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“裁量労働制の拡大”削除した働き方改革関連法案、残る3つの柱とは

2018.03.02

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安倍晋三首相は2018年3月1日、記者会見を開き、厚生労働省の調査データの不備や異常値が多数見つかった問題を受け、第196回通常国会で提出する「働き方改革関連法案」の中から「裁量労働制の拡大」に係る部分を全面削除するよう指示したことを発表した。

また、安倍首相は会見の中で「働き方改革は極めて重要」と改めて強調し、裁量労働制に関わる部分以外の「3つの柱」に関わる法案は、本国会中に提出する考えを示した。

目次
  1. 施政方針演説で示された「働き方改革」の概要
  2. 「働き方改革関連法案」で改正を目指す8つの法律
  3. 3月1日の会見で明言された「働き方改革関連法案」の3つの柱
  4. 「高度プロフェッショナル制度」施行の時期は2019年4月
  5. 野党の一部は「高度プロフェッショナル制度」の断念も要求
  6. 経済界は「裁量労働制の拡大」削除に失望 法案成立にも影響か

施政方針演説で示された「働き方改革」の概要

安倍首相は、2018年1月4日に行った年頭記者会見で「今月召集する通常国会は、働き方改革国会であります」と述べている。

働き方改革については、所信表明演説で「子育て、介護など、様々な事情を抱える皆さんが、意欲を持って働くことができる。誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革します」と語っており、本国会では、改革の実現に向け、労働基準法をはじめとした労働法の改正を目指している。

「働き方改革関連法案」で改正を目指す8つの法律

「働き方改革関連法案」または「働き方改革一括法案」は、2018年の第196回国会に上程が見込まれ審議が行われている、8本の労働法改正案の総称、通称だ。政府が改正を目指す8つの労働法は、以下の通り。

  • 労働基準法
  • 雇用対策法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法
  • パートタイム労働法
  • 労働契約法
  • 労働者時間設定改善特措法
  • じん肺法

3月1日の会見で明言された「働き方改革関連法案」の3つの柱

安倍首相は、2018年3月1日の会見で「まず働き過ぎ、長時間労働のこの慣行を断ち切るために、長時間労働について時間外労働の罰則付きの上限規制を行う。そしてまた、非正規、正規の格差を埋めるための同一賃金同一労働の導入。そしてまた、高度プロフェッショナル制度。この3つについては(本国会で)提出していきたい」と述べ、会見では、これらを「3つの柱」と表現した。

以下では、3つの柱について、それぞれを解説する。

1.時間外労働の罰則付きの上限規制

安倍首相は、本国会の所信表明演説で「史上初めて、労働界、経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の限度を設けます」と述べ、時間外労働の上限規制に意欲を示した。

この規制については、厚生労働省が2017年9月8日に、労働政策審議会での審議をふまえ、以下のようにポイントをまとめている。

(1) 労働時間に関する制度の見直し

・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。

※自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外あり。研究開発業務について、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しない。

【引用元】「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申(厚生労働省)

2.同一賃金同一労働の導入

2本目の柱として言及されたのが「同一賃金同一労働の導入」だ。安倍首相は、所信表明演説の中で「雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、『非正規』という言葉を、この国から一掃してまいります」と決意を述べている。

同一賃金同一労働に関わる法制については、以下のようにポイントがまとめられている。

(1) 不合理な待遇差を解消するための規定の整備

・短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。併せて、有期雇用労働者の均等待遇規定を整備。

・派遣労働者について、
(a)派遣先の労働者との均等・均衡待遇
(b)一定の要件(※)を満たす労使協定による待遇 
のいずれかを確保することを義務化。また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。

※同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等

(2) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。

(3) 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

・(1) の義務や(2) の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備。

【引用元】「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申(厚生労働省)

3.高度プロフェッショナル制度(高プロ)

3本目の柱として言及されたのが、高度プロフェッショナル制度だ。所信表明演説では、安倍首相は、「専門性の高い仕事では、時間によらず成果で評価する制度を選択できるようにします」という形でこの制度に触れている。

厚生労働省は、高度プロフェッショナル制度について以下のようにまとめている。

1.対象業務

  • 「高度の専門的知識等を必要とする」とともに「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる」という性質の範囲内で、具体的には省令で規定

金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等を想定

2.対象労働者

  • 書面等による合意に基づき職務の範囲が明確に定められている労働者
  • 「1年間に支払われると見込まれる賃金の額が、『平均給与額』の3倍を相当程度上回る」水準として、省令で規定される 額(1075万円を参考に検討)以上である労働者

⇒「本制度の対象となることによって賃金が減らないこととする」旨を法定指針に明記

3.健康管理時間に基づく健康確保措置等

  • 使用者は、客観的な方法等により在社時間等の時間である「健康管理時間」を把握
  • 健康管理時間に基づき、
    ①インターバル措置(終業時刻から始業時刻までの間に一定時間以上を確保する措置)
    ②1月 又は3月の健康管理時間の上限措置
    ③年間104日の休日確保措置
    のいずれかを講じるとともに、省令で定める事項 のうちから労使で定めた措置を実施
  • 併せて、健康管理時間が一定時間を超えた者に対して、医師による面接指導を実施

4.制度導入手続き

  • 職務記述書等に署名等する形で職務の内容及び制度適用についての本人の同意を得る。
  • 導入する事業場の委員会で、対象業務・対象労働者をはじめとした上記の各事項等を決議

5.法的効果

  • 時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の規定を適用除外とする。

【引用元】「労働基準法等の一部を改正する法律案」について(厚生労働省)

「高度プロフェッショナル制度」施行の時期は2019年4月

厚生労働省は「高度プロフェッショナル制度」について、施行を1年遅らせる方向で検討していた。

しかし、制度を取り入れるかどうかは、各企業と従業員の判断に委ねられ、時間をかけて検討することも可能なことから、厚生労働省は、制度の施行は当初の予定どおり「2019年4月から」とする方針を固め、3月1日に開かれた自民党の厚生労働部会などの合同会議に示した。

野党の一部は「高度プロフェッショナル制度」の断念も要求

 高度プロフェッショナル制度(高プロ)については、立憲民主党をはじめとした野党が「裁量労働制とともに、高プロも差し戻すべき」と主張しはじめている。

2018年3月1日に開かれた参院予算委員会では、民進党代表の大塚耕平氏が「長時間労働を助長する」として、高度プロフェッショナル制度の働き方改革関連法案からの切り離しを要求した。この要求に対して安倍首首相は、「生産性の向上にもつながるし、年収1075万円以上が対象」と理解を求めている。

経済界は「裁量労働制の拡大」削除に失望 法案成立にも影響か

経団連の榊原定征会長は、2018年3月1日、裁量労働制の削除について「柔軟で多様な働き方の選択肢を広げる改正として期待していただけに残念に思う」と談話を発表。

日本商工会議所の三村明夫会頭は同日の記者会見で「非常に残念だ。政府は(裁量労働制について)実態調査をきちんとやったうえで再度法案を提出すると理解しているので、できるだけ早く実現してほしい」と述べた。

今回の法改正で「残業時間の上限規制」が行われることをふまえ、経済界は業務を時間で縛らない「裁量労働制の対象拡大」を強く要望してきた経緯があり、自民党内の議員からも「裁量労働制抜きの残業規制だけなら認められない」という声が挙がるなど、今後も、同法案については激しい議論が続きそうだ。

(執筆: @人事編集部)
※記事の情報は、2018年3月2日時点のものです。

【編集部より】
「裁量労働制」に関する記事はこちら。

働き方改革関連法案に関する記事はこちら。

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