コラム

日本一残業の少ないIT企業社長が教える、残業削減の目的とメリット


米村歩氏が語る、企業が残業を減らすべき理由と4つの業務効率化策

2018.07.17

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2018年6月29日、働き方改革関連法が参院本会議で可決され、成立となりました。この法律には「残業時間の罰則つき上限規制」などが含まれており、残業ありきの働き方は、法的な面からも改革を迫られています。

では、どうすれば企業は残業を無くすることができるのか? @人事編集部では、「日本一残業の少ないIT企業社長」としてSNSでも広く知られる株式会社AXIAの代表取締役・米村歩氏に寄稿いただきました。

同社はかつては毎日終電、休日出勤が当たり前のいわゆる「ブラック企業」状態でしたが、米村氏による残業削減施策により、2012年から残業ゼロを実現させています。今回は、米村氏自身の経験から、残業削減のためのノウハウについて解説していただきます。

目次
  1. 残業削減のための「手っ取り早い」施策は存在しない
  2. 残業削減は、どんな会社でも実現できる
  3. 「働き方改革が流行り」だから、残業削減を行うのではない
  4. 人口減少時代には、残業削減が人材確保の必須条件になる
  5. 残業ゼロを実現する、業務効率化のための4つの施策
  6. 「業務効率化だけ」では、残業削減は失敗する
  7. 残業ゼロに必要なのは、習慣を変えるための線引き

残業削減のための「手っ取り早い」施策は存在しない

今回、「@人事」の記事執筆のご依頼をいただくにあたって、実は「”これならうちでもできそうだ、と思えるような残業を減らす施策”をご紹介いただきたい」とリクエストをいただいた。しかし残念ながら、「これをやれば残業削減を実現できる」といった手っ取り早い施策というものは存在しない。

残業削減を実現するための本質的な取り組みを行わなければ、一時的に残業削減に成功することはあったとしても、また元の残業状態に戻ってしまうだろう。

そこで今回は、アクシアで行ってきた施策を表面的になぞるのではなく、残業ゼロを実現するまでの過程で経験してきた成功と失敗を踏まえた、本質的な取り組みについてご紹介したいと思う。

本質的な部分さえ抑えてもらうことができれば、あとは各社の状況や環境に合わせた最適な施策を検討していただくことが可能だと考えている。

残業削減は、どんな会社でも実現できる

残業削減は一部の特殊な企業にしか実現できない夢物語ではない。残業削減はどんな企業にも実現可能な施策だ。

残業が多い会社の経営者の方はおそらく「うちの会社には無理」「うちの会社は特殊だから」と考えている。気持はよく分かる。なぜなら、かつて私もそのように考えていたからだ。しかし、それは単に言い訳しているにすぎず、経営者の怠慢でしか無い。

アクシアは残業ゼロを継続しているが決して特別な企業ではない。普通のシステム開発会社である。かつては毎日終電、毎週休日出勤が当たり前のブラック企業だった。それでも残業ゼロを実現することができた。

残業まみれだった頃は、まさか残業ゼロを実現できる日がくるなど夢にも思わなかった。しかし実現してしまった今では、「そこまでたいしたことでもなかった」というのが正直な印象である。もし私が他の業種の会社を経営することになったとしても、残業ゼロを実現させることは可能だと確信している。

 残業削減はどんな会社でも実現可能である

このことを念頭において、この先の記事を読んでいただけたらと思う。

「働き方改革が流行り」だから、残業削減を行うのではない

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なぜ残業を削減する必要があるのか?

そう問われた時に、「今は働き方改革が流行りだから」とか、「そうしないとブラック企業だと見なされてしまうから」という理由を思いついた方は、もう一度よく考え直してほしい。

企業とは営利組織であって、ボランティア団体でも慈善団体でもない。利益が出せれば何でも良いかと言うとそうではないが、企業において利益追求を無視することはできない。

なぜ残業削減が必要かと言えば、それは、今の時代の企業経営に必要だからに他ならない。つまり、売上や利益拡大を考えた経営戦略として、これからは残業削減が必要となってくる。決して慈善事業として残業削減を行うのではなく、経営戦略として残業削減が必要だと位置づける必要がある。

ではどうして、これからの時代には残業削減が経営戦略として必要となるのか。答えはシンプルで、残業を削減しなければ、人が採れない状況がこれからどんどん進んでいくからだ。企業活動を行う上で何よりも重要な経営リソースである「人」を採用できなくなれば、それは売上や利益の低迷につながっていく。

人口減少時代には、残業削減が人材確保の必須条件になる

なぜ、残業削減しないと人が採れなくなるのか。理由は明確で、日本は人口減少社会に突入して労働人口が減少しているからだ。既に人材不足が深刻化しているが、今後の日本では、さらに人材不足が深刻化していくことは間違いない。

人材が不足すれば、これまでのようにフルタイムで残業バリバリの社員だけを前提に考えるわけにはいかなくなる。これからの時代は子育てをしている人も、介護をしている人も、無理なく働けるように会社の仕組みを改めていかないと、「働きにくい会社だ」と労働者から見放されてしまうようになる。

フルタイムで残業前提ではない働き方が選択できる会社であるためには、残業削減は必須の命題となる。これからはそうしなければ思うように採用ができなくなっていくのであり、そのために残業削減をはじめとした働き方改革が必要となるのである。

そのことを経営者が理解することは当然として、従業員にも、残業削減の重要性をきちんと理解してもらう必要がある。

残業ゼロを実現する、業務効率化のための4つの施策

残業削減を実現していくためには業務効率化が重要であることは言うまでもない。アクシアでも残業削減を実現するために様々な取り組みを行ってきたが、我々が行ってきたことを大きくまとめると以下の4つに集約される。

1.業務の見える化
2.業務の廃止
3.業務の自動化
4.業務の標準化

1.業務の見える化

業務効率化のためには、適切なマネジメントが不可欠だ。そして、マネジメントを行うためには必要な情報を「見える化」する必要がある。見える化はシステムで行うことが難しければ、最初は紙と鉛筆で記録するだけでも良い。それができたら次はEXCELで集計してみる、それができたら次はITシステムを導入してみる、といった具合に、段階に応じて高度な手法を取り入れていけば良い。

2.業務の廃止

情報が見える化されると、業務の中で無駄な部分が見えてくるようになる。やらなくても支障のない業務は全て廃止する。無駄な業務の廃止は、極めて業務効率化の効果の高い施策だ。代表的な取り組みで言うと、無駄な会議の廃止や、無駄な資料作成の廃止などが挙げられる。

3.業務の自動化

業務を見える化し、無駄な業務を廃止したら、次に行うべきなのは業務の自動化だ。これまで人間の手で行ってきた業務の中で、特に時間のかかっているものを優先的に抽出してITによるシステム化を検討する。

4.業務の標準化

自動化が困難な部分は、業務の標準化を検討する。業務の標準化とは、「1人の人しかできない属人化された仕事を、他の人でもできるようにすること」だ。そのための方法として、例えば1つの業務を担当する人を必ず複数人にすること、マニュアルを作成して他の人でも同じ業務をできるようにすること、教育を行って同じ業務を担当できる人を増やすことなどがあげられる。

以上4つの施策を行い、それでも残った業務が、本当に付加価値の高い仕事である。1から4の施策を常に繰り返すことで、本当に付加価値の高い仕事に注力できるようにしていくことが業務効率化のポイントである。

「業務効率化だけ」では、残業削減は失敗する

残業削減のためには業務効率化は必ず必要だが、実は業務効率化だけでは残業削減は難しい。業務効率化さえ行えば残業削減を実現できると思いこんでいる人が多いが、ここを勘違いしているために残業削減に失敗している企業が多いと思われる。

実はアクシアも、この勘違いによって残業削減に失敗してきた経験がある。正確には、業務効率化をすれば一時的に残業削減には成功する。しかし、しばらくするとまた元の残業まみれの状態に戻ってしまう。これはなぜなのか。

理由はシンプルだ。業務効率化によって生み出された空き時間に、別の仕事を詰め込んでしまっていたからだ。

残業ゼロに必要なのは、習慣を変えるための線引き

「何だ、そんなことか」と思うかもしれないが、人間の習慣とは恐ろしいもので、そう簡単に習慣を変えることはできない。ダイエットや運動習慣を作ることに失敗したことがある人も多いはずだが、それだけ、習慣を変えるという行動は難しいのだ。

アクシアが残業ゼロになってからも、元々の残業まみれの習慣を改めるのに半年の時間がかかった。

企業の仕事というものは、考えれば無限に出てきて、なくなることはない。緊急で重要な仕事だけなら限りはあるかもしれないが、「緊急ではないが重要な仕事」というものは、考えれば考えるほど無限に出てくる。

仕事が無限に存在するのであれば、どこかで線引きをしなければならない。アクシアではその線引を「定時」に設定したが、そこは定時でなくとも明確な線引きがしてあれば良い。線引きをしたならそのルールを遵守し、その線を超えてしまうような仕事は入れないようにすることが重要となる。

この線引きを何としても守ることは、経営者の覚悟とも言い換えることができる。それができなければ、残業削減は失敗に終わるだろう。


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執筆者紹介

米村 歩(よねむら・すすむ) 1979年生まれ。埼玉県出身、青山学院大学卒業。株式会社アクシア代表取締役。 中堅ソフトウエア、フリーランスを経て株式会社アクシアを設立。 2012年まではアクシアでも長時間労働が常態化していたが、2012年10月から残業ゼロを継続中。 2017年3月にはホワイト企業アワードの労働時間削減部門で大賞受賞。 アクシアが経験してきた残業削減やIT業界の問題点についてブログにて情報発信中。 著書『完全残業ゼロの働き方改革』

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