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社労士による「無期転換ルール」詳細解説 vol.1 


【2018年問題】4月から対応が必要に! 無期転換ルールのポイントを解説 

2018.04.02

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2013年4月1日施行の労働契約法第18条で定められた「無期転換ルール」。早ければ2018年4月から、このルールへの対応を求められる企業が出てきます。働き方が多様化している現在、企業はこのルールに対応しながら、いかに働きやすい環境を整えられるかが問われています。

今回の記事では、特定社会保険労務士の藤原伸吾氏に「無期転換ルール」の概要から、人事・総務担当者が気をつけるべきポイントまで、詳しく解説していただきます。


無期転換ルールとは

期間の定めのある有期労働契約が、最初の契約開始時期から更新を経て通算5年を超えたとき、労働者の申込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換できるルール。通年のカウントがちょうど2013年4月1日以降に締結した有期労働契約から開始するため、早ければ2018年4月からの対応が求められる。対象は、契約社員やパート、アルバイトなど雇用形態を問わず、契約期間に定めがある有期労働契約が5年を超える全ての労働者。2013年4月1日施行の労働契約法第18条で定められている。

目次
  1. 有期労働契約の無期転換ルールの概要
  2. 無期労働契約への転換の申込み
  3. 無期労働契約への転換後の労働条件

有期労働契約の無期転換ルールの概要

近年、契約期間に定めのある有期契約労働者数は、雇用者全体の3割近くを占める状況となっています。事業主が労働契約に期間の定めをする主な理由としては、臨時的・季節的な業務量の変化への対応や景気変動、経営方針の転換などがあった際に雇止めをすることによって人員の調整を行う「雇用調整弁」としての意味合いと、正規社員と異なる人事制度や賃金体系のしくみを設けることによる「人件費コストの抑制」の意味合いがあります。

その反面、有期契約労働者からすれば常に雇止めに対する不安を抱えることになり、また期間の定めがあることを理由として労働条件やキャリア形成に格差が生じるなど、様々な課題を抱えています。

このため、2013年4月1日施行の改正労働契約法(以下「労契法」という)によって、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算して5年を超えて更新された場合に、労働者が申込みをすると、使用者がこれを承諾したものとみなされ、無期労働契約に転換するという「無期転換ルール」が創設されました。

無期労働契約への転換の申込み

無期転換ルールの下では、有期労働契約が更新され、契約期間が通算して5年を超える場合、労働者は、無期労働契約への転換の申込みを行うことができることとされており、使用者は労働者から申込みを受けたときは、これを承諾したものとみなされます(※)。

※無期転換制度の要件となる5年のカウントは、2013年4月1日以降に開始する有期労働契約が対象。この日より前にすでに開始している有期労働契約の期間は5年のカウントには含まれない。

ここからは、無期転換申込権について、詳しく見ていきましょう。

(1)無期転換申込権の行使時期

まず、無期転換の申込みができるのは、契約期間の通算年数が5年を超えることとなる労働契約の初日から末日までの間とされており、その間に有期契約労働者が無期転換の申込みをした場合には、現に締結している労働契約が満了する日の翌日を始期とする、無期労働契約が成立することになります。

無期労働契約の申し込みの流れ(6年目に申し込みをした場合)

たとえば、図1のように、契約期間が1年の場合において、1年の契約更新を4回繰り返した場合、通算契約期間はちょうど5年になりますが、そのまま引き続き契約更新を行った場合、通算契約期間が5年を超えることになります。この場合、5年を超えることになった日、すなわち5回目の更新の初日(更新5)から、労働者が無期転換の申込みを行うことが可能となります。

この場合、無期転換の申込み時期について、「契約期間満了の30日前」などのように期限を設けることも可能ですが、「期限を過ぎた場合に無期転換を認めない」とすることはできません。また、無期転換申込権を行使しないことを契約更新の条件とする取り決めは、公序良俗に反するものとして無効となりますので留意が必要です。

(2)無期転換申込権を行使しなかった場合

無期労働契約の申し込みの流れ(6年目に申し込みをせず7年目に申し込みをした場合)

図2で見るように、5年を超える最初の契約期間中に無期転換申込権を行使しなかった場合でも、再度、有期労働契約が更新されたとき(更新6)は、新たに無期転換申込権が発生し、労働者は、更新後の有期労働契約の期間が満了する日までの間に、無期転換申込権を行使することができます。したがって、5年を超えた日以降、いつでも無期転換申込権を行使することができるわけです。

(3)通算契約期間に空白期間がある場合の例外

契約期間が1年以上の場合で、契約と契約の間の空白期間が6カ月以上あるときは、空白期間前の期間は通算契約期間にカウントされず、契約期間はリセットされます。また、契約期間が1年未満の場合には、空白期間が契約期間の2分の1以上あると契約期間はリセットされます。たとえば、契約期間が6カ月の場合、空白期間が3カ月以上あると契約期間がリセットされます。

無期労働契約への転換後の労働条件

行政通達では、無期労働契約に転換した後の労働条件について「職務、勤務地、賃金、労働時間等の労働条件は、労働協約、就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一になる」とされており、無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後の労働条件を従前より低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないとされています。したがって、無期転換後の労働条件を検討するに当たっては、職務内容や役割、責任等についても同時に検討することが重要です。

【編集部より】
次回記事では、無期転換を実施する場合の3類型と、60歳以上の定年退職者に関わる特例を解説します。

執筆者紹介

藤原伸吾(ふじわらしんご)(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人ヒューマンテック経営研究所代表社員。東京都社会保険労務士会理事。労働関係諸法令をめぐる企業の労務相談、就業規則等の制改定、M&Aにかかる人事労務面からの総合支援やグループ経営強化支援、IPO支援等のほか、トータル人事制度の企画・導入指導など、人事労務全般にわたるコンサルテーションを手がけている。『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』(経営書院)、『人事労務管理 解決ハンドブック』(日本経済新聞出版社・共著)など著書多数。

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