認知状況
「無期労働契約への転換(第18条)」内容の認知率は上昇も、内容を知らない有期契約労働者が依然68%
「不合理な労働条件の禁止(第20条)」の内容を知らない有期契約労働者は83%
全国の20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)1,000名(全回答者)に、2013年の4月(一部は2012年8月)に施行された改正労働契約法の内容を説明したうえで、【無期労働契約への転換(第18条)】と【不合理な労働条件の禁止(第20条)】の内容を知っていたか聞いた。
「無期労働契約への転換」の内容を知らない有期契約労働者は68%
まず、【無期労働契約への転換(第18条)】についてみると、「ルールの内容まで知っていた」は31.7%(昨年は15.9%)、他方、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」は37.0%、「ルールができたことを知らなかった」は31.3%で、合計した『内容を知らなかった(計)』は68.3%(昨年は84.1%)となった。
内容を知っていたという人の割合は昨年より上昇しているものの、内容を知らなかったという人の割合は68.3%と依然として高い水準となった。雇用形態別にみると、契約社員では、「ルールの内容まで知っていた」は昨年19.6%→今年44.0%と24.4ポイントの上昇となった。
「不合理な労働条件の禁止」の内容を知らない有期契約労働者は83%
次に、【不合理な労働条件の禁止(第20条)】についてみると、「ルールの内容まで知っていた」は17.5%(昨年は12.3%)で昨年より5.2ポイントの上昇となったが、『内容を知らなかった(計)』(「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」35.2%と「ルールができたことを知らなかった」47.3%の合計)は82.5%と8割以上となった。
【無期労働契約への転換(第18条)】と同様に、内容を知っている人の割合は昨年より上昇しているものの、有期契約労働者の大多数がルールの内容を知らないようだ。雇用形態別にみると、契約社員では、内容まで知っていた人の割合が大幅に上昇しており、昨年13.3%→今年26.5%と13.2ポイントの上昇となった。
改正労働契約法の認知経路について
契約社員では「勤務先からの説明」が昨年より14ポイント上昇
では、【無期労働契約への転換】や【不合理な労働条件の禁止】について知っていた人は、何から知ったのか。
「マスコミ(テレビや新聞報道など)」が最多の51.6%
【無期労働契約への転換(第18条)】と【不合理な労働条件の禁止(第20条)】のどちらか一方でもルールができたことを知っていた有期契約労働者(699名)に、ルールができたことやルールの内容についてどこで知ったか聞いたところ、「マスコミ(テレビや新聞報道など)」が最も多く51.6%、次いで、「勤務先からの説明」が40.1%、「インターネット(ホームページ、Facebook、Twitterなど)」が24.0%となった。
雇用形態別にみると、派遣社員では「勤務先からの説明」が最も高く44.1%だった。
「勤務先からの説明」で知った人の割合が大幅に上昇
また、昨年の調査結果と比較すると、「勤務先からの説明」で知ったという人の割合は、契約社員において大幅に上昇しており、昨年29.4%→今年43.3%と13.9ポイントの上昇となった。
労働契約法第18条(無期労働契約への転換/5年ルール)に対する意識
「無期転換申込権対象者となっている」は有期契約労働者の約2割、「無期転換申込権があるかないか、わからない」は4割半ば
◆無期転換申込権対象者の4人に1人が「無期転換を申し込んだ」と回答
◆「無期労働契約への転換(第18条)」に対する考え
「待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」 同意率は約6割
「無期転換申込権があるか、ないか、わからない」が46.3%
【無期労働契約への転換(第18条)】について、同じ事業主で有期労働契約が反復更新されて、通算5年(2013年4月1日以降に開始した有期労働契約対象)を超えたときは、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換できる権利(無期転換申込権)が発生するが、2018年4月1日から本格的に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じている。
そこで、全回答者(1,000名)に、2018年4月以降の無期転換申込権の発生状況を聞いたところ、「無期転換申込権対象者となっている」は17.5%、「無期転換申込権はまだ発生していない」が36.2%、「無期転換申込権があるか、ないか、わからない」が46.3%となった。自身に無期転換申込権があるのかどうかがわからないという人が多いことが明らかになった。
「無期転換を申し込んでいない」が73.1%
また、無期転換申込権を持っている175名について、無期転換の申し込み状況をみると、「無期転換を申し込んだ」が26.9%、「無期転換を申し込んでいない」が73.1%となった。無期転換申込権を持っている人の4人に1人が申し込みを行ったようだ。
「待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」が57.7%
続いて、全回答者(1,000名)に、【無期労働契約への転換(第18条)】についての考えを聞いたところ、【契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い】では、「非常にそう思う」が22.1%、「ややそう思う」が35.6%で、合計した同意率は57.7%となった。
一方、【無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる】では、「非常にそう思う」が9.0%、「ややそう思う」が32.0%で、同意率は41.0%だった。【無期労働契約への転換(第18条)】に対して、“待遇が正社員と同等になるわけではないから意味がない”といった否定的な考えを持っている人が約6割となっているが、“モチベーションアップにつながる”といったように前向きに捉えている人も4割と少なくないことがわかった。
【調査結果の続きはこちら】
・中編:調査で見えた不合理な格差 非正社員の一部、食堂の利用を許可されず
・後編:正社員になれず有期契約で働く人の4割「やりがい感じず、職場に不満」
[調査概要]
◆調査タイトル:有期契約労働者に関する調査2018
◆調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)
◆調査期間:2018年5月16日~5月17日
◆調査方法:インターネット調査
◆調査地域:全国
◆有効回答数:1,000サンプル
【プレスリリース「連合調べ「無期労働契約への転換」の内容を 知らない有期契約労働者が依然68%」(@Press)より|2018年6月28日・日本労働組合総連合会)】
【編集部より】
無期転換ルールに関する記事はこちら
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